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確定申告前に確認!相続した不動産の売却益と税金【2025年改正版】

確定申告前に確認!相続した不動産の売却益と税金【2025年改正版】
公開: 2025-11-10

この記事の結論

相続した不動産を売却した場合、譲渡所得税がかかる可能性があり、売却した翌年の3月15日までに確定申告が必要です。税額は「売却価格 - 取得費 - 譲渡費用」に税率(長期20.315%、短期39.63%)をかけて計算します。

取得費加算の特例(相続開始から約3年3ヶ月以内)や空き家特例(最高3,000万円控除、2024年改正で相続人3人以上は2,000万円に縮小)を活用すれば、大幅な節税が可能です。

この記事では、2025年改正版の最新情報をもとに、税金の計算方法、確定申告の手続き、必要書類、期限管理を不動産鑑定士の視点から実務的に解説します。

1. 相続した不動産を売却したら確定申告が必要?基礎知識

1-1. 譲渡所得税とは何か

譲渡所得税とは、不動産などの資産を売却して利益が出た場合にかかる税金です。相続した不動産を売却した場合も、売却益が出れば課税対象となります。

相続税と譲渡所得税の違い

多くの方が混同しがちですが、相続税と譲渡所得税は別々の税金です:

  • 相続税: 財産を相続したことに対する税金(相続開始から10ヶ月以内に申告)
  • 譲渡所得税: 不動産を売却して利益を得たことに対する税金(売却した翌年の3月15日までに申告)

つまり、相続時に相続税を払い、その後売却した場合には譲渡所得税も払う可能性があります。これは二重課税ではなく、異なる事由に対する課税です。ただし、「取得費加算の特例」により、一部調整される仕組みがあります。

確定申告が必要なケース

以下の場合、確定申告が必要です:

  • 売却価格が取得費と譲渡費用の合計を上回り、利益が出た
  • 特例を適用して税額がゼロになる場合でも、特例の適用を受けるために申告が必要

確定申告が不要なケース

  • 売却価格が取得費と譲渡費用の合計を下回り、損失が出た(ただし、記録のため申告を推奨)

1-2. 確定申告の期限と罰則

確定申告期限

不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までに確定申告を行います。例えば、2024年に売却した場合、2025年3月15日が期限です。

期限を過ぎた場合のペナルティ

期限を過ぎて申告した場合、以下のペナルティが発生します:

  • 無申告加算税: 本来の税額の15〜20%(期限後でも自主的に申告すれば5%に軽減)
  • 延滞税: 年率最大14.6%(納付が遅れた期間に応じて加算)

例えば、本来の税額が100万円で、3ヶ月遅れた場合:

  • 無申告加算税: 15万円(15%)
  • 延滞税: 約3.6万円(年率14.6%の3ヶ月分)
  • 合計: 118.6万円

期限は厳守しましょう。

期限延長の可否

原則として期限延長は認められません。ただし、災害などやむを得ない理由がある場合は、税務署に申請することで延長が認められるケースもあります。

1-3. 売却益が出なくても確定申告は必要?

売却損(譲渡所得がマイナス)の場合、法律上は確定申告の義務はありません。

ただし、以下の理由から申告を推奨します:

  • 特例適用の記録を残す(将来の税務調査に備える)
  • 同一年内に他の不動産を売却した場合、損益通算できる
  • 取得費の証明を記録に残す

なお、不動産の譲渡損失は給与所得などの他の所得と損益通算できません(不動産同士の損益通算のみ可能)。

2. 譲渡所得税の計算方法【2025年改正版】

2-1. 譲渡所得の計算式

譲渡所得税は以下の計算式で求めます:

譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用
税額 = 譲渡所得 × 税率

各項目の詳細を見ていきましょう。

2-2. 取得費の算定方法

取得費とは

取得費とは、被相続人が不動産を購入した際の価格です。相続人が相続した時の価格(相続税評価額)ではありません。

よくある誤解:相続税評価額は取得費ではない

「相続税の評価額を取得費にできる」と勘違いされる方が多いですが、これは誤りです。取得費は被相続人が実際に購入した価格(または昭和時代なら当時の購入価格)です。

例:

  • 被相続人の購入価格: 2,000万円(1985年購入)
  • 相続税評価額: 3,500万円(2023年相続時)
  • 売却価格: 5,000万円(2024年売却)

