不動産の相続税評価額:路線価方式と倍率方式の計算方法を徹底解説

この記事の結論
不動産の相続税評価額は、「路線価方式」または「倍率方式」で算出します。路線価方式では、路線価に補正率を適用し、さらに地積を掛けて計算します。補正率(奥行価格補正率、不整形地補正率、間口狭小補正率など)を適切に適用することで、評価額を適正化し、節税効果を生み出せます。この記事では、不動産鑑定士の視点から、評価額の計算方法を具体的な数値を使って詳しく解説します。
不動産の相続税評価額とは【基礎知識】
相続税の計算において、不動産の評価額は重要な要素です。まずは相続税評価額の基礎知識を確認しましょう。
相続税評価額と時価の違い
相続税評価額と時価(実勢価格)は異なります。
- 相続税評価額: 相続税・贈与税の計算に使う公的な評価額
- 時価(実勢価格): 実際の売買価格
路線価は時価の約80%水準に設定されています。例えば、路線価が40万円/㎡の土地の場合、単純計算では売買価格(時価)は約50万円/㎡(40万円÷0.8)となりますが、実際の市場では需要と供給によって価格が変動するため、必ずしもこの計算通りにはなりません。路線価はあくまで相続税評価の基準であり、実際の売買価格とは異なる点に注意が必要です。
なぜ路線価は時価の80%なのか
路線価が時価より低く設定されている理由は3つあります。
1. 納税者への配慮
不動産は換金性が低いため、時価より低い価格で評価することで納税者の負担を軽減しています。
2. 評価の安定性
不動産市場は日々変動しますが、路線価は年1回の公表です。変動幅を抑えるため、時価の80%程度に設定されています。
3. 公示地価との関係
路線価は公示地価(国土交通省が毎年公表する土地価格)の80%水準を基準としています。公示地価が50万円/㎡なら、路線価は約40万円/㎡となります。
評価額が相続税に与える影響
評価額が高いほど相続税も高くなります。
例えば、評価額3,000万円の土地と2,400万円の土地では、相続税に大きな差が生じます。
- 評価額3,000万円の場合: 相続税約300万円
- 評価額2,400万円の場合: 相続税約240万円
- 差額: 約60万円
補正率を適切に適用して評価額を適正化することで、節税効果が得られます。さらに小規模宅地等の特例と組み合わせることで、より大きな節税が可能です。
路線価方式と倍率方式の違い【選び方】
不動産の相続税評価には、「路線価方式」と「倍率方式」の2つの方法があります。土地の所在地によって、どちらの方式を使うか決まります。
路線価方式とは
路線価方式は、市街地の土地に適用される評価方法です。
特徴:
- 国税庁が定めた路線価図に基づいて評価
- 道路ごとに路線価(1㎡あたりの価格)が設定されている
- 都市部のほとんどの土地が対象
適用地域の見分け方:
- 国税庁の「路線価図・評価倍率表」サイトで確認
- 住所を入力して路線価図が表示されれば、路線価方式
倍率方式とは
倍率方式は、路線価が設定されていない地域(郊外、農地など)に適用される評価方法です。
特徴:
- 固定資産税評価額に倍率を掛けて計算
- 路線価がない地域で使用
- 郊外、農村部の土地が主な対象
適用地域の見分け方:
- 国税庁の「路線価図・評価倍率表」サイトで確認
- 路線価図が表示されず、「倍率表」が表示されれば倍率方式
どちらの方式を使うか判定する方法
以下の手順で判定します。
Step 1: 国税庁「路線価図・評価倍率表」にアクセス https://www.rosenka.nta.go.jp/
Step 2: 相続開始年を選択(例: 令和7年)
Step 3: 都道府県・市区町村を選択
Step 4: 住所を入力して検索
Step 5: 表示された内容で判定
- 路線価図が表示された → 路線価方式
- 評価倍率表が表示された → 倍率方式
路線価方式の計算方法【戸建て・土地】
路線価方式による評価額の計算方法を、ステップごとに詳しく解説します。
路線価の調べ方(国税庁サイトの使い方)
