税務対策

相続税はいくら払う?基礎控除を超えた場合の税額をケース別に試算

相続税はいくら払う?基礎控除を超えた場合の税額をケース別に試算
公開: 2026-01-15

「相続税がかかることは分かったけど、実際にいくら払うの?」

基礎控除を超えたことが分かっても、具体的な税額が分からないと不安ですよね。相続財産が5,000万円なのか、1億円なのかで、納める税金は大きく変わります。

この記事では、相続税の計算方法を分かりやすく解説し、5,000万円から2億円までの4つのケースで具体的な税額をシミュレーションします。配偶者控除や小規模宅地等の特例を使った場合の効果も、数字で確認できます。

「うちの場合はどのくらい?」という疑問を解消し、必要な節税対策を考えるきっかけにしてください。

基礎控除を超えたらどうなる?相続税の仕組み

基礎控除の復習

相続税には「基礎控除」という非課税枠があります。相続財産がこの金額を超えなければ、相続税はかかりません。

基礎控除の計算式は以下のとおりです。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例えば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 3人)です。

基礎控除について詳しくは「相続税はいくらから課税される?基礎控除・申告期限・必要書類を徹底解説」をご覧ください。

課税遺産総額の計算

相続税は、基礎控除を超えた部分に対してかかります。この超過分を「課税遺産総額」といいます。

課税遺産総額 = 相続財産の総額 - 基礎控除額

例えば、相続財産が8,000万円で基礎控除が4,800万円なら、課税遺産総額は3,200万円です。

ただし、この3,200万円にそのまま税率をかけるわけではありません。相続税には独特の計算方法があります。

相続税の税率と速算表

相続税は「法定相続分で按分した金額」に税率をかけて計算します。

まず、課税遺産総額を法定相続分で分け、それぞれに税率をかけて合計します。その後、実際の取得割合に応じて各相続人に振り分けます。

法定相続分に応じた取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

速算表を使えば、「取得金額 × 税率 - 控除額」で簡単に計算できます。

ケース別相続税額シミュレーション

具体的な事例で、相続税額を計算してみましょう。

ケース1:5,000万円の相続(子2人)

前提条件

項目 内容
相続財産 5,000万円(預貯金3,000万円、不動産2,000万円)
相続人 子2人(配偶者なし)
基礎控除 4,200万円(3,000万円 + 600万円 × 2人)

計算手順

Step 1:課税遺産総額を計算

5,000万円 - 4,200万円 = 800万円

Step 2:法定相続分で按分

子2人なので、1人あたり400万円(800万円 ÷ 2)

Step 3:税額を計算

400万円 × 10% = 40万円(1人あたり)

相続税の総額 = 40万円 × 2人 = 80万円

Step 4:実際の取得割合で按分

2人で均等に分ける場合、1人あたり40万円の相続税を納めます。

結果

相続人 取得財産 相続税額
長男 2,500万円 40万円
次男 2,500万円 40万円
合計 5,000万円 80万円

ケース2:8,000万円の相続(配偶者+子1人)

前提条件

項目 内容
相続財産 8,000万円(預貯金2,000万円、自宅5,000万円、有価証券1,000万円)
相続人 配偶者、子1人
基礎控除 4,200万円(3,000万円 + 600万円 × 2人)

計算手順

Step 1:課税遺産総額を計算

8,000万円 - 4,200万円 = 3,800万円

Step 2:法定相続分で按分

  • 配偶者:3,800万円 × 1/2 = 1,900万円
  • 子:3,800万円 × 1/2 = 1,900万円

Step 3:税額を計算

  • 配偶者:1,900万円 × 15% - 50万円 = 235万円
  • 子:1,900万円 × 15% - 50万円 = 235万円

相続税の総額 = 235万円 + 235万円 = 470万円

Step 4:配偶者の税額軽減を適用

配偶者には「配偶者の税額軽減」という制度があります。配偶者が取得した財産が「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは、相続税がかかりません。

配偶者が法定相続分(4,000万円)を取得する場合、配偶者の相続税はゼロになります。

結果(配偶者の税額軽減適用後)

