地積規模の大きな宅地の評価とは?適用要件と計算方法を解説

「親から相続した土地が500平米以上あり、相続税が高額になりそうで心配…」
そんな方に朗報です。500平米以上(三大都市圏以外は1,000平米以上)の広い土地を相続する場合、「地積規模の大きな宅地の評価」を適用することで、相続税評価額を約20〜40%減額できる可能性があります。
この記事では、地積規模の大きな宅地の評価について、6つの適用要件、規模格差補正率の計算方法、マンション敷地への適用可否、旧広大地評価との違いまで、不動産鑑定士の視点で詳しく解説します。
地積規模の大きな宅地の評価とは
制度の概要と目的
「地積規模の大きな宅地の評価」は、2018年1月1日以降の相続・贈与から適用された制度で、旧「広大地評価」に代わるものです。
大規模な宅地は、戸建分譲を前提とすると、開発道路や公園などの「潰れ地」が生じるため、単価が低くなる傾向があります。この実態を相続税評価に反映させるのが、この制度の目的です。
主な特徴
- 2018年1月1日以降の相続・贈与から適用
- 旧「広大地評価」の後継制度
- 形式基準化により、適用の可否が明確になった
- 適用により相続税評価額を約20〜40%減額可能
適用対象となる宅地の面積要件
地積規模の大きな宅地の評価を適用するには、以下の面積要件を満たす必要があります。
| 地域 | 面積要件 |
|---|---|
| 三大都市圏 | 500平米以上 |
| 三大都市圏以外 | 1,000平米以上 |
面積は登記簿面積ではなく、原則として実測面積で判定します。登記簿面積と実測面積に大きな差がある場合は、測量を検討しましょう。
6つの適用要件を徹底解説
地積規模の大きな宅地の評価を適用するには、6つの要件をすべて満たす必要があります。
要件1:面積要件(500平米または1,000平米以上)
最も基本的な要件が面積です。三大都市圏では500平米以上、それ以外の地域では1,000平米以上の宅地が対象となります。
共有の場合の判定
共有名義の土地の場合、持分ではなく土地全体の面積で判定します。例えば、600平米の土地を兄弟2人で1/2ずつ共有している場合、各人の持分面積は300平米ですが、土地全体が600平米なので面積要件を満たします。
要件2:三大都市圏の判定方法
三大都市圏とは、以下の法律で定められた区域です。
- 首都圏: 首都圏整備法に規定する既成市街地または近郊整備地帯
- 近畿圏: 近畿圏整備法に規定する既成都市区域または近郊整備区域
- 中部圏: 中部圏開発整備法に規定する都市整備区域
三大都市圏に該当する主な都府県・市区町村
| 圏域 | 主な該当地域 |
|---|---|
| 首都圏 | 東京都(特別区・武蔵野市・三鷹市など)、埼玉県(さいたま市・川口市など)、千葉県(千葉市・船橋市など)、神奈川県(横浜市・川崎市など) |
| 近畿圏 | 大阪府(大阪市・堺市など)、京都府(京都市など)、兵庫県(神戸市・尼崎市など)、奈良県(奈良市など) |
| 中部圏 | 愛知県(名古屋市・豊田市など) |
確認方法
市町村合併により判定が複雑化しているため、確実な方法は以下のとおりです。
- 市区町村の都市計画課に問い合わせ
- 国土交通省のウェブサイトで確認(三大都市圏に該当する市町村一覧)
- 税理士・不動産鑑定士に相談
要件3:普通商業・併用住宅地区または普通住宅地区
路線価図で確認できる地区区分が「普通商業・併用住宅地区」または「普通住宅地区」である必要があります。
以下の地区区分は適用対象外です。
- ビル街地区
- 高度商業地区
- 繁華街地区
- 大工場地区
- 中小工場地区
地区区分の確認方法
国税庁の路線価図で確認できます。路線価の数字の横に記載されている記号(普通住宅、普通商業など)が地区区分です。
要件4:容積率400%(東京23区は300%)未満
土地の指定容積率が以下の基準未満である必要があります。
| 地域 | 容積率の上限 |
|---|---|
| 東京都特別区 | 300%未満 |
| それ以外の地域 | 400%未満 |
容積率の確認方法
- 市区町村の都市計画課で確認
- 市区町村のウェブサイトで都市計画図を閲覧
- 不動産業者や不動産鑑定士に依頼
容積率は用途地域ごとに定められており、住宅地では100〜300%程度、商業地では400〜800%程度が一般的です。