この場合、取得費は2,000万円です(3,500万円ではありません)。

購入時の契約書がない場合の対応

購入時の契約書や領収書が見つからない場合、以下の方法があります:

  1. 概算取得費(5%): 売却価格の5%を取得費とする

    • 例: 売却価格3,000万円なら、取得費は150万円
    • ただし、税額が大幅に増えるため要注意
  2. 実額取得費の証明:

    • 不動産会社への問い合わせ(当時の契約書のコピー)
    • 登記簿謄本の抵当権設定額から推定
    • 公示価格や路線価の推移から推定
    • 不動産鑑定士による鑑定評価書の取得

不動産鑑定士の視点:取得費の適正な算定

購入時の契約書がない場合でも、以下の方法で取得費を推定できる可能性があります:

  • 公示価格の推移データ: 国土交通省の地価公示データから、購入当時の価格を推定
  • 路線価の推移: 相続税路線価の過去データから購入価格を逆算
  • 不動産価格指数: 国土交通省の不動産価格指数を用いた補正
  • 鑑定評価書: 不動産鑑定士が購入当時の時価を評価

例えば、1985年に購入した土地の契約書がない場合、当時の路線価と現在の路線価の比率から購入価格を推定できます。概算取得費5%よりも有利になるケースが多いため、専門家に相談する価値があります。

注意: この推定方法は合理的な根拠があれば税務署に認められる可能性がありますが、必ず認められるとは限りません。不動産の取得価格については不動産鑑定士へのご相談を強く推奨します。

リフォーム費用、設備費用の取り扱い

以下の費用は取得費に加算できます:

  • 取得費に含まれるもの:

    • 購入時の仲介手数料
    • 登記費用(登録免許税、司法書士報酬)
    • 不動産取得税
    • 増改築費用(建物の価値を高める工事)
    • 設備費用(エアコン、給湯器など建物に組み込まれたもの)
  • 取得費に含まれないもの:

    • 通常の修繕費(原状回復工事)
    • 管理費、固定資産税
    • 火災保険料

領収書が残っている場合は、専門家に確認して取得費に加算しましょう。

2-3. 譲渡費用とは

譲渡費用とは、不動産を売却するために直接かかった費用です。

譲渡費用に含まれるもの

  • 仲介手数料(不動産会社への報酬)
  • 売買契約書の印紙税
  • 登記費用(抵当権抹消登記など)
  • 測量費用
  • 建物の解体費用
  • 売却するための広告費
  • 立退料(借家人がいた場合)

譲渡費用に含まれないもの

  • 売却前の修繕費
  • 固定資産税
  • 管理費
  • 引越し費用

2-4. 税率と税額の計算

譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって異なります。

短期譲渡所得(所有期間5年以内)

  • 税率: 39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)
  • 所得税には復興特別所得税2.1%が含まれます

長期譲渡所得(所有期間5年超)

  • 税率: 20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)
  • 所得税には復興特別所得税2.1%が含まれます

所有期間の計算方法

重要なのは、所有期間は被相続人が取得した日から起算することです。相続人が相続した日からではありません。

例:

  • 被相続人の取得日: 2010年4月1日
  • 相続開始日: 2023年6月1日
  • 売却日: 2024年10月1日

所有期間は2010年4月1日から2024年10月1日までの14年以上となり、長期譲渡所得(20.315%)が適用されます。

2-5. 税額シミュレーション(具体例)

ケース1: 都市部の実家売却(利益あり)

  • 売却価格: 5,000万円
  • 取得費: 2,000万円(被相続人の購入価格、1990年購入)
  • 譲渡費用: 200万円(仲介手数料、登記費用など)
  • 所有期間: 34年(長期譲渡所得)

計算:

譲渡所得 = 5,000万円 - 2,000万円 - 200万円 = 2,800万円
税額 = 2,800万円 × 20.315% = 約569万円

ケース2: 地方の空き家売却(利益なし)

  • 売却価格: 800万円
  • 取得費: 900万円
  • 譲渡費用: 100万円(解体費用含む)
  • 所有期間: 25年(長期譲渡所得)

計算:

譲渡所得 = 800万円 - 900万円 - 100万円 = -200万円(損失)
税額 = 0円

この場合、確定申告は法律上不要ですが、記録のため申告することを推奨します。

ケース3: 取得費不明の場合(概算取得費5%)