相続人 取得財産 相続税額
配偶者 4,000万円 0円
4,000万円 235万円
合計 8,000万円 235万円

配偶者の税額軽減により、配偶者の負担分235万円がゼロになりました。子の税額(235万円)は変わりません。この制度を使わない場合の相続税総額470万円と比べると、235万円の節税効果があります。

ケース3:1億円の相続(配偶者+子2人)

前提条件

項目 内容
相続財産 1億円(預貯金3,000万円、自宅6,000万円、有価証券1,000万円)
相続人 配偶者、子2人
基礎控除 4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 3人)

計算手順

Step 1:課税遺産総額を計算

1億円 - 4,800万円 = 5,200万円

Step 2:法定相続分で按分

  • 配偶者:5,200万円 × 1/2 = 2,600万円
  • 子(各):5,200万円 × 1/4 = 1,300万円

Step 3:税額を計算

  • 配偶者:2,600万円 × 15% - 50万円 = 340万円
  • 子(各):1,300万円 × 15% - 50万円 = 145万円

相続税の総額 = 340万円 + 145万円 × 2 = 630万円

Step 4:配偶者の税額軽減を適用

配偶者が法定相続分(5,000万円)を取得する場合、配偶者の相続税はゼロになります。

結果(配偶者の税額軽減適用後)

相続人 取得財産 相続税額
配偶者 5,000万円 0円
長男 2,500万円 157.5万円
次男 2,500万円 157.5万円
合計 1億円 315万円

配偶者の税額軽減により、相続税総額630万円のうち配偶者の負担分315万円がゼロになります。子2人の税額(各157.5万円)は変わりません。

小規模宅地等の特例を適用した場合

自宅(6,000万円)に小規模宅地等の特例(居住用80%減額)を適用できる場合、評価額は以下のように変わります。

自宅の評価:6,000万円 × 20% = 1,200万円

相続財産の総額:3,000万円 + 1,200万円 + 1,000万円 = 5,200万円

課税遺産総額:5,200万円 - 4,800万円 = 400万円

この場合、相続税の総額は約20万円まで下がります。

小規模宅地等の特例について詳しくは「小規模宅地等の特例を最大限活用する方法」をご覧ください。

ケース4:2億円の相続(配偶者+子2人、不動産中心)

前提条件

項目 内容
相続財産 2億円(預貯金2,000万円、自宅8,000万円、賃貸アパート1億円)
相続人 配偶者、子2人
基礎控除 4,800万円

計算手順

Step 1:課税遺産総額を計算

2億円 - 4,800万円 = 1億5,200万円

Step 2:法定相続分で按分

  • 配偶者:1億5,200万円 × 1/2 = 7,600万円
  • 子(各):1億5,200万円 × 1/4 = 3,800万円

Step 3:税額を計算

  • 配偶者:7,600万円 × 30% - 700万円 = 1,580万円
  • 子(各):3,800万円 × 20% - 200万円 = 560万円

相続税の総額 = 1,580万円 + 560万円 × 2 = 2,700万円

Step 4:配偶者の税額軽減を適用

配偶者が1億円を取得する場合、配偶者の相続税はゼロになります。

結果(配偶者の税額軽減のみ)

相続人 取得財産 相続税額
配偶者 1億円 0円
長男 5,000万円 675万円
次男 5,000万円 675万円
合計 2億円 1,350万円

配偶者の税額軽減により、相続税総額2,700万円のうち配偶者の負担分1,350万円がゼロになります。子2人の税額(各675万円)は変わりません。

小規模宅地等の特例を最大限活用した場合

対象 特例 減額率 減額後評価
自宅(8,000万円) 特定居住用 80% 1,600万円
賃貸アパート(1億円) 貸付事業用 50% 5,000万円

相続財産の総額:2,000万円 + 1,600万円 + 5,000万円 = 8,600万円

課税遺産総額:8,600万円 - 4,800万円 = 3,800万円

この場合、相続税の総額は約470万円まで下がります。

特例適用による節税効果:2,700万円 - 470万円 = 約2,230万円

税額を大きく減らす7つの方法

相続税には、さまざまな控除や特例があります。上手に活用すれば、税額を大幅に減らせます。

配偶者の税額軽減

配偶者が取得した財産のうち、以下のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

つまり、最低でも1億6,000万円までは配偶者に相続税がかからないのです。

ただし、配偶者に財産を集中させると、二次相続(配偶者が亡くなったとき)で子どもの税負担が重くなる可能性があります。一次相続と二次相続を合わせた税額を考慮して、遺産分割を検討しましょう。

