【年末前に必読】2025年にやるべき相続対策チェックリスト

この記事の結論
年末までに相続対策を済ませることで、相続税の節税、家族間トラブルの回避、手続きの簡素化が可能になります。特に、生前贈与(年110万円の非課税枠)、不動産評価額の確認、遺言書の作成・更新は年内に完了すべき重要項目です。
今年も残り2ヶ月余り。年末までに何をすべきか、優先順位をつけて解説します。
目次
- なぜ年内に相続対策をすべきか
- 相続対策チェックリスト10項目【優先順位付き】
- 不動産評価額確認の重要性
- 各項目の詳細解説
- 年内にできること、来年でもいいことの区別
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
1. なぜ年内に相続対策をすべきか
1-1. 年末の重要性
年末が相続対策のタイミングとして重要な理由は、以下の3点です。
①生前贈与の非課税枠(年110万円)
生前贈与の非課税枠は「暦年」単位です。つまり、12月31日までに贈与を実行すれば、年110万円の非課税枠を使い切れます。そして翌年1月1日からは、新たに110万円の枠が利用可能になります。
逆に言えば、今年の枠を使わなければ、それは単に消滅してしまいます。年末までに贈与を実行することで、節税効果を最大化できるのです。
②税制改正への対応
税制は毎年見直されます。2025年も相続税・贈与税に関する改正が予定されており、年内に対策を済ませておくことで、改正による影響を最小限に抑えられます。
③終活意識の高まり
年末年始は家族が集まる機会が多く、相続の話をしやすいタイミングです。「年末までに準備を済ませておく」ことで、新年に家族で落ち着いて話し合いができます。
1-2. 年内に対策するメリット
年内に相続対策を済ませることで、以下のメリットが得られます。
| メリット | 具体的な効果 |
|---|---|
| 相続税の節税 | 生前贈与、小規模宅地特例の活用で数百万円単位の節税 |
| 家族との話し合い | 年末年始に落ち着いて相続の話ができる |
| 手続きの簡素化 | 財産目録、遺言書を準備しておけば、相続発生時の負担が激減 |
| トラブルの回避 | 遺言書で遺産分割の方針を明確にし、家族間のもめ事を防ぐ |
1-3. 年内にできること、来年でもいいことの区別
すべてを年内に完了する必要はありません。優先順位をつけて、年内必須の項目と来年でも可の項目を区別しましょう。
年内必須:
- 生前贈与の実行(年110万円の非課税枠)
- 財産目録の作成
- 不動産評価額の確認
来年でも可:
- 相続登記の確認
- 専門家への相談
詳細は後述の「5. 年内にできること、来年でもいいことの区別」で解説します。
2. 相続対策チェックリスト10項目【優先順位付き】
以下、優先順位順に10項目を解説します。それぞれに「所要時間」「実行のタイミング」を記載していますので、ご自身のスケジュールに合わせて進めてください。
2-1. 【最優先】財産目録の作成
所要時間: 2-3時間 実行タイミング: 今すぐ
財産目録は、相続対策の出発点です。「何を持っているか」を把握しなければ、どんな対策が必要かわかりません。
財産目録に含めるべき項目:
- 不動産(自宅、投資用物件、土地など)
- 預貯金(銀行口座、定期預金)
- 有価証券(株式、投資信託、債券)
- 保険(生命保険、医療保険)
- その他(自動車、貴金属、美術品など)
作成方法:
- エクセルや紙に、項目ごとに記載
- 不動産は「所在地」「面積」「評価額」を記入
- 預貯金は「銀行名」「口座番号」「残高」を記入
- 有価証券は「証券会社名」「銘柄」「株数・口数」「時価」を記入
ポイント: 評価額は概算でOK。正確な評価は次のステップで行います。
2-2. 【最優先】不動産の評価額確認(路線価、固定資産税評価額)
所要時間: 1-2時間 実行タイミング: 今すぐ
不動産は相続財産の中で最も金額が大きく、相続税に直結します。評価額を正確に把握することが節税の第一歩です。
確認方法:
①路線価を確認(国税庁「路線価図」で検索)
- 路線価図から、自宅や土地の路線価を確認
- 路線価×土地面積で、概算評価額を算出