  • 売却価格: 3,000万円
  • 取得費: 150万円(概算取得費5%)
  • 譲渡費用: 100万円
  • 所有期間: 不明(長期として計算)

計算:

譲渡所得 = 3,000万円 - 150万円 - 100万円 = 2,750万円
税額 = 2,750万円 × 20.315% = 約558万円

概算取得費(5%)を使うと、税額が大幅に増えるため、可能な限り実額の証明を試みましょう。

3. 節税できる特例【2025年最新】

3-1. 取得費加算の特例

特例の概要

取得費加算の特例とは、相続税を支払った人が相続不動産を売却する場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる制度です。

適用条件

以下の条件をすべて満たす必要があります:

  • 相続または遺贈により不動産を取得したこと
  • 相続税が課税され、実際に支払ったこと
  • 相続開始日の翌日から相続税の申告期限(10ヶ月)の翌日から3年以内に売却したこと
    • つまり、相続開始から約3年10ヶ月以内

計算方法

取得費に加算できる相続税額は以下の式で計算します:

取得費加算額 = 支払った相続税額 × (売却した不動産の相続税評価額 / 相続財産の総額)

具体例

  • 相続税額: 500万円
  • 相続財産の総額: 8,000万円
  • 売却した不動産の相続税評価額: 4,800万円

計算:

取得費加算額 = 500万円 × (4,800万円 / 8,000万円) = 300万円

この300万円を取得費に加算できます。

節税効果

取得費が300万円増えることで、譲渡所得が300万円減ります:

節税額 = 300万円 × 20.315% = 約61万円

必要書類

  • 相続税の申告書のコピー
  • 相続税の納付書(領収書)
  • 遺産分割協議書のコピー
  • 譲渡所得の内訳書

3-2. 空き家3,000万円特別控除(令和6年改正対応)

特例の概要

相続した空き家を売却する場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。ただし、令和6年(2024年)税制改正により、相続人が3人以上の場合は最高2,000万円に縮小されました。

令和6年税制改正のポイント

相続人の数 控除額 適用開始
1人 3,000万円 変更なし
2人 3,000万円 変更なし
3人以上 2,000万円 2024年1月1日以降の譲渡

相続人が3人以上の場合、2024年1月1日以降に売却すると控除額が3,000万円から2,000万円に縮小されます。

適用条件

以下の条件をすべて満たす必要があります:

  1. 建物の要件:

    • 昭和56年5月31日以前に建築された建物(旧耐震基準)
    • 被相続人が1人で居住していたこと
    • 相続開始直前まで居住していたこと
  2. 売却の要件:

    • 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却
    • 売却価格が1億円以下
    • 建物を解体して更地で売却するか、耐震基準を満たす建物として売却
  3. 耐震基準の要件:

    • 建物を残す場合: 耐震基準適合証明書が必要
    • 建物を解体する場合: 更地にして売却

必要書類

  • 市区町村の確認書(被相続人居住用家屋等確認書)
  • 耐震基準適合証明書(建物を残す場合)
  • 売買契約書のコピー
  • 登記事項証明書(全部事項証明書)

市区町村の確認書の取得には2〜4週間かかるため、早めに準備しましょう。

具体例

  • 譲渡所得: 2,500万円
  • 相続人: 2人
  • 控除額: 3,000万円(全額控除)

計算:

課税譲渡所得 = 2,500万円 - 3,000万円 = 0円(マイナスは切り捨て)
税額 = 0円

この特例により、2,500万円の譲渡所得に対する税額約508万円(2,500万円 × 20.315%)がゼロになります。

3-3. 特例の併用可否

取得費加算の特例と空き家特例は併用不可

残念ながら、取得費加算の特例と空き家3,000万円特別控除は併用できません。どちらか一方を選択する必要があります。

どちらを選ぶべきか

税額シミュレーションで比較して、節税効果が大きい方を選びます。

一般的な目安:

  • 譲渡所得が3,000万円以下 → 空き家特例が有利(税額がゼロになる)
  • 譲渡所得が3,000万円を大きく超える → 取得費加算の特例が有利なケースも

ただし、個別の状況により異なるため、専門家に相談して計算することを推奨します。

3-4. マイホーム特例(相続人が居住していた場合)