路線価は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」サイトで調べます。
手順:
-
国税庁のサイトにアクセス https://www.rosenka.nta.go.jp/
-
相続開始年を選択 相続が発生した年の路線価を選択します。路線価は毎年7月に公表されるため、例えば2025年3月に相続が開始した場合、2025年7月まで令和7年分の路線価は公表されていません。この場合、相続税申告時(相続開始から10ヶ月以内)には令和7年分の路線価が公表されているため、その時点で公表された令和7年分を使用します。
-
都道府県・市区町村を選択
-
住所を入力して路線価図を表示
-
路線価の読み取り
- 道路に書かれた数字が路線価(千円単位)
- 例: 「350D」→ 路線価35万円/㎡、借地権割合D(60%)
路線価図の見方のポイント:
- 数字は千円単位(「350」=35万円/㎡)
- アルファベットは借地権割合(A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%)
- 自分の土地が接している道路の路線価を確認
基本的な計算式
路線価方式の基本的な計算式は以下の通りです。
相続税評価額 = 路線価 × 補正率 × 地積
計算例(補正率を適用しない場合):
- 路線価: 35万円/㎡
- 地積: 150㎡
- 評価額 = 35万円 × 150㎡ = 5,250万円
ただし、実際には土地の形状や条件に応じて補正率を適用するため、評価額はこれより低くなることが多いです。
単位の注意点:
- 路線価は「千円単位」で表記(路線価図の「350」=35万円/㎡)
- 地積は「㎡」単位(登記簿謄本に記載)
補正率の種類と適用方法
補正率を適用することで、土地の個別的な条件を反映し、評価額を適正化します。
奥行価格補正率
奥行価格補正率は、すべての路線価方式の土地に適用する最も基本的な補正率です。
適用対象: すべての路線価方式の土地 補正率の範囲: 0.80〜1.00
土地の奥行距離に応じて、以下の補正率を適用します(用途地域によって異なります)。
奥行価格補正率表(住宅地の場合):
| 奥行距離 | 補正率 |
|---|---|
| 4m未満 | 0.80 |
| 4m以上6m未満 | 0.90 |
| 6m以上8m未満 | 0.92 |
| 8m以上10m未満 | 0.95 |
| 10m以上24m未満 | 1.00 |
| 24m以上28m未満 | 0.99 |
| 28m以上32m未満 | 0.98 |
| 32m以上36m未満 | 0.97 |
計算事例:
- 奥行5m: 補正率0.90
- 奥行15m: 補正率1.00(標準)
- 奥行30m: 補正率0.98
奥行が極端に短い、または長い土地は、使い勝手が悪いため補正率で減額されます。
不整形地補正率
不整形地補正率は、形状が不整形な土地に適用します。
適用対象: 台形、L字型、旗竿地など形状が不整形な土地 補正率の範囲: 0.60〜1.00(最大40%減額)
不整形地補正率は、「かげ地割合」によって決まります。
かげ地割合の計算方法:
かげ地割合 = (想定整形地の面積 - 実際の地積) ÷ 想定整形地の面積
想定整形地とは、その土地を含む最小の長方形のことです。
不整形地補正率表(普通住宅地区の場合):
| かげ地割合 | 地積500㎡以下 | 地積500㎡超1,000㎡以下 | 地積1,000㎡超 |
|---|---|---|---|
| 10%以上 | 0.99 | 0.99 | 0.98 |
| 20%以上 | 0.96 | 0.95 | 0.94 |
| 30%以上 | 0.92 | 0.90 | 0.88 |
| 40%以上 | 0.87 | 0.85 | 0.82 |
| 50%以上 | 0.82 | 0.80 | 0.76 |
計算事例:
台形の土地で、かげ地割合が30%の場合:
- 地積180㎡ → 補正率0.92