要件5:市街化調整区域以外
土地が市街化調整区域に所在していないことが要件です。
市街化調整区域とは、都市計画法で「市街化を抑制すべき区域」として定められた地域で、原則として開発行為が制限されています。
確認方法
- 市区町村の都市計画課に問い合わせ
- 都市計画図で確認
要件6:工業専用地域以外
土地の用途地域が「工業専用地域」でないことが要件です。
工業専用地域は、工場専用の地域として定められており、住宅の建築が禁止されています。
用途地域の確認方法
容積率と同様に、市区町村の都市計画課や都市計画図で確認できます。
適用要件チェックリスト
以下のチェックリストで、6つの要件を確認しましょう。
- 面積が500平米以上(三大都市圏)または1,000平米以上(その他)
- 三大都市圏の判定を確認済み
- 地区区分が「普通商業・併用住宅地区」または「普通住宅地区」
- 容積率が400%未満(東京23区は300%未満)
- 市街化調整区域ではない
- 工業専用地域ではない
規模格差補正率の計算方法
計算式の解説
地積規模の大きな宅地の評価額は、以下の計算式で求めます。
評価額 = 路線価 × 地積 × 規模格差補正率 × その他の補正率
規模格差補正率の計算式
規模格差補正率 = (A × B + C) ÷ 地積 × 0.8
A、B、Cは地域と地区区分によって決まる定数です。
三大都市圏・普通商業・併用住宅地区または普通住宅地区の場合
| 地積 | B | C |
|---|---|---|
| 500㎡以上1,000㎡未満 | 0.95 | 25 |
| 1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.90 | 75 |
| 3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 225 |
| 5,000㎡以上 | 0.80 | 475 |
三大都市圏以外・普通商業・併用住宅地区または普通住宅地区の場合
| 地積 | B | C |
|---|---|---|
| 1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.90 | 100 |
| 3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 250 |
| 5,000㎡以上 | 0.80 | 500 |
計算例1:三大都市圏の600平米の土地
前提条件
- 所在地:東京都郊外(三大都市圏)
- 地積:600平米
- 路線価:30万円/平米
- 地区区分:普通住宅地区
規模格差補正率の計算
600㎡は「500㎡以上1,000㎡未満」の区分なので、B=0.95、C=25を使用します。
規模格差補正率 = (0.95 × 600 + 25) ÷ 600 × 0.8
= (570 + 25) ÷ 600 × 0.8
= 595 ÷ 600 × 0.8
= 0.9917 × 0.8
= 0.7933
小数点以下第2位未満を切り捨てて、補正率0.79となります。
評価額の計算
- 適用前:30万円 × 600平米 = 1億8,000万円
- 適用後:30万円 × 600平米 × 0.79 = 1億4,220万円
- 評価減額:3,780万円(21%減)
計算例2:三大都市圏以外の1,500平米の土地
前提条件
- 所在地:地方都市(三大都市圏以外)
- 地積:1,500平米
- 路線価:10万円/平米
- 地区区分:普通住宅地区
規模格差補正率の計算
1,500㎡は「1,000㎡以上3,000㎡未満」の区分なので、B=0.90、C=100を使用します。
規模格差補正率 = (0.90 × 1,500 + 100) ÷ 1,500 × 0.8
= (1,350 + 100) ÷ 1,500 × 0.8
= 1,450 ÷ 1,500 × 0.8
= 0.9667 × 0.8
= 0.7733
小数点以下第2位未満を切り捨てて、補正率0.77となります。
評価額の計算
- 適用前:10万円 × 1,500平米 = 1億5,000万円
- 適用後:10万円 × 1,500平米 × 0.77 = 1億1,550万円
- 評価減額:3,450万円(23%減)
他の補正率との併用