相続人が相続した不動産に居住していた場合、「居住用財産の3,000万円特別控除」が適用できる可能性があります。

適用条件

  • 自分の居住用家屋を売却すること
  • 売却した年の前年および前々年にこの特例を受けていないこと
  • 売却価格が1億円以下であること

この特例は空き家特例とは別の制度で、相続人が実際に居住していた場合に適用されます。

4. 確定申告の手続きと必要書類

4-1. 確定申告の流れ(ステップバイステップ)

ステップ1: 必要書類の準備(11月〜12月)

売却した年の11月頃から、必要書類の収集を開始します。耐震基準適合証明書など時間がかかるものもあるため、早めに準備しましょう。

ステップ2: 譲渡所得の計算(1月)

売却価格、取得費、譲渡費用を整理し、譲渡所得を計算します。特例の適用可否も確認します。

ステップ3: 確定申告書の作成(2月)

確定申告書B、第三表(分離課税用)、譲渡所得の内訳書を作成します。e-Taxまたは手書きで作成します。

ステップ4: 申告書の提出(3月15日まで)

e-Tax、郵送、または税務署への持参で提出します。

ステップ5: 納税(3月15日まで)

税額が発生する場合、3月15日までに納付します。振替納税を利用すると、約1ヶ月後の引き落としになります。

4-2. 必要書類チェックリスト

基本書類

  • 確定申告書B(第一表、第二表)
  • 確定申告書第三表(分離課税用)
  • 譲渡所得の内訳書

取引関係書類

  • 売買契約書(売却時)のコピー
  • 売買契約書(購入時)のコピー ※取得費の証明
  • 仲介手数料の領収書
  • 登記事項証明書(全部事項証明書)
  • 譲渡費用の領収書(測量費用、解体費用など)

相続関係書類

  • 相続税の申告書のコピー(取得費加算の特例適用時)
  • 相続税の納付書(領収書)
  • 遺産分割協議書のコピー

特例適用時の追加書類

  • 市区町村の確認書(空き家特例)
  • 耐震基準適合証明書(空き家特例、建物を残す場合)
  • 相続開始日の証明(戸籍謄本など)

書類取得の所要時間

  • 登記事項証明書: 即日〜3日
  • 市区町村の確認書: 2〜4週間
  • 耐震基準適合証明書: 1〜2週間(建築士への依頼)

4-3. 確定申告書の記入方法

確定申告書Bの記入例

確定申告書Bには、通常の所得(給与所得など)と分離課税の譲渡所得を記載します。

  • 第一表: 総所得金額、税額を記載
  • 第二表: 所得の内訳を記載
  • 第三表(分離課税用): 譲渡所得の詳細を記載

譲渡所得の内訳書の記入例

譲渡所得の内訳書には、以下の項目を記載します:

  • 不動産の所在地
  • 売却価格
  • 取得費の内訳
  • 譲渡費用の内訳
  • 特例の適用有無

よくある記入ミス

  • 取得費に相続税評価額を記載してしまう(被相続人の購入価格を記載)
  • 所有期間の起算日を相続日にしてしまう(被相続人の取得日から起算)
  • 特例適用のチェックを忘れる

4-4. 申告方法(3つの選択肢)

e-Tax(電子申告)

  • メリット: 自宅から申告可能、還付が早い(2〜3週間)
  • デメリット: マイナンバーカードまたはID・パスワード方式の準備が必要
  • 推奨度: 高(最も便利)

郵送

  • メリット: 時間に余裕を持って作成できる
  • デメリット: 提出の記録が残りにくい(簡易書留を推奨)
  • 推奨度: 中

税務署への持参

  • メリット: その場で不備をチェックしてもらえる
  • デメリット: 2月〜3月は混雑する
  • 推奨度: 中

5. 期限管理カレンダー【複数の期限を一覧化】

5-1. 相続開始からの全期限

期限 内容 備考
相続開始から3ヶ月以内 相続放棄の期限 家庭裁判所に申述
相続開始から10ヶ月以内 相続税の申告・納付期限 被相続人の住所地の税務署
相続開始から約3年3ヶ月以内 取得費加算の特例の適用期限 相続税申告期限の翌日から3年以内に売却
相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで 空き家特例の適用期限 例: 2023年6月相続 → 2026年12月31日まで
売却した翌年3月15日 確定申告・納税期限 居住地の税務署

5-2. 確定申告準備のタイムライン(11月〜3月)