②固定資産税評価額を確認(固定資産税納税通知書を確認)
- 毎年4-6月に郵送される「固定資産税納税通知書」に記載
- 土地・建物それぞれの評価額を確認
注意点: 路線価と固定資産税評価額は異なる基準です。相続税の計算には「路線価方式」または「倍率方式」を使います。詳細は「3. 不動産評価額確認の重要性」で解説します。
2-3. 【最優先】生前贈与の検討(年110万円の非課税枠)
所要時間: 1-2時間(贈与の準備・実行) 実行タイミング: 12月31日まで
生前贈与は、相続税を減らす最も確実な方法です。年110万円の非課税枠を活用すれば、毎年確実に財産を移転できます。
生前贈与の基本:
- 年110万円までは贈与税がかからない(暦年贈与)
- 12月31日までに実行する必要がある
- 贈与契約書を作成し、証拠を残す
具体例:
| 家族構成 | 年間贈与額 | 10年後の効果 |
|---|---|---|
| 子2人 | 110万円×2人 = 220万円/年 | 2,200万円の財産移転 |
| 子2人+孫3人 | 110万円×5人 = 550万円/年 | 5,500万円の財産移転 |
注意点:
- 贈与の証拠を残す(贈与契約書、振込記録)
- 定期贈与とみなされないよう、金額や時期を変える
- 受贈者が自由に使える状態にする(名義預金にしない)
2-4. 【高優先】遺言書の作成・更新
所要時間: 2-3時間(公正証書遺言の場合、数日) 実行タイミング: 年内(遅くとも12月中旬まで)
遺言書は、遺産分割の方針を明確にし、家族間のトラブルを防ぐ最も効果的な手段です。特に、以下に該当する方は必ず作成してください。
遺言書が必須の方:
- 子がいない夫婦
- 再婚している方
- 事業を営んでいる方
- 相続人が多い方(3人以上)
- 特定の相続人に多く残したい方
遺言書の種類:
| 種類 | メリット | デメリット | 費用 |
|---|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 費用がかからない、手軽 | 形式不備で無効になるリスク | 0円 |
| 公正証書遺言 | 公証人が作成、確実 | 費用がかかる、手続きに時間 | 5-10万円 |
| 法務局保管制度 | 自筆でも安全に保管 | 作成は自分でする必要 | 3,900円 |
推奨: 確実性を重視するなら「公正証書遺言」、費用を抑えるなら「自筆証書遺言+法務局保管」がおすすめです。
2-5. 【高優先】小規模宅地等の特例の適用確認
所要時間: 1-2時間(適用要件の確認) 実行タイミング: 年内
小規模宅地等の特例は、相続税評価額を最大80%減額できる強力な節税手段です。自宅や事業用の土地を相続する場合、必ず適用を検討してください。
特例の概要:
| 種類 | 減額率 | 適用面積 | 主な要件 |
|---|---|---|---|
| 居住用宅地 | 80%減額 | 330㎡まで | 配偶者または同居親族が相続 |
| 事業用宅地 | 80%減額 | 400㎡まで | 事業を継続する相続人が相続 |
| 貸付用宅地 | 50%減額 | 200㎡まで | 貸付事業を継続する相続人が相続 |
適用要件の確認ポイント:
- 配偶者または同居親族がいるか
- 相続後も居住を継続するか
- 所有期間・居住期間の要件を満たすか
注意点: テレワークや二拠点生活の場合、「同居」の判定が複雑です。詳細は小規模宅地等の特例を最大限活用する方法で解説しています。
2-6. 【高優先】相続人の確認(戸籍調査)
所要時間: 2-3時間(戸籍の取得に数週間) 実行タイミング: 年内
相続が発生したとき、最初にすべきことが「相続人の確定」です。相続人が誰かわからなければ、遺産分割協議ができません。
相続人の調査方法:
- 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本を取得
- 配偶者、子、親、兄弟姉妹を確認
- 養子縁組、認知、離婚歴がないか確認
よくある見落とし:
- 離婚した元配偶者との間の子
- 認知した子
- 養子
