実家の相続

実家を相続放棄するとどうなる?メリット・デメリットと手続き方法

実家を相続放棄するとどうなる?メリット・デメリットと手続き方法
公開: 2025-12-23
更新: 2025-12-23

この記事の結論

実家を相続放棄すると、借金や維持費の負担から解放されますが、全財産を放棄することになり、相続放棄後も管理義務が残る場合があります。相続開始から3ヶ月以内に判断が必要で、一度受理されると取り消しはできません

この記事では、不動産鑑定士の視点から、実家の資産価値を見極め、相続放棄・相続後売却・国庫帰属制度などの選択肢を比較し、最適な判断をサポートします。

この記事でわかること

  • 相続放棄のメリット・デメリット(借金回避 vs 全財産放棄)
  • 相続放棄後の管理義務の範囲とリスク
  • 手続き方法・必要書類・費用・期限(3ヶ月以内)
  • 実家の資産価値判断の方法
  • 相続放棄以外の選択肢との比較(相続後売却、国庫帰属制度、限定承認)
  • 判断チェックリスト

1. 実家を相続放棄するとどうなる?基本を理解する

1-1. 相続放棄とは:法的な意味と効果

相続放棄とは、民法939条に基づき、**「初めから相続人とならなかったものとみなす」**制度です。家庭裁判所への申述が必要で(民法938条)、一度受理されると取り消しできません。

相続放棄をすると、以下の効果が生じます。

  • 全財産を放棄: 不動産・預貯金・借金すべてを放棄
  • 一部だけ放棄することは不可: 「実家だけ放棄して預貯金は相続」はできない
  • 取り消し不可: 一度受理されると撤回できない(不可逆性)
  • 次順位者に相続権が移る: 自分が放棄すると、親や兄弟姉妹に相続権が移る

つまり、実家を相続放棄すると、実家だけでなく預貯金や株式などのプラスの財産もすべて放棄することになります。

1-2. 相続放棄と似た制度との違い

相続放棄と混同されやすい制度があります。

限定承認

プラス財産の範囲内で負債を承継する制度です。借金がプラス財産を上回っても、差額を支払う必要がありません。ただし、相続人全員の同意が必要で、手続きも複雑です。

相続土地国庫帰属制度

2023年4月に創設された制度で、相続した土地を国に帰属させることができます。土地のみを手放せるため、預貯金などは相続できます。ただし、建物がある場合は解体が必要で、10年分の管理費相当額を負担します。

遺産分割協議での放棄

「相続分を放棄する」と遺産分割協議で意思表示することがありますが、これは法的な相続放棄とは異なります。家庭裁判所への申述が必要な相続放棄とは効果が異なるため注意が必要です。

1-3. どのような場合に相続放棄を検討すべきか

以下のような場合、相続放棄を検討する価値があります。

  • 借金が多い(負債超過)
  • 実家が遠方で管理できない
  • 実家の資産価値がほとんどない(解体費用の方が高い)
  • 兄弟姉妹間でトラブルを避けたい
  • 保証債務・事業借入のリスクがある

特に、親が事業を営んでいた場合や連帯保証人になっていた場合は、思わぬ借金が発覚することがあります。相続財産の調査を十分に行ったうえで判断しましょう。

2. 実家を相続放棄するメリット

2-1. 借金・負債を相続しなくて済む

相続放棄の最大のメリットは、借金を相続しなくて済むことです。

相続放棄により回避できる負債の例は以下の通りです。

  • 住宅ローン残債
  • 事業借入(個人事業主や自営業の場合)
  • 連帯保証人としての責任
  • クレジットカード債務
  • 未払いの医療費・介護費用

特に連帯保証人の責任は、相続放棄をしないと相続人に引き継がれます。親が知人の借金の連帯保証人になっていた場合、相続人に請求が来る可能性があります。

2-2. 実家の維持費・管理負担から解放される

実家を相続すると、以下の維持費が発生します。

費用項目 年間費用の目安
固定資産税 5万〜20万円
火災保険料 2万〜5万円
水道光熱費(基本料金) 3万〜6万円
修繕費(定期メンテナンス) 5万〜20万円
庭木の剪定・草刈り 3万〜10万円

遠方に住んでいる場合、管理のための交通費や時間も大きな負担となります。相続放棄をすれば、これらの費用負担から解放されます。

2-3. 相続登記義務から解放される

2024年4月から相続登記が義務化されました。相続開始を知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。