時期 やるべきこと
11月〜12月 ・必要書類の収集開始
・取得費の証明準備(契約書の捜索)
・市区町村の確認書申請(空き家特例)
・耐震基準適合証明書の取得
1月 ・税額の計算
・特例の適用可否判断
・税理士相談(必要に応じて)
2月 ・確定申告書の作成
・書類の最終確認
・e-Taxの準備
3月1日〜15日 ・申告書の提出
・納税

6. よくある失敗事例と対策

6-1. 期限切れで特例が使えなかった

事例

相続開始から4年後に不動産を売却したため、取得費加算の特例(約3年3ヶ月以内)の期限を過ぎてしまい、数百万円の節税機会を逃した。

対策

  • 相続開始日と売却予定日を確認し、早めに売却計画を立てる
  • 特例の期限をカレンダーに記録し、期限の3ヶ月前にアラート設定
  • 売却を急ぐ必要はないが、期限を意識して計画的に進める

6-2. 必要書類が揃わず申告延期

事例

耐震基準適合証明書の取得に時間がかかり、3月15日の期限に間に合わず、無申告加算税が発生した。

対策

  • 11月から準備を開始(市区町村の確認書: 2〜4週間、耐震基準適合証明書: 1〜2週間)
  • 建築士に早めに依頼(2月〜3月は混雑する)
  • 必要書類チェックリストで進捗を管理

6-3. 取得費の証明ができず高額な税金

事例

購入時の契約書がなく、概算取得費(5%)で計算したため、税額が約500万円増加した。

対策

  • 親族に契約書の保管場所を確認(実家の金庫、書斎など)
  • 不動産会社に問い合わせ(当時の契約書のコピーが残っている可能性)
  • 登記簿謄本の抵当権設定額から推定
  • 不動産鑑定士に相談し、鑑定評価書を取得(節税額が費用を上回る場合は有効)

不動産鑑定士の視点:取得費の証明

購入時の契約書がない場合でも、以下の方法で取得費を推定できます:

  • 公示価格の推移: 国土交通省の地価公示データから、購入当時の価格を推定
  • 路線価の推移: 相続税路線価の過去データから購入価格を逆算
  • 不動産価格指数: 国土交通省の不動産価格指数を用いた補正

例えば、1985年に購入した土地の路線価が10万円/㎡、現在の路線価が30万円/㎡の場合、価格は3倍に上昇したと推定できます。現在の売却価格から逆算して、当時の購入価格を推定します。

注意: この推定方法は合理的な根拠があれば税務署に認められる可能性がありますが、必ず認められるとは限りません。不動産の取得価格については不動産鑑定士へのご相談を強く推奨します。

6-4. 特例の適用漏れ

事例

空き家特例を知らずに確定申告し、約500万円の税金を支払った。後で特例を知ったが、修正申告では適用できなかった。

対策

  • 事前に専門家(税理士)に相談
  • 特例の適用条件を事前に確認
  • 複数の特例を比較し、最も有利なものを選択

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 相続税と譲渡所得税の二重課税では?

A: 相続税と譲渡所得税は別々の税金です。相続税は「財産を取得したこと」に対する税金、譲渡所得税は「売却して利益を得たこと」に対する税金です。二重課税ではありませんが、取得費加算の特例により一部調整されます。

Q2. 相続税申告前に売却すべき?後に売却すべき?

A: 取得費加算の特例を使う場合、相続税申告後(相続開始から約3年3ヶ月以内)に売却するのが一般的です。ただし、相続税の納税資金が必要な場合は、申告前に売却することもあります。専門家に相談して判断してください。

Q3. 自分で確定申告できる?専門家に頼むべき?

A: 売却益が少額(数百万円以下)で特例を使わない場合は自分で申告可能です。ただし、以下の場合は専門家への相談を推奨します:

  • 売却益が1,000万円以上
  • 取得費加算の特例や空き家特例を使う
  • 複数の不動産を売却
  • 共有名義の不動産
  • 取得費の証明書類がない

専門家費用の相場: 5〜15万円(譲渡所得の確定申告)

Q4. 損失が出た場合でも確定申告は必要?

A: 法律上は不要ですが、以下の理由から申告を推奨します:

  • 特例適用の記録を残す
  • 将来の税務調査に備える
  • 同一年内に複数の不動産を売却した場合、損益通算できる

Q5. 共有名義の不動産を売却した場合、各相続人が個別に申告?