L字型の土地で、かげ地割合が45%の場合:
- 地積200㎡ → 補正率0.87
不整形地は使い勝手が悪いため、大幅な減額が認められます。
間口狭小補正率
間口狭小補正率は、間口距離が狭い宅地に適用します。
適用対象: 間口距離が狭い宅地 補正率の範囲: 0.80〜1.00
間口が狭いと、建物の建築や車の出入りが制限されるため、評価額を減額します。
間口狭小補正率表(普通住宅地区の場合):
| 間口距離 | 補正率 |
|---|---|
| 4m未満 | 0.80 |
| 4m以上6m未満 | 0.94 |
| 6m以上8m未満 | 0.97 |
| 8m以上 | 1.00 |
計算事例:
- 間口4m: 補正率0.94
- 間口6m: 補正率0.97
- 間口8m: 補正率1.00(補正なし)
間口が狭い土地は、建築制限や使い勝手の悪さから減額されます。
その他の補正率
上記以外にも、以下の補正率があります。
奥行長大補正率:
- 適用条件: 奥行 ÷ 間口 ≧ 2
- 補正率: 0.90〜0.98
- 奥行が間口の2倍以上ある土地に適用
がけ地補正率:
- 適用条件: がけ地を含む宅地
- 補正率: 0.47〜0.96
- がけ地の割合に応じて減額
側方路線影響加算率・二方路線影響加算率:
- 適用条件: 角地(2つ以上の道路に接している土地)
- 加算率: 0.02〜0.10
- 角地は利便性が高いため、評価額を加算
補正率の併用ルールと計算順序
複数の補正率を併用できますが、計算順序が重要です。
併用可能なパターン:
- 奥行価格補正率 × 不整形地補正率 × 間口狭小補正率
正しい計算順序:
Step 1: 奥行価格補正率を適用
Step 2: 不整形地補正率を適用
Step 3: 間口狭小補正率を適用
計算例:
- 路線価: 35万円/㎡
- 地積: 120㎡
- 奥行価格補正率: 0.95(奥行12m)
- 間口狭小補正率: 0.97(間口6m)
評価額 = 35万円 × 0.95 × 0.97 × 120㎡
= 35万円 × 0.9215 × 120㎡
= 3,870万円
併用不可のパターン:
- 不整形地補正率と奥行長大補正率は併用不可
- どちらか一方のみ適用(通常は減額幅が大きい方を選択)
計算事例(3パターン)
実際の土地を想定した3つのケーススタディで、計算方法を確認しましょう。
ケース1: 間口狭小 + 奥行長大の土地
土地の条件:
- 地積: 120㎡
- 間口: 6m
- 奥行: 20m
- 路線価: 35万円/㎡
適用する補正率:
- 奥行価格補正率: 0.95(奥行20m)
- 間口狭小補正率: 0.97(間口6m)
計算過程:
評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 間口狭小補正率 × 地積
= 35万円 × 0.95 × 0.97 × 120㎡
= 3,870万円
補正なしとの比較:
- 補正なし: 35万円 × 120㎡ = 4,200万円
- 補正あり: 3,870万円
- 節税効果: 約330万円(相続税率10%の場合、約33万円の節税)
ケース2: 不整形地(台形の土地)
土地の条件:
- 地積: 180㎡
- 形状: 台形
- 想定整形地の面積: 220㎡
- かげ地割合: (220㎡ - 180㎡) ÷ 220㎡ = 18%
- 路線価: 28万円/㎡
適用する補正率:
- 奥行価格補正率: 0.98(奥行18m)
- 不整形地補正率: 0.96(かげ地割合18%、地積180㎡)
計算過程:
評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 不整形地補正率 × 地積
= 28万円 × 0.98 × 0.96 × 180㎡
= 4,752万円
補正なしとの比較:
- 補正なし: 28万円 × 180㎡ = 5,040万円
- 補正あり: 4,752万円
- 節税効果: 約288万円(相続税率15%の場合、約43万円の節税)
ケース3: 旗竿地(敷地延長)