相続放棄をすれば、相続登記の義務はなくなります。登記手続きの費用(数万〜10万円程度)も不要になります。

2-4. 兄弟姉妹間のトラブルを回避できる

実家の処分方法について兄弟姉妹間で意見が分かれることは少なくありません。

  • 「売却したい」vs「維持したい」
  • 「均等に分けたい」vs「住んでいる人が多くもらうべき」
  • 「修繕費用は誰が負担するのか」

相続放棄をすれば、こうした対立から離れることができます。ただし、自分が放棄すると他の相続人に負担が移るため、事前に話し合いをしておくことが重要です。

3. 実家を相続放棄するデメリット・リスク

3-1. 全財産を相続できなくなる

相続放棄は全財産を対象とします。以下のプラスの財産も相続できなくなります。

  • 預貯金
  • 株式・投資信託
  • 生命保険金(受取人が被相続人の場合)
  • 貴金属・美術品
  • 自動車
  • その他の不動産

「実家だけ放棄して預貯金は相続したい」という希望は叶えられません。プラスの財産が多い場合は、相続放棄以外の選択肢を検討すべきです。

3-2. 相続放棄後も管理義務が残る場合がある

相続放棄をしても、次順位者が管理できるようになるまで財産を管理する義務があります(民法940条)。

具体的には、以下のような義務が残ります。

  • 建物の倒壊防止措置
  • 火災予防措置
  • 近隣への迷惑防止

実家が老朽化している場合、倒壊して隣家に損害を与えるリスクがあります。相続放棄後も管理義務が残る場合、損害賠償責任を負う可能性があります。

管理義務から解放される方法は後述しますが、相続財産清算人の選任には予納金(50万〜100万円程度)が必要です。

3-3. 取り消しができない(不可逆性)

相続放棄は一度受理されると取り消しできません

例えば、相続放棄後に以下のことが判明しても撤回できません。

  • 借金がなかったことが判明した
  • 思わぬ預貯金が見つかった
  • 不動産の価値が高かったことが分かった

詐欺や強迫による場合のみ取消しが認められる可能性がありますが、非常に限定的です。相続財産の調査を十分に行ってから判断しましょう。

3-4. 次順位者(兄弟姉妹、甥姪)に相続権が移る

自分が相続放棄すると、相続権は次順位者に移ります。

相続順位

  1. 第1順位: 子(代襲相続で孫)
  2. 第2順位: 親(祖父母)
  3. 第3順位: 兄弟姉妹(代襲相続で甥姪)

第1順位の相続人全員が放棄すると、第2順位の親に相続権が移ります。親も放棄すると、第3順位の兄弟姉妹に移ります。

事前に家族全員で話し合い、必要であれば全員で相続放棄する手続きを進めましょう。

3-5. 感情面での葛藤

相続放棄には心理的な負担も伴います。

  • 罪悪感: 親の遺産を放棄する後ろめたさ
  • 親族からの批判: 「なぜ放棄するのか」という責め
  • 地域への責任感: 実家が空き家になることへの懸念

経済的な合理性だけでなく、感情面も含めて判断することが大切です。専門家に相談しながら、後悔のない選択をしましょう。

4. 実家の資産価値を見極める方法

4-1. 相続放棄すべきかの判断基準

実家を相続放棄すべきかどうかは、以下の視点で判断します。

立地の評価

  • 駅からの距離(徒歩15分以内か)
  • 生活利便性(スーパー、病院、学校の距離)
  • 将来性(人口動態、開発計画)

建物の評価

  • 築年数(30年以内か)
  • 構造(木造、鉄骨、RC)
  • 劣化状況(雨漏り、傾き、シロアリ被害)

市場性の判断

  • 売却可能性(類似物件の成約事例)
  • 賃貸可能性(周辺の賃貸需要)
  • 解体費用との比較

4-2. 保有コストと売却益の試算

具体的な数字で比較してみましょう。

保有した場合の10年コスト(例)

費用項目 10年間の合計
固定資産税 50万円(年5万円)
維持費 100万円(年10万円)
合計 150万円

売却した場合(例)

項目 金額
売却価格(推定) 800万円
仲介手数料 ▲30万円
譲渡所得税 ▲20万円(特例適用後)
手取り 750万円

この例では、売却益750万円 > 保有コスト150万円なので、相続後売却が有利です。

一方、売却困難な地方の物件では、売却価格よりも解体費用(100万〜300万円)の方が高くなることがあります。その場合は相続放棄を検討する価値があります。

4-3. 判断フローチャート

以下のフローで判断できます。

Q1: 借金・負債はあるか?