ポイント: 戸籍の取得には数週間かかることがあります。早めに着手しましょう。
2-7. 【中優先】生命保険の見直し(非課税枠の活用)
所要時間: 1-2時間 実行タイミング: 年内または来年
生命保険の死亡保険金には「非課税枠」があります。相続人1人あたり500万円まで非課税です。
非課税枠の計算:
非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数
具体例:
- 法定相続人が3人(配偶者、子2人)の場合: 500万円×3人 = 1,500万円まで非課税
活用のポイント:
- 現金預金を生命保険に振り替えることで、相続税を減らせる
- 受取人を指定できるため、遺産分割協議が不要
2-8. 【中優先】不動産の整理(空き家、不要な土地の売却)
所要時間: 数ヶ月(売却まで含む) 実行タイミング: 来年でも可
使っていない空き家や土地は、相続後に「負動産」となるリスクがあります。生前に売却・整理しておくことで、相続人の負担を減らせます。
空き家のリスク:
- 固定資産税がかかり続ける
- 管理費用(草刈り、修繕)がかかる
- 相続後に売却しようとしても買い手がつかない
売却のタイミング:
- 生前に売却すれば、現金化して相続税の納税資金に充てられる
- 空き家の特例(3,000万円控除)を活用できる場合もある
2-9. 【中優先】相続登記の確認(未登記不動産の洗い出し)
所要時間: 1-2時間 実行タイミング: 来年でも可
2024年4月から相続登記が義務化されました。相続開始を知った日から3年以内に登記しなければ、10万円以下の過料が科されます。
確認すべきこと:
- 親や祖父母から相続した不動産で、まだ登記していないものはないか
- 登記簿の名義が故人のままになっていないか
注意点: 相続登記をしないまま放置すると、二次相続、三次相続が発生し、相続人が増えて手続きが非常に複雑になります。
詳細は相続登記義務化の注意点と罰則で解説しています。
2-10. 【低優先】専門家への相談(税理士、弁護士、不動産鑑定士)
所要時間: 1時間(初回相談) 実行タイミング: 来年でも可
相続対策が複雑な場合、専門家への相談を検討しましょう。特に、以下に該当する方は専門家のサポートが有効です。
専門家への相談が推奨されるケース:
- 相続財産が1億円以上
- 不動産が複数ある
- 事業を営んでいる
- 相続人が多い、または関係が複雑
専門家の種類と役割:
| 専門家 | 役割 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 税理士 | 相続税の計算、申告、節税対策 | 相続財産の0.5-1.0% |
| 弁護士 | 遺産分割協議、トラブル解決 | 30万円〜 |
| 不動産鑑定士 | 不動産の正確な評価額算定 | 20-30万円/件 |
| 司法書士 | 相続登記の手続き | 5-10万円 |
3. 不動産評価額確認の重要性
相続財産の中で最も金額が大きいのが不動産です。不動産の評価額を正確に把握することが、相続対策の第一歩です。
3-1. 不動産評価額が相続税に直結する理由
相続税は、相続財産の総額に対して課税されます。不動産の評価額が大きいほど、相続税も高くなります。
相続税の計算式(簡略版):
相続税額 = (相続財産の総額 - 基礎控除) × 税率
基礎控除:
基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
具体例:
- 法定相続人3人の場合: 3,000万円 + 600万円×3人 = 4,800万円
- 相続財産が5,000万円の場合: 5,000万円 - 4,800万円 = 200万円に課税
このように、不動産の評価額が200万円変われば、課税対象額も200万円変わります。
3-2. 路線価と固定資産税評価額の確認方法
不動産の評価には、主に「路線価方式」と「倍率方式」が使われます。
①路線価方式(市街地の宅地)
国税庁の「路線価図」を使って評価します。
- 路線価図で、対象地の路線価を確認
- 路線価(単価/㎡)× 土地面積(㎡)で評価額を算出
②倍率方式(路線価が設定されていない地域)