土地の条件:
- 地積: 150㎡
- 形状: 旗竿地(路地状部分の奥に宅地)
- かげ地割合: 35%
- 路線価: 25万円/㎡
適用する補正率:
- 奥行価格補正率: 0.90(路地状部分を考慮)
- 不整形地補正率: 0.92(かげ地割合35%、地積150㎡)
計算過程:
評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 不整形地補正率 × 地積
= 25万円 × 0.90 × 0.92 × 150㎡
= 3,105万円
補正なしとの比較:
- 補正なし: 25万円 × 150㎡ = 3,750万円
- 補正あり: 3,105万円
- 節税効果: 約645万円(相続税率15%の場合、約97万円の節税)
旗竿地は特に使い勝手が悪いため、大幅な減額が認められます。
倍率方式の計算方法【郊外・農地】
路線価が設定されていない地域では、倍率方式で評価します。
固定資産税評価額の確認方法
倍率方式では、固定資産税評価額を使用します。
確認方法:
1. 固定資産税納税通知書で確認
- 毎年4〜6月頃に市区町村から送付される
- 「価格」または「評価額」の欄に記載
2. 評価証明書を取得
- 市区町村の窓口で取得(手数料300〜400円)
- 必要書類: 本人確認書類、相続人であることを証明する書類
3. 固定資産課税台帳の閲覧
- 市区町村の窓口で閲覧可能
固定資産税評価額と相続税評価額の違い:
- 固定資産税評価額: 固定資産税・都市計画税の計算に使用(市区町村が評価、時価の約70%)
- 相続税評価額: 相続税・贈与税の計算に使用(路線価または倍率方式、時価の約80%)
実家の相続における名義変更手続きでは、登録免許税の計算に固定資産税評価額を使用します。
倍率の調べ方
倍率は、国税庁の「評価倍率表」で調べます。
手順:
-
国税庁「路線価図・評価倍率表」にアクセス https://www.rosenka.nta.go.jp/
-
相続開始年、都道府県、市区町村を選択
-
「評価倍率表」を選択
-
該当する地域の倍率を確認
倍率の範囲: 通常1.1〜1.3倍
計算事例
計算式:
相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率
具体例:
- 固定資産税評価額: 2,000万円
- 倍率: 1.1
- 相続税評価額 = 2,000万円 × 1.1 = 2,200万円
倍率方式はシンプルな計算で済むため、路線価方式より簡単です。
マンションの評価方法【区分所有建物】
マンション(区分所有建物)の評価は、「土地部分」と「建物部分」を分けて計算します。
土地部分の評価(敷地権)
マンションの土地部分は、敷地全体の評価額に持分割合を掛けて算出します。
計算式:
土地部分の評価額 = 路線価 × 敷地全体の面積 × 持分割合
具体例:
- 路線価: 40万円/㎡
- 敷地全体の面積: 2,000㎡
- 持分割合: 1/200(200戸のマンション)
- 土地部分の評価額 = 40万円 × 2,000㎡ × 1/200 = 400万円
建物部分の評価
建物部分は、固定資産税評価額をそのまま使用します。
評価額: 固定資産税評価額
固定資産税納税通知書または評価証明書で確認してください。
2024年の評価見直しについて
2024年1月から、マンションの評価方法が見直されました。
新しい評価方法:
マンション評価額 = 評価乖離率 × 従来の評価額
評価乖離率の算出要素:
- 築年数
- 総階数
- 所在階
- その他の要素
評価乖離率により、市場価格と相続税評価額の乖離を調整します。高層階や築浅マンションは、評価額が上昇する可能性があります。
マンションの評価方法は複雑なため、詳細な計算が必要な場合は税理士や不動産鑑定士にご相談ください。
不動産鑑定士が教える:評価額を適正化する5つのポイント
不動産鑑定士として多くの評価実務に携わった経験から、評価額を適正化するポイントをお伝えします。