  • YES → 負債 > プラス財産なら → 相続放棄を検討
  • NO → Q2へ

Q2: 実家に資産価値はあるか?(売却可能性)

  • YES → 相続後売却を検討
  • NO → Q3へ

Q3: 管理できるか?(遠方・時間・費用)

  • YES → 相続して維持・賃貸を検討
  • NO → Q4へ

Q4: 土地のみか?(建物なし・更地)

  • YES → 相続土地国庫帰属制度を検討
  • NO → 相続放棄を検討(ただし管理義務に注意)

5. 相続放棄の手続き方法

5-1. 相続放棄の期限:3ヶ月以内

相続放棄は**「相続の開始を知った日」から3ヶ月以内**に行う必要があります。

「相続の開始を知った日」とは、以下を両方知った日を指します。

  • 被相続人が亡くなったこと
  • 自分が相続人であること

3ヶ月の期限内に判断が難しい場合は、熟慮期間の伸長申立てができます。家庭裁判所に申立てを行い、1〜3ヶ月の延長が認められることがあります。

詳しい手続きは相続放棄の期限と手続き完全ガイドをご覧ください。

5-2. 手続きの流れ【5ステップ】

STEP1: 相続財産の調査(1〜2週間)

  • 借金の有無を確認(信用情報機関への開示請求)
  • 不動産、預貯金、株式の確認
  • 遺言書の有無

STEP2: 相続放棄の判断(1週間)

  • メリット・デメリットを比較
  • 他の相続人との相談
  • 判断フローチャートの活用

STEP3: 必要書類の準備(1〜2週間)

  • 相続放棄申述書(裁判所書式)
  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 申述人の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票

STEP4: 家庭裁判所への申述(即日)

  • 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 収入印紙800円、郵便切手300〜500円程度

STEP5: 受理・照会・受理証明書の取得(1〜2ヶ月)

  • 裁判所から照会書が届く
  • 回答後、受理通知が届く
  • 受理証明書を取得(債権者への提示用)

5-3. 必要書類の詳細と取得方法

書類 取得場所 費用
相続放棄申述書 裁判所HP 無料
被相続人の戸籍謄本 本籍地の市区町村 1通450円
申述人の戸籍謄本 本籍地の市区町村 1通450円
住民票除票 最後の住所地の市区町村 1通300円
収入印紙 郵便局、コンビニ 800円
郵便切手 郵便局 300〜500円

本籍地が遠方の場合は、郵送請求が可能です(定額小為替で手数料を送付)。

5-4. 費用の総額

自分で手続きする場合

  • 収入印紙: 800円
  • 郵便切手: 300〜500円
  • 戸籍謄本等: 約1,000〜3,000円
  • 合計: 約3,000〜5,000円

専門家に依頼する場合

  • 司法書士報酬: 3万〜5万円
  • 弁護士報酬: 5万〜10万円

期限が迫っている場合や、書類準備が困難な場合は、専門家への依頼を検討しましょう。

6. 相続放棄後の管理義務と対処法

6-1. 民法940条の管理義務とは

相続放棄をしても、次順位者が管理できるようになるまで財産を管理する義務があります。

この「次順位者が管理できるようになるまで」の解釈が問題となります。次順位者も相続放棄をした場合、最終的に誰が管理するのかが明確でないことがあります。

6-2. 管理義務を免れる方法

管理義務から解放されるには、以下の方法があります。

方法1: 相続財産清算人の選任

家庭裁判所に申立てを行い、相続財産清算人を選任してもらいます。清算人が財産を管理・処分します。

  • 申立て先: 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
  • 予納金: 50万〜100万円(財産状況により異なる)
  • 費用負担: 申立人が負担

方法2: 次順位者への引継ぎ

次順位者(第2順位の親、第3順位の兄弟姉妹)に連絡し、管理を引き継いでもらいます。

  • 引継ぎ確認書を作成
  • 管理状況を文書で記録

方法3: 最小限の管理

次順位者への引継ぎが難しい場合、最小限の管理を続けます。

  • 倒壊リスクの高い建物は解体を検討
  • 火災保険の継続
  • 定期的な見回り(年1〜2回)