小規模宅地等の特例

一定の要件を満たす土地については、評価額を最大80%減額できます。

用途 限度面積 減額割合
特定居住用(自宅) 330平米 80%
特定事業用(店舗・工場) 400平米 80%
貸付事業用(アパート・駐車場) 200平米 50%

この特例は相続税対策の中でも効果が大きいため、適用要件を確認しておくことが重要です。

生命保険の非課税枠

死亡保険金には、相続人1人あたり500万円の非課税枠があります。

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

配偶者と子2人なら、1,500万円までは非課税です。

生命保険は受取人を指定できるため、遺産分割協議を経ずに確実に財産を渡せるメリットもあります。

死亡退職金の非課税枠

被相続人が受け取るはずだった退職金にも、非課税枠があります。

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

生命保険と同じ計算式ですが、別枠で適用されます。

障害者控除

相続人が障害者の場合、85歳になるまでの年数に応じて税額が控除されます。

  • 一般障害者:10万円 ×(85歳 - 相続時の年齢)
  • 特別障害者:20万円 ×(85歳 - 相続時の年齢)

例えば、45歳の特別障害者なら、20万円 × 40年 = 800万円の控除を受けられます。

未成年者控除

相続人が未成年(18歳未満)の場合、18歳になるまでの年数に応じて控除を受けられます。

控除額 = 10万円 ×(18歳 - 相続時の年齢)

例えば、10歳の相続人なら、10万円 × 8年 = 80万円の控除です。

相次相続控除

10年以内に続けて相続が発生した場合、前の相続で支払った税額の一部を控除できます。

例えば、父が亡くなって相続税を払い、5年後に母が亡くなった場合、父の相続時に払った税額の50%程度を控除できます。

不動産評価による節税ポイント

相続財産のうち、不動産は「相続税評価額」で計算されます。この評価額が適正でない場合、余計な税金を払うことになりかねません。

路線価と実勢価格の違い

土地の相続税評価額は、原則として「路線価」で計算します。路線価は公示価格の約80%に設定されているため、市場価格より低くなることが多いです。

ただし、以下のような土地は路線価評価が不利になる場合があります。

  • 形状が不整形な土地
  • 間口が狭い土地
  • 高低差がある土地
  • 騒音・悪臭などの環境が悪い土地
  • 法令上の制限がある土地

評価減が認められるケース

路線価評価では考慮されない個別事情がある場合、不動産鑑定評価を活用することで適正な評価額を算定できます。

事例 評価減の理由
崖地を含む土地 利用可能面積が限られる
袋地(接道なし) 建築確認が下りにくい
土壌汚染がある土地 浄化費用が発生する
借地権付き建物 土地所有権より価値が低い

鑑定評価を検討すべき場面

以下のケースでは、不動産鑑定士による評価を検討する価値があります。

  • 土地の評価額が1億円を超える
  • 形状や立地に特殊な事情がある
  • 路線価評価に疑問がある
  • 相続税申告の減額余地を確認したい

鑑定費用は数十万円かかりますが、評価額が下がれば数百万円以上の節税につながることもあります。費用対効果を考慮して判断しましょう。

専門家に相談すべき5つのケース

相続税の申告は自分で行うこともできますが、以下のケースでは専門家への相談をおすすめします。

相続財産が1億円を超える

財産額が大きいほど、節税の余地も大きくなります。税理士に依頼すれば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を最大限活用した遺産分割案を提案してもらえます。

また、二次相続まで見据えた対策も重要です。目先の税額だけでなく、長期的な視点でアドバイスを受けられます。

不動産が財産の大半を占める

不動産の評価は複雑で、評価方法によって税額が大きく変わります。

路線価評価が適正かどうか、小規模宅地等の特例を適用できるかどうかなど、専門的な判断が必要です。特に、貸付用不動産がある場合は評価減の余地が大きいため、相談する価値があります。