地積規模の大きな宅地の評価は、他の補正率と併用可能です。
併用できる補正率
- 奥行価格補正率
- 不整形地補正率
- 間口狭小補正率
- 奥行長大補正率
計算順序
評価額 = 路線価 × 地積 × 奥行価格補正率 × 不整形地補正率 × 規模格差補正率
不整形地補正率との併用については、「不整形地の相続税評価とは?補正率の計算方法を図解で解説」もご覧ください。
マンション敷地への適用
旧広大地評価との違い
旧広大地評価では、「マンション適地」と判定された土地は適用対象外でした。これは、マンションとして利用する場合、戸建分譲のような潰れ地が生じないためです。
しかし、新しい「地積規模の大きな宅地の評価」は形式基準のため、6つの要件を満たせばマンション敷地にも適用可能です。
適用できるマンションの条件
マンション敷地に地積規模の大きな宅地の評価を適用するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 敷地全体の面積が500平米以上(三大都市圏)
- 容積率が400%未満(東京23区は300%未満)
- その他の4要件を満たす
特に容積率要件が重要です。中低層マンション(3〜5階建て程度)の敷地は、容積率200〜300%程度のことが多く、要件を満たしやすいです。
タワーマンションは適用できない理由
タワーマンション(高層マンション)は、以下の理由から適用が難しいケースが多いです。
- 容積率要件を満たさない:タワーマンションは容積率400〜800%程度の商業地に建つことが多い
- 地区区分が該当しない:高度商業地区や繁華街地区に所在することが多い
ただし、郊外のタワーマンションで容積率300%未満の場合は、適用できる可能性があります。
マンション相続の基本については「マンションの相続税評価額の計算方法」もご覧ください。
旧広大地評価との比較
制度変更のポイント(2018年改正)
2018年1月1日に、旧広大地評価から地積規模の大きな宅地の評価に改正されました。
| 項目 | 旧広大地評価 | 地積規模の大きな宅地 |
|---|---|---|
| 判定基準 | 実質基準(マンション適地かどうかなど) | 形式基準(6要件) |
| 最大減額率 | 約65% | 約40% |
| マンション適地 | 適用不可 | 適用可能 |
| 判定の明確さ | 不明確(税務調査で争いになることも) | 明確 |
有利・不利の比較
新制度が有利になるケース
- マンション敷地(旧制度では適用不可だった)
- 形状が整形に近い土地(旧制度では減額率が低かった)
- 判定リスクを避けたい場合
新制度が不利になるケース
- 極端に不整形な土地(旧制度では最大65%減額できた)
- 開発困難な土地(崖地、高低差のある土地など)
過去の相続税申告の還付請求
2018年以前に相続が発生し、広大地評価を適用せずに申告した場合、更正の請求により還付を受けられる可能性があります。
更正の請求の期限
- 申告期限から5年以内
例えば、2019年3月に申告した場合、2024年3月まで更正の請求が可能です。過去の申告で広大地評価を適用していなかった方は、税理士に相談することをおすすめします。
不動産鑑定評価による更なる減額可能性
路線価評価の限界
路線価による相続税評価は、「標準的な中間画地」を前提としています。しかし、大規模な土地は以下の理由から、路線価では時価を適切に反映できないことがあります。
- 規模が大きいほど単価は低下する傾向がある
- 開発リスク・コストが大きい
- 買い手が限定される(一般個人では購入困難)
鑑定評価が有利になるケース
以下のケースでは、路線価評価よりも不動産鑑定評価の方が低くなる可能性があります。
- 不整形地・高低差のある土地
- 道路条件が悪い土地(旗竿地、袋地など)
- 特殊な減価要因がある土地(土壌汚染、埋蔵文化財など)
- 市場での売却が困難な土地(立地が悪い、規模が大きすぎるなど)
費用対効果の判断基準
不動産鑑定評価書の費用は、土地の規模や複雑さにより30〜50万円程度が目安です。
| 評価額 | 鑑定費用 | 検討の目安 |
|---|---|---|
| 5,000万円未満 | 30万円程度 | 費用対効果が低い |
| 5,000万円〜1億円 | 30〜40万円 | 減価要因があれば検討価値あり |