A: はい、各相続人が持分に応じた譲渡所得を個別に申告します。売却価格や取得費も持分に応じて按分します。

例: 売却価格5,000万円、持分1/2の場合、各相続人の売却価格は2,500万円として計算します。

Q6. 取得費加算の特例と空き家特例、どちらを選ぶべき?

A: 税額シミュレーションで比較して、節税効果が大きい方を選びます。一般的な目安:

  • 譲渡所得が3,000万円以下 → 空き家特例が有利(税額がゼロになる可能性)
  • 譲渡所得が3,000万円を大きく超える → 取得費加算の特例が有利なケースも

ただし、個別の状況により異なるため、専門家に相談して計算することを推奨します。

Q7. 申告しなかったらバレる?

A: 高い確率でバレます。法務局での登記情報と税務署のデータは連携されており、不動産売却は把握されます。無申告が発覚すると、無申告加算税(15〜20%)と延滞税がかかり、本来の税額より大幅に増えます。必ず期限内に申告してください。

Q8. リフォーム費用は取得費に含まれる?

A: 増改築費用(建物の価値を高める工事)は取得費に含まれます。ただし、通常の修繕費(原状回復)は含まれません。

  • 取得費に含まれる: 増築、改築、建物の構造変更、耐震補強工事
  • 取得費に含まれない: 壁紙の張替え、畳の表替え、小規模な修繕

領収書が残っている場合は、専門家に確認して適用可否を判断してください。

Q9. 売却前に相続登記は必須?

A: はい、相続登記(名義変更)をしないと売却できません。2024年4月から相続登記が義務化されており、相続開始から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科されます。早めに手続きを進めてください。

詳細は「相続登記義務化の実務対応」をご覧ください。

Q10. 確定申告の期限を過ぎたらどうなる?

A: 無申告加算税(本税の15〜20%)と延滞税がかかります。ただし、期限後でも自主的に申告すれば加算税が軽減されます(5%)。気づいた時点で速やかに申告してください。

8. 専門家に相談すべきケース

以下に該当する場合は、専門家(税理士)への相談を強く推奨します:

  • 売却益が1,000万円以上
  • 取得費加算の特例を適用する
  • 空き家特例を適用する
  • 取得費の証明書類がない(概算取得費5%で計算が必要)
  • 共有名義の不動産を売却
  • 複数の不動産を同時に売却
  • 確定申告が初めてで不安
  • 期限が迫っている

専門家費用の相場

  • 相続税申告: 10〜30万円
  • 確定申告(譲渡所得): 5〜15万円

専門家の選び方

  • 相続税、不動産に強い専門家を選ぶ
  • 報酬体系が明確
  • 初回相談無料
  • 実績が豊富

9. まとめ

相続した不動産を売却した場合、譲渡所得税の確定申告が必要です。2025年改正版の最新情報をもとに、以下のポイントを押さえてください:

重要ポイント

  1. 確定申告期限は売却した翌年の3月15日
  2. 税額は「売却価格 - 取得費 - 譲渡費用」に税率(長期20.315%、短期39.63%)をかけて計算
  3. 取得費は被相続人の購入価格(相続税評価額ではない)
  4. 取得費加算の特例(相続開始から約3年3ヶ月以内)で大幅節税可能
  5. 空き家特例(最高3,000万円控除)は2024年改正で相続人3人以上は2,000万円に縮小
  6. 必要書類は11月から準備開始(市区町村の確認書など時間がかかるものあり)
  7. 不明点があれば専門家に相談(費用相場: 5〜15万円)

次のアクション

  • 売却価格、取得費、譲渡費用を整理
  • 特例の適用可否を確認
  • 必要書類チェックリストで準備状況を確認
  • 税額シミュレーションを実施
  • 必要に応じて専門家に相談

免責事項

この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスではありません。税制は頻繁に改正されるため、実際の申告にあたっては、必ず税理士または税務署にご相談ください。

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北原 崇寛

北原 崇寛

不動産鑑定士・宅地建物取引士

大手不動産鑑定会社で裁判鑑定・証券化案件・担保評価等を担当後、東証一部上場不動産会社にて不動産訴訟アドバイザリー、法律・税制面からの不動産有効活用コンサルティングに従事。2020年北原不動産鑑定士事務所開業。