相続人間で意見が分かれている

遺産分割がまとまらないと、相続税の特例を使えなくなることがあります。

例えば、小規模宅地等の特例は「申告期限までに遺産分割が完了していること」が要件です。争いが長引くと、特例を適用できず税額が増えてしまいます。

弁護士や税理士に間に入ってもらい、早期解決を目指しましょう。

申告期限まで3ヶ月を切っている

相続税の申告期限は、相続開始から10ヶ月です。期限が迫っている場合、自分で対応するのは困難です。

税理士に依頼すれば、短期間でも必要書類の収集から申告書作成まで対応してもらえます。延滞税や加算税を避けるためにも、早めに相談しましょう。

過去の贈与がある

生前贈与を受けていた場合、相続財産に加算されることがあります。

  • 相続開始前7年以内の贈与(2024年以降の相続)
  • 相続時精算課税制度を利用した贈与

贈与の記録を確認し、正確に申告する必要があります。

生前贈与と相続税の関係について詳しくは「年内贈与で相続税を減らす方法」をご覧ください。

まとめ:相続税額の目安と次のステップ

この記事では、相続税の計算方法と4つのケースでのシミュレーションを紹介しました。

ケース別税額の目安

ケース 相続財産 相続人 相続税総額 実際の納税額
ケース1 5,000万円 子2人 80万円 80万円
ケース2 8,000万円 配偶者+子1人 470万円 235万円
ケース3 1億円 配偶者+子2人 630万円 315万円
ケース4 2億円 配偶者+子2人 2,700万円 1,350万円

「実際の納税額」は配偶者の税額軽減を適用した後の金額です。配偶者の負担分がゼロになるため、相続税総額より大幅に少なくなります。小規模宅地等の特例を使えば、さらに節税が可能です。

次にやるべきこと

相続税額の目安が分かったら、以下のステップで準備を進めましょう。

  1. 相続財産の全体像を把握する 預貯金、不動産、有価証券など、財産の一覧を作成します。

  2. 適用できる控除・特例を確認する 配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例など、使える制度をリストアップします。

  3. 遺産分割の方針を決める 誰が何を取得するか、家族で話し合います。

  4. 必要に応じて専門家に相談する 財産が1億円を超える場合や、不動産が多い場合は、税理士や不動産鑑定士への相談を検討しましょう。

相続税は高額になることがありますが、正しい知識と準備があれば、適正な税額で申告できます。この記事が、あなたの相続税対策の参考になれば幸いです。

よくある質問

Q. 相続税の申告期限はいつですか?

相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。例えば、1月15日に亡くなった場合、11月15日が申告期限となります。期限を過ぎると延滞税や加算税がかかるため、早めに準備を始めましょう。

Q. 配偶者がすべての財産を相続すれば、相続税はかからない?

配偶者が取得した財産が1億6,000万円以下なら、配偶者の相続税はゼロになります。ただし、配偶者が亡くなったときの二次相続で、子どもの税負担が重くなる可能性があります。一次相続と二次相続を合わせた税額を考慮して、遺産分割を決めることが重要です。

Q. 相続税の計算で、不動産はどのように評価しますか?

土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」で評価します。路線価は毎年7月に国税庁が公表する価格で、公示価格の約80%です。形状や立地によっては評価減の余地があるため、適正評価を検討する価値があります。

Q. 相続税がかかる人の割合はどのくらいですか?

相続税の課税対象となるのは、亡くなった方のうち約9〜10%です。2015年の基礎控除引き下げ以降、課税対象者は増加傾向にあります。特に都市部では、自宅の評価額だけで基礎控除を超えるケースも珍しくありません。

Q. 相続税の申告は自分でできますか?

法律上、相続税の申告は自分で行うことができます。ただし、不動産の評価や特例の適用など、専門知識が必要な部分も多いです。財産が1億円を超える場合や、不動産が多い場合は、税理士への依頼を検討することをおすすめします。

北原 崇寛

北原 崇寛

不動産鑑定士・宅地建物取引士

大手不動産鑑定会社で裁判鑑定・証券化案件・担保評価等を担当後、東証一部上場不動産会社にて不動産訴訟アドバイザリー、法律・税制面からの不動産有効活用コンサルティングに従事。2020年北原不動産鑑定士事務所開業。