6-3. 管理義務違反のリスク

管理義務を怠ると、以下のリスクがあります。

  • 倒壊による損害賠償: 隣家に損害を与えた場合、賠償責任を負う可能性
  • 空き家対策特別措置法の対象: 管理不全空家に指定されると行政指導
  • 固定資産税の増額: 住宅用地特例が解除されると最大6倍に

7. 相続放棄以外の選択肢との比較

7-1. 4つの選択肢の比較表

選択肢 メリット デメリット 費用 おすすめケース
相続放棄 借金回避、維持費不要 全財産放棄、管理義務残る 3,000〜5,000円 負債超過、資産価値ほぼゼロ
相続後売却 プラス財産を獲得 売却までの維持費 仲介手数料3〜5% 売却可能性あり
相続土地国庫帰属制度 土地のみ手放せる 建物解体必要、10年分管理費 数十万〜 更地、担保なし
限定承認 プラス財産の範囲で負債承継 手続き複雑 数十万円 借金と資産のバランス不明

7-2. 相続後に売却する

メリット

  • 売却益を得られる
  • 預貯金などプラス財産も相続できる
  • 空き家3,000万円特例で譲渡所得税を大幅軽減

デメリット

  • 売却までの維持費負担
  • 相続登記義務(3年以内)
  • 売却手続きの手間

詳しくは実家売却の流れと費用をご覧ください。

7-3. 相続土地国庫帰属制度

2023年4月に創設された制度で、相続した土地を国に帰属させることができます。

要件

  • 建物がない更地
  • 担保権、使用収益権がない
  • 境界明確、土壌汚染なし
  • 管理・処分に過分な費用を要しない

費用

  • 審査手数料: 1筆14,000円
  • 負担金: 10年分の管理費相当額(市街地の宅地で約80万円)

建物がある場合は解体費用(100万〜300万円)が別途必要です。

7-4. 限定承認

プラス財産の範囲内で負債を承継する制度です。

メリット

  • 借金がプラス財産を上回っても差額を支払う必要がない
  • プラス財産が残れば相続できる

デメリット

  • 相続人全員の同意が必要
  • 手続きが複雑(財産目録作成、清算手続き)
  • 税務上のみなし譲渡所得課税

借金と資産のバランスが不明な場合に検討する価値があります。

8. よくある失敗・トラブル事例と対策

8-1. 財産処分後に相続放棄を申述

事例: 実家の家財道具を処分してから相続放棄を申述

結果: 相続を承認したとみなされ、相続放棄が認められない(民法921条)

対策: 相続放棄前は財産に一切手を付けない(遺品整理も避ける)

8-2. 期限(3ヶ月)を過ぎてから申述

事例: 相続開始を知ってから3ヶ月以上経過後に相続放棄を希望

結果: 原則として受理されない

対策: 早めに判断、無理なら熟慮期間の伸長申立て

8-3. 管理義務を知らずに放棄

事例: 相続放棄すれば一切の義務から解放されると誤解

結果: 実家が倒壊して隣家に損害、損害賠償請求

対策: 相続財産清算人の選任、次順位者への引継ぎ

8-4. 兄弟姉妹への影響を考慮せず

事例: 自分だけ相続放棄、兄弟姉妹に負担が移る

結果: 兄弟姉妹から反発、家族関係の悪化

対策: 事前に家族全員で話し合い

9. ケーススタディ【実例から学ぶ】

ケース1: 遠方の実家を相続放棄したAさん(50代男性)

状況

  • 実家: 地方の一戸建て(築50年、木造)
  • 距離: 飛行機で3時間
  • 借金: なし、預貯金500万円

判断のポイント

  • 売却査定額: 50万円
  • 解体費用: 150万円
  • 管理が困難

結果: 全員で相続放棄し、相続財産清算人を選任(予納金70万円を3人で分担)

ケース2: 実家を相続後に売却したBさん(40代女性)

状況

  • 実家: 郊外の一戸建て(築35年、木造)
  • 距離: 電車で1時間
  • 借金: なし、預貯金1,000万円

判断のポイント

  • 売却査定額: 1,500万円(駅徒歩12分)
  • 空き家3,000万円特例で譲渡所得税ゼロ

結果: 売却益約1,400万円+預貯金1,000万円=2,400万円を獲得

ケース3: 相続土地国庫帰属制度を利用したCさん(60代男性)