固定資産税評価額に倍率を掛けて評価します。
- 固定資産税評価額 × 倍率 = 相続税評価額
確認方法:
- 路線価図: 国税庁ウェブサイト「路線価図・評価倍率表」
- 固定資産税評価額: 固定資産税納税通知書(毎年4-6月に郵送)
3-3. 実務事例:評価額を正確に把握して200万円節税したケース
事例: 東京都内の戸建て住宅(土地200㎡、築30年)を相続
状況:
- 当初、固定資産税評価額をそのまま使って概算: 5,000万円
- 不動産鑑定士による正確な評価: 4,600万円
結果:
- 評価額の差: 400万円
- 相続税率が20%のため、相続税の差: 400万円×20% = 80万円の節税
さらに、小規模宅地等の特例を適用し、評価額を80%減額。最終的な節税額は約200万円となりました。
ポイント: 不動産評価は「概算」ではなく「正確な算定」が重要です。特に、不整形地、間口が狭い土地、高低差がある土地などは、補正により評価額が下がることがあります。
3-4. 評価額を下げる方法(不整形地補正、小規模宅地特例)
不動産評価額を下げる方法は、主に以下の2つです。
①不整形地補正・間口狭小補正
土地の形状が悪い、間口が狭い、高低差があるなどの場合、評価額を減額できます。
| 補正項目 | 減額率の目安 |
|---|---|
| 不整形地補正 | 10-40%減額 |
| 間口狭小補正 | 3-10%減額 |
| 奥行価格補正 | 5-15%減額 |
| がけ地補正 | 10-40%減額 |
②小規模宅地等の特例
前述の通り、居住用宅地なら最大80%減額できます。
注意点: これらの補正は、専門知識がないと正確に適用できません。不動産鑑定士や税理士に相談することをおすすめします。
4. 各項目の詳細解説
4-1. 財産目録の作成方法(テンプレート提供)
財産目録は、以下のようなフォーマットで作成します。
【財産目録テンプレート】
■不動産
- 自宅: 東京都〇〇区〇〇 △△㎡ 評価額: 〇〇万円
- 投資用マンション: 東京都〇〇区〇〇 評価額: 〇〇万円
■預貯金
- 〇〇銀行 普通預金 口座番号: 〇〇 残高: 〇〇万円
- △△銀行 定期預金 口座番号: 〇〇 残高: 〇〇万円
■有価証券
- 〇〇証券 株式 銘柄: 〇〇 株数: 〇〇 時価: 〇〇万円
■保険
- 〇〇生命保険 死亡保険金: 〇〇万円 受取人: 〇〇
■その他
- 自動車: 〇〇(車種) 時価: 〇〇万円
- 貴金属・美術品: 〇〇 時価: 〇〇万円
合計: 〇〇万円
ポイント: 定期的に更新しましょう。年1回、年末に見直すのがおすすめです。
4-2. 生前贈与の具体的な進め方(不動産の贈与、暦年贈与)
生前贈与には、主に「現金の贈与」と「不動産の贈与」があります。
①現金の贈与
最もシンプルで、年110万円の非課税枠を活用できます。
手順:
- 贈与契約書を作成(日付、贈与者、受贈者、金額を記載)
- 銀行振込で贈与(証拠を残す)
- 受贈者が自由に使える状態にする
②不動産の贈与
不動産を贈与する場合、登記が必要です。
手順:
- 不動産の評価額を確認
- 贈与税の計算(年110万円を超える場合、贈与税が発生)
- 贈与契約書を作成
- 登記手続き(司法書士に依頼)
注意点: 不動産の贈与は、登録免許税(評価額の2%)、不動産取得税(評価額の3-4%)がかかります。現金贈与の方がコストは低いです。
4-3. 遺言書の種類と選び方(自筆証書遺言、公正証書遺言)
遺言書の種類ごとに、作成方法と注意点を解説します。
①自筆証書遺言
自分で手書きする遺言書です。
作成方法:
- 全文を自筆で書く(パソコン不可、ただし財産目録はパソコン可)
- 日付、氏名を自筆で書く
- 押印する
メリット: 費用がかからない、手軽 デメリット: 形式不備で無効になるリスク、紛失・改ざんのリスク
②公正証書遺言
公証役場で公証人に作成してもらう遺言書です。
作成方法:
- 遺言の内容を決める
- 公証役場に連絡し、予約
- 必要書類を準備(戸籍謄本、印鑑証明書、財産目録など)
- 公証役場で作成(証人2名が必要)
メリット: 確実、紛失・改ざんのリスクなし デメリット: 費用がかかる(5-10万円)、手続きに時間