補正率を漏れなく適用する
どんな土地でも「何らかの補正率が適用できないか」を必ず検討すべきです。
特に奥行価格補正率は、ほぼすべての土地で適用可能です。間口や形状についても、よく確認してください。
実例:
一見長方形に見える土地でも、実測すると微妙に台形であることがあります。このような場合、不整形地補正率を適用できる可能性があります。
私が携わったケースでは、登記簿上は長方形でしたが、測量により台形と判明し、不整形地補正率0.96を適用できました。これにより評価額が4%減額され、約150万円の節税につながりました。
測量により正確な地積を確認
補正率の適用には、正確な「間口」「奥行」「地積」が必要です。
登記簿の地積が実際の地積と異なることがあります。特に古い土地では、測量が不正確だった可能性があります。
測量の費用: 30〜50万円(土地の形状や面積による)
測量により、以下が明確になります:
- 正確な地積(登記簿より小さい可能性)
- 正確な形状(不整形地の判定)
- 補正率適用の根拠
測量費用はかかりますが、評価額が大きく減額されれば、十分に元が取れます。
グレーゾーンは補正率適用で判断
「不整形地かどうか微妙」「間口狭小と言えるか微妙」というケースでは、補正率を適用する方向で検討してください。
税務署との協議で、補正率適用が認められる可能性が高いです。
判断のポイント:
- 形状が標準的な長方形から外れているか
- 間口が狭く、使い勝手が悪いか
- 奥行が極端に長い、または短いか
迷ったら、不動産鑑定士や税理士に相談することをお勧めします。
小規模宅地等の特例との組み合わせ
評価額を補正率で下げた上で、さらに小規模宅地等の特例(最大80%減額)を適用することで、大きな節税効果が得られます。
具体例:
- 当初評価額: 5,000万円
- 補正率適用後: 4,000万円(20%減額)
- 小規模宅地特例適用後: 800万円(80%減額)
- 最終評価額: 800万円
当初評価額5,000万円が、最終的に800万円まで減額されます。この場合、相続税も大幅に減少します。
専門家への相談タイミング
自分で計算できるケースと、専門家に依頼すべきケースがあります。
自分でできるケース:
- 長方形の土地
- 補正率が奥行価格補正率のみ
- 評価額が3,000万円以下
専門家に依頼すべきケース:
- 不整形地、旗竿地など形状が複雑
- 複数の補正率を併用する必要がある
- 評価額が5,000万円を超える
- 税務署との協議が必要な特殊なケース
専門家への相談費用は、10〜30万円程度です。節税効果が大きければ、十分に費用対効果があります。
評価を間違えやすい注意点
実務でよく見られる間違いを4つ紹介します。
路線価と固定資産税評価額の混同
相続税の計算と登録免許税の計算で、使用する評価額が異なります。
- 相続税の計算: 路線価による相続税評価額
- 登録免許税の計算: 固定資産税評価額
相続登記義務化により、登記手続きが必須となりました。登録免許税の計算には固定資産税評価額を使用するため、両者を混同しないよう注意してください。
補正率の適用順序の誤り
補正率を掛け算する順序が重要です。
正しい順序:
奥行価格補正率 → 不整形地補正率 → 間口狭小補正率
順序を間違えると、計算結果が異なる場合があります。
相続開始年の路線価を使わない
相続が発生した年の路線価を使用してください。
例:
- 2025年3月に相続開始 → 2025年分路線価(令和7年分、2025年7月公表)を使用
- 2024年12月に相続開始 → 2024年分路線価(令和6年分)を使用
誤って古い路線価を使うと、評価額が不正確になります。
補正率を適用し忘れる
補正率の存在を知らず、「路線価 × 地積」のみで計算してしまうケースがあります。
結果的に評価額が過大になり、相続税を多く支払うことになります。
必ず補正率の適用可否を確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 路線価と時価の違いは?