状況

  • 実家: 既に解体済みの更地(地方)
  • 距離: 車で2時間
  • 借金: なし、預貯金800万円

判断のポイント

  • 土地が売却困難(過疎地)
  • 預貯金は相続したい

結果: 負担金約50万円で土地を国に帰属、預貯金800万円を相続

10. 専門家への相談をおすすめするケース

以下のような場合は、専門家への相談をおすすめします。

弁護士への相談

  • 借金の額が不明、または多額の借金がある
  • 相続人間で意見が対立している
  • 相続放棄の期限が迫っている

司法書士への相談

  • 相続放棄の手続きを代行してほしい
  • 戸籍の取得が複雑
  • 相続登記が必要

不動産鑑定士への相談

  • 実家の資産価値を正確に評価したい
  • 売却可能性を専門的に判断したい
  • リフォーム・解体費用の見積もり

税理士への相談

  • 相続税の試算
  • 空き家3,000万円特例の適用可否

11. よくある質問(FAQ)

Q1. 相続放棄すると実家はどうなりますか?

次順位の相続人(親、兄弟姉妹など)に相続権が移ります。全員が相続放棄すると、相続財産清算人が選任され、財産を管理・処分します。

Q2. 相続放棄後も実家の管理義務はありますか?

民法940条により、次順位者が管理できるまで財産を管理する義務があります。相続財産清算人を選任することで管理義務から解放されます。

Q3. 相続放棄の期限はいつまでですか?

「相続の開始を知った日」から3ヶ月以内です。期限を過ぎると原則として受理されませんが、熟慮期間の伸長申立てで延長できる場合があります。

Q4. 相続放棄の費用はいくらかかりますか?

自分で手続きする場合、合計3,000〜5,000円です。専門家に依頼すると司法書士で3万〜5万円、弁護士で5万〜10万円かかります。

Q5. 一部だけ相続放棄できますか?

できません。相続放棄は全財産を放棄することになります。実家だけ放棄して預貯金は相続、ということはできません。

Q6. 相続放棄すると相続税はかかりますか?

相続放棄した人には相続税はかかりません。ただし、次順位者が相続すると相続税が発生する可能性があります。

Q7. 実家がボロボロで価値がない場合も相続放棄すべきですか?

必ずしもそうとは限りません。借金がなければ、相続後に売却または解体して相続土地国庫帰属制度を利用する方が有利な場合もあります。実家の資産価値を正確に評価してから判断しましょう。

Q8. 相続放棄を取り消すことはできますか?

一度受理されると取り消しできません。詐欺・強迫による場合のみ取消しが認められる可能性がありますが、非常に限定的です。

Q9. 自分が相続放棄すると兄弟姉妹に迷惑がかかりますか?

第1順位の相続人全員が相続放棄すると、第2順位(親)、第3順位(兄弟姉妹)に相続権が移ります。事前に家族全員で話し合いましょう。

Q10. 遠方の実家を管理できない場合、どうすればいいですか?

相続放棄または相続財産清算人の選任を検討してください。相続後に売却する場合は、空き家管理サービスの利用も選択肢です。詳しくは空き家管理費用を減らす方法をご覧ください。

12. まとめ

この記事のポイント

  1. 相続放棄のメリット: 借金回避、維持費不要、相続登記義務なし
  2. 相続放棄のデメリット: 全財産放棄、管理義務残る、取り消し不可
  3. 手続き方法: 家庭裁判所に申述、期限3ヶ月以内、費用3,000〜5,000円
  4. 実家の資産価値判断: 立地・建物・市場性を評価、保有コストと売却益を比較
  5. 選択肢の比較: 相続放棄、相続後売却、国庫帰属制度、限定承認を比較検討
  6. 管理義務への対処: 相続財産清算人の選任、次順位者への引継ぎ

次のステップ

  1. 相続財産の調査: 借金の有無、不動産の評価額を確認
  2. 選択肢の比較: 相続放棄 vs 相続後売却 vs 国庫帰属制度
  3. 家族との話し合い: 他の相続人と方針を調整
  4. 専門家への相談: 弁護士、司法書士、不動産鑑定士
  5. 期限内に判断: 3ヶ月以内、無理なら熟慮期間の伸長申立て

実家の相続放棄は、経済合理性と感情のバランスが難しい決断です。この記事が、皆さまの最適な判断の一助となれば幸いです。

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免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談・税務相談ではありません。相続に関する具体的な判断や手続きについては、弁護士・税理士・司法書士などの専門家にご相談ください。

また、法改正により内容が変更される可能性があります。最新の情報は裁判所・法務省・国税庁などの公式サイトでご確認ください。