③法務局保管制度
自筆証書遺言を法務局で保管してもらう制度です。
メリット: 費用が安い(3,900円)、紛失・改ざんのリスクなし デメリット: 作成は自分でする必要
推奨: 確実性を重視するなら「公正証書遺言」、費用を抑えるなら「自筆証書遺言+法務局保管」がおすすめです。
4-4. 小規模宅地特例の適用要件(居住用、事業用、貸付用)
小規模宅地等の特例の詳細な適用要件は、以下の通りです。
①居住用宅地(330㎡まで80%減額)
適用要件:
- 被相続人が居住していた宅地
- 配偶者が相続する、または
- 同居親族が相続し、相続後も居住を継続する
注意点:
- 同居の判定: 住民票だけでなく、実際の居住実態が重視される
- テレワークの場合: 実家に帰省中でも「同居」とみなされない場合がある
②事業用宅地(400㎡まで80%減額)
適用要件:
- 被相続人が事業(商店、工場、事務所など)に使っていた宅地
- 相続人が事業を継続する
③貸付用宅地(200㎡まで50%減額)
適用要件:
- 被相続人が貸付(アパート、駐車場など)に使っていた宅地
- 相続人が貸付事業を継続する
詳細は小規模宅地等の特例を最大限活用する方法で解説しています。
5. 年内にできること、来年でもいいことの区別
すべてを年内に完了する必要はありません。優先順位をつけて、計画的に進めましょう。
5-1. 年内必須(生前贈与、財産目録作成、不動産評価確認)
12月31日までに必ず実行すべき項目:
| 項目 | 理由 | 所要時間 |
|---|---|---|
| 生前贈与の実行 | 年110万円の非課税枠は暦年単位。12月31日までに実行しないと枠が消滅 | 1-2時間 |
| 財産目録の作成 | 年末の資産状況を記録し、翌年の対策に活用 | 2-3時間 |
| 不動産評価額の確認 | 路線価図は毎年更新される。今年の評価額を把握 | 1-2時間 |
5-2. 来年でも可(相続登記、専門家への相談)
来年でも問題ない項目:
| 項目 | 理由 | タイミング |
|---|---|---|
| 相続登記の確認 | 相続発生から3年以内なら問題なし | 来年1-3月 |
| 専門家への相談 | 財産目録が完成してから相談する方が効率的 | 来年1-3月 |
| 遺言書の作成 | 年内が理想だが、来年でも大きな問題はない | 来年1-6月 |
5-3. タイミングの見極め方
年内に完了すべきかどうかの判断基準:
✅ 年内必須:
- 暦年単位で効果が発揮されるもの(生前贈与)
- 税制改正の影響を受ける可能性があるもの
✅ 来年でも可:
- 期限が長いもの(相続登記は3年以内)
- 準備に時間がかかるもの(専門家への相談、遺言書作成)
6. よくある質問(FAQ)
Q1. 生前贈与は年内いつまでに実行すべきですか?
A. 12月31日までに贈与を完了させる必要があります。銀行振込の場合、年末は混雑するため、12月中旬までに実行することをおすすめします。
特に、不動産の贈与は登記が必要なため、12月に入ってからでは間に合わない可能性があります。現金贈与なら、12月下旬でも問題ありません。
Q2. 遺言書は毎年更新する必要がありますか?
A. 必ずしも毎年更新する必要はありませんが、以下の場合は更新を検討してください。
更新すべきケース:
- 財産の状況が大きく変わった(不動産を売却、新規購入など)
- 家族構成が変わった(子の結婚、孫の誕生など)
- 相続人との関係が変わった(疎遠になった、トラブルがあったなど)
推奨: 3-5年に1回、見直すのがおすすめです。
Q3. 不動産評価額の確認は自分でできますか?
A. 概算なら自分で確認できます。以下の手順で行います。
自分でできること:
- 路線価図で路線価を確認
- 路線価×土地面積で概算評価額を算出
- 固定資産税評価額を確認(固定資産税納税通知書)
専門家に依頼すべきケース:
- 不整形地、間口が狭い土地、高低差がある土地
- 複数の土地を持っている
- 評価額が高額(5,000万円以上)
正確な評価額を知りたい場合は、不動産鑑定士に依頼することをおすすめします。
Q4. 相続対策にいくらかかりますか?