路線価は相続税・贈与税の計算に使う公的な評価額で、時価(実勢価格)の約80%水準に設定されています。例えば、路線価が40万円/㎡の土地の実際の売買価格(時価)は約50万円/㎡となります。
Q2. 自分で評価額を計算できますか?それとも専門家に依頼すべきですか?
基本的な計算(路線価 × 地積)なら自分でも可能です。ただし、以下の場合は不動産鑑定士や税理士への相談を推奨します:
- 土地が不整形(台形、L字型、旗竿地など)
- 補正率を複数適用する必要がある
- 評価額が5,000万円を超える
Q3. 補正率は複数適用できますか?
はい、適用できます。例えば、「奥行価格補正率 × 不整形地補正率 × 間口狭小補正率」のように、複数の補正率を併用することで、さらに評価額を下げることが可能です。
Q4. 路線価が設定されていない土地はどうすればいいですか?
路線価が設定されていない地域では「倍率方式」を使います。固定資産税評価額に国税庁が定める倍率(通常1.1〜1.3倍)を掛けて評価額を算出します。
Q5. 路線価はいつ時点のものを使えばいいですか?
相続が発生した年の路線価を使用します。例えば、2025年3月に相続が開始した場合、2025年分(令和7年分)の路線価(2025年7月公表)を使います。
Q6. 評価額が高すぎると感じる場合、どうすればいいですか?
以下を確認してください:
- 補正率の適用漏れ: 奥行、間口、不整形地などの補正率を見落としていないか
- 測量の正確性: 実際の地積が登記簿より小さい可能性
- 不動産鑑定士への相談: 評価額が適正か、第三者の意見を求める
Q7. マンションの評価額はどうやって計算しますか?
マンション(区分所有建物)の評価は、「土地(敷地権)」と「建物」を分けて計算します:
- 土地部分: 路線価 × 敷地全体の面積 × 持分割合
- 建物部分: 固定資産税評価額
2024年1月から評価乖離率による調整が導入されました。
Q8. 相続税評価額と固定資産税評価額の違いは?
- 相続税評価額: 相続税・贈与税の計算に使用(路線価または倍率方式)
- 固定資産税評価額: 固定資産税・都市計画税の計算に使用(市区町村が評価)
一般的に、固定資産税評価額は時価の約70%、相続税評価額(路線価)は時価の約80%です。
Q9. 評価額を下げる方法はありますか?
適法な方法で評価額を下げるには:
- 補正率の適用: 不整形地、間口狭小、奥行長大などの補正率を漏れなく適用
- 測量の実施: 実測により地積が減少する可能性
- 小規模宅地等の特例: 評価額を最大80%減額(別途要件あり)
- 不動産鑑定評価書の取得: 特殊な事情がある場合、鑑定評価額を根拠に減額交渉
Q10. 路線価図の見方がわかりません
路線価図の見方は、本記事の「路線価の調べ方」セクションで詳しく解説しています。基本的には:
- 国税庁のサイトで住所を入力
- 該当する路線価図を表示
- 道路に書かれた数字が路線価(千円単位)
- アルファベットは借地権割合
数字が「350」なら、路線価は35万円/㎡です。
まとめ
不動産の相続税評価額は、路線価方式または倍率方式で算出します。路線価方式では、路線価に補正率を適用し、地積を掛けて計算します。補正率(奥行価格補正率、不整形地補正率、間口狭小補正率など)を適切に適用することで、評価額を適正化し、節税効果を生み出せます。
重要なポイント:
- 補正率を漏れなく適用する: どんな土地でも何らかの補正率が適用できないか検討
- 測量により正確な地積を確認: 補正率適用の根拠が明確に
- 小規模宅地特例との組み合わせ: さらに大きな節税効果
- 専門家への相談タイミング: 評価額が5,000万円を超える、複雑なケースは専門家推奨
評価額の計算に不安がある場合、または節税効果を最大化したい場合は、不動産鑑定士や税理士にご相談ください。
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