| 1億円以上 | 40〜50万円 | 積極的に検討すべき |
路線価評価と時価に乖離がある場合は、税理士と不動産鑑定士の連携が重要です。
土地評価の基本については「不動産の相続税評価額:路線価方式と倍率方式の計算方法を徹底解説」もご覧ください。
申告時の注意点と必要書類
必要書類一覧
地積規模の大きな宅地の評価を適用する場合、以下の書類を準備しましょう。
- 土地の登記事項証明書
- 公図、地積測量図
- 路線価図のコピー(地区区分を確認できるもの)
- 都市計画図(用途地域・容積率・市街化区域の確認用)
- 規模格差補正率の計算明細書
- 三大都市圏該当の確認資料
税務調査で指摘されやすいポイント
地積規模の大きな宅地の評価で、税務調査時に指摘されやすいポイントは以下のとおりです。
- 面積要件の確認漏れ:登記簿面積と実測面積の乖離
- 三大都市圏の判定誤り:市町村合併による境界変更
- 容積率の確認漏れ:指定容積率と基準容積率の混同
- 地区区分の誤り:路線価図での確認漏れ
専門家への依頼
地積規模の大きな宅地の評価は、以下のケースで専門家への依頼を検討しましょう。
税理士に依頼すべきケース
- 土地評価に詳しい税理士を選ぶ
- 複数の土地を相続する場合
- 他の特例(小規模宅地等の特例など)との併用を検討する場合
不動産鑑定士に依頼すべきケース
- 路線価評価と時価に乖離があると思われる場合
- 特殊な減価要因がある場合
- 評価額が1億円を超える土地
小規模宅地等の特例との併用については「小規模宅地等の特例を最大限活用する方法」もご覧ください。
よくある質問
Q1. 共有名義の土地の場合、面積はどう判定しますか?
共有持分ではなく、土地全体の面積で判定します。例えば、600平米の土地を3人で1/3ずつ共有している場合、各人の持分は200平米ですが、土地全体が600平米なので面積要件を満たします。
Q2. 小規模宅地等の特例と併用できますか?
はい、併用可能です。地積規模の大きな宅地の評価で減額した後に、小規模宅地等の特例を適用します。両方の要件を満たす土地は、大幅な評価減が期待できます。
Q3. 農地や山林にも適用できますか?
宅地として評価する土地が対象です。農地や山林でも、宅地比準方式で評価する場合(市街化区域内の農地など)は適用できる可能性があります。純農地や純山林には適用できません。
Q4. 三大都市圏の判定で、市の一部だけが該当する場合はどうなりますか?
土地の所在地が該当区域内かどうかで判定します。市全体ではなく、具体的な住所で判定する必要があります。市役所の都市計画課に問い合わせるのが確実です。
Q5. 旧広大地評価と比べて、どちらが有利ですか?
ケースにより異なります。旧制度は最大65%減額でしたが、判定が不明確でした。新制度は最大約40%減額ですが、形式基準で適用しやすくなりました。マンション敷地の場合は新制度の方が有利です。
まとめ
地積規模の大きな宅地の評価について、重要なポイントをまとめます。
3つのポイント
-
6つの適用要件を漏れなく確認する
- 面積・三大都市圏・地区区分・容積率・市街化調整区域・用途地域
-
規模格差補正率を正確に計算する
- 計算式:(A × B + C) ÷ 地積 × 0.8
- 約20〜40%の評価減が可能
-
専門家に相談して最適な評価方法を選ぶ
- 不動産鑑定評価との比較検討
- 他の補正率・特例との併用
次にやるべきこと
-
土地の面積を確認
- 登記簿面積と実測面積の差がないか確認
-
三大都市圏の該当を確認
- 市区町村の都市計画課に問い合わせ
-
6つの要件をチェック
- チェックリストで漏れなく確認
-
税理士・不動産鑑定士に相談
- 評価額が大きい場合は専門家に依頼
地積規模の大きな宅地の評価は、適用できれば大きな節税効果が得られます。500平米以上の土地を相続する方は、ぜひ検討してください。
相続税の基礎については「相続税はいくらから課税される?基礎控除・申告期限を徹底解説」、具体的な税額は「相続税額シミュレーション」もご覧ください。

北原 崇寛
不動産鑑定士・宅地建物取引士
大手不動産鑑定会社で裁判鑑定・証券化案件・担保評価等を担当後、東証一部上場不動産会社にて不動産訴訟アドバイザリー、法律・税制面からの不動産有効活用コンサルティングに従事。2020年北原不動産鑑定士事務所開業。