A. 対策の内容によって大きく異なります。
費用の目安:
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 遺言書作成(自筆) | 0円 |
| 遺言書作成(公正証書) | 5-10万円 |
| 税理士への相談 | 相続財産の0.5-1.0%(初回相談は無料の場合も) |
| 不動産鑑定士への評価依頼 | 20-30万円/件 |
| 司法書士への登記依頼 | 5-10万円 |
自分でできること:
- 財産目録の作成
- 生前贈与の実行(贈与契約書の作成)
- 不動産評価額の概算確認
専門家に依頼すべきこと:
- 遺言書の作成(公正証書遺言)
- 不動産の正確な評価
- 相続税の申告
Q5. 年内に間に合わない場合はどうすればいいですか?
A. 優先順位をつけて、最低限の項目だけを年内に完了させましょう。
最低限やるべきこと:
- 生前贈与の実行(年110万円の非課税枠を使い切る)
- 財産目録の作成(概算でOK)
来年に持ち越してもいいこと:
- 遺言書の作成
- 専門家への相談
- 相続登記の確認
年内に完了できなくても、焦る必要はありません。来年1月から計画的に進めれば問題ありません。
Q6. 生前贈与と遺言書、どちらを優先すべきですか?
A. 年内なら、生前贈与を優先してください。
理由:
- 生前贈与は12月31日までに実行しないと、年110万円の非課税枠が消滅
- 遺言書は年内でなくても問題なし
ただし、家族関係が複雑な場合や、トラブルが予想される場合は、遺言書の作成も早めに検討してください。
Q7. 財産目録は誰に見せるべきですか?
A. 原則として、相続人(配偶者、子など)に見せるべきです。
メリット:
- 相続発生時にスムーズに手続きできる
- 相続人が財産の全容を把握でき、トラブルを防げる
- 生前贈与や遺言書の内容を相続人と共有できる
注意点:
- 財産の詳細を見せたくない場合は、概要だけを共有する方法もあります
- 専門家(税理士、弁護士)には必ず見せてください
Q8. 小規模宅地特例は生前に準備できますか?
A. はい、できます。むしろ、生前に適用要件を確認しておくことが重要です。
生前にできること:
- 同居要件を満たすよう、生前に同居を開始する
- 事業継続要件を満たすよう、生前に事業を子に承継する
- 適用要件を満たさない場合、生前に対策を講じる(例: 不動産の整理、売却)
詳細は小規模宅地等の特例を最大限活用する方法で解説しています。
Q9. 相続登記は自分でできますか?
A. はい、できます。ただし、手続きが複雑な場合は司法書士に依頼するのが安全です。
自分でできるケース:
- 相続人が少ない(配偶者と子のみなど)
- 遺産分割協議が完了している
- 不動産が1-2件程度
司法書士に依頼すべきケース:
- 相続人が多い(3人以上)
- 遺産分割協議が難航している
- 不動産が複数ある、または権利関係が複雑
詳細は相続登記義務化の注意点と罰則で解説しています。
Q10. 相続対策は何歳から始めるべきですか?
A. 60歳を目安に、遅くとも65歳までには始めてください。
理由:
- 生前贈与は時間をかけて行うほど効果が大きい(10年間で1,000万円以上の財産移転が可能)
- 遺言書の作成、財産の整理には時間がかかる
- 認知症になると、遺言書の作成や贈与ができなくなる
年齢別の推奨対策:
- 50代: 財産目録の作成、不動産評価額の確認
- 60代: 生前贈与の開始、遺言書の作成
- 70代: 相続登記の確認、専門家への相談
7. まとめ
年末までに相続対策を済ませることで、相続税の節税、家族間トラブルの回避が可能です。特に、以下の3項目は年内に必ず完了させましょう。
年内必須の3項目:
- 生前贈与の実行(年110万円の非課税枠を活用)
- 財産目録の作成(相続対策の出発点)
- 不動産評価額の確認(節税の第一歩)
不動産の評価額を正確に把握することが、相続対策の第一歩です。路線価図や固定資産税評価額を確認し、必要に応じて不動産鑑定士に相談することで、正確な評価額を把握し、節税対策を最適化できます。
年末年始は家族が集まる機会です。財産目録を準備しておけば、家族で落ち着いて相続の話ができます。今年のうちに準備を進めて、新年を安心して迎えましょう。