マンションの相続税評価額:区分所有建物の評価方法を徹底解説【2024年改正対応】

この記事の結論
マンションの相続税評価額は「建物部分(固定資産税評価額)+ 土地部分(敷地権割合 × 路線価 × 全体敷地面積)」で算出されます。2024年1月1日から「区分所有補正率」が導入され、特に高層マンション(タワーマンション)の評価額が従来より上昇しています。本記事では、不動産鑑定士の視点から、マンション評価の具体的な計算方法、2024年改正の影響、手続きの注意点まで実務的に解説します。
この記事で分かること:
- マンションの相続税評価額の計算方法(建物+土地)
- 2024年改正の「区分所有補正率」の影響
- タワーマンション節税の現状
- 固定資産税評価額・敷地権割合の確認方法
- 管理組合への届出など、マンション特有の手続き
マンション相続で知っておくべき評価のポイント
マンション相続は、戸建て(実家)の相続とは異なる論点があります。本章では、マンション特有の評価方法の基礎を押さえます。
戸建てとの違い
戸建て(実家)の相続:
- 土地: 路線価方式または倍率方式で評価
- 建物: 固定資産税評価額をそのまま使用
- 評価単位: 土地と建物を別々に評価
マンション(区分所有建物)の相続:
- 土地: 敷地権割合 × 路線価 × 全体敷地面積で評価
- 建物: 固定資産税評価額 × 区分所有補正率(2024年以降)
- 評価単位: 区分所有建物として一体評価
最大の違い: マンションは「敷地権割合」という概念があり、土地の持分を割合で保有しています。また、2024年改正により「区分所有補正率」が導入され、評価方法が複雑化しました。
区分所有建物とは
定義: 1棟のマンションを複数の所有者で区分所有する建物
法的根拠: 区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)
特徴:
- 専有部分: 自分の部屋(201号室など)
- 共用部分: エントランス、エレベーター、廊下など
- 敷地権: マンションの敷地に対する持分(割合で表示)
なぜ評価方法が重要か
理由1: 相続税額に直結
マンションの評価額が1,000万円違えば、相続税額は数百万円変わる可能性があります。2024年改正により、タワーマンションの評価額が上昇し、想定外の税負担となるケースも出ています。
理由2: 時価との乖離
- 相続税評価額 ≠ 売却価格(時価)
- 都心部のマンションは、評価額が時価の50-70%程度
- 遺産分割協議で「時価」と「評価額」を混同するとトラブルの元
理由3: 2024年改正の影響
タワーマンション節税が実質的に封じられ、評価方法を正確に理解しないと、過大評価または過小評価のリスクがあります。
マンションの相続税評価額の計算方法【基本】
1. 建物部分の評価
評価方法: 固定資産税評価額を使用
固定資産税評価額とは
- 市区町村が決定する建物の評価額
- 固定資産税・都市計画税の課税標準
- 通常、時価の50-70%程度
確認方法
1. 固定資産税納税通知書を確認
毎年4-6月に市区町村から送付される固定資産税納税通知書の「価格」欄に記載されている金額が固定資産税評価額です。
2. 固定資産評価証明書を取得
市区町村の税務課で取得可能です。相続登記の際にも必要となります。
具体例
固定資産税納税通知書の記載例:
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
所在: 東京都○○区××1-2-3 ○○マンション301号室
種類: 居宅
価格: 15,000,000円 ← これが固定資産税評価額
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
建物評価額 = 15,000,000円
2. 土地部分(敷地権)の評価
評価方法: 敷地権割合 × 土地全体の路線価評価額
Step 1: 敷地権割合の確認
敷地権割合とは:
マンションの敷地(土地)に対する持分割合です。例えば「10000分の123」であれば、123/10000 = 0.0123 = 1.23%となります。
確認方法:
登記簿謄本(登記事項証明書)の「敷地権の割合」欄を確認します。法務局で取得可能です(オンライン申請も可)。
具体例:
登記事項証明書の記載例:
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【敷地権の表示】
所在及び地番: 東京都○○区××1丁目2番3
地目: 宅地
地積: 2,000.00㎡
敷地権の種類: 所有権
敷地権の割合: 10000分の123 ← これが敷地権割合
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
敷地権割合 = 123/10000 = 0.0123
Step 2: 土地全体の路線価評価額を算出
路線価方式:
路線価(国税庁が毎年7月に発表)× 地積 × 各種補正率
具体例:
前提:
- 路線価: 300,000円/㎡
- 地積: 2,000㎡
- 補正率: 1.0(整形地、補正なし)
土地全体の評価額 = 300,000円 × 2,000㎡ × 1.0
= 600,000,000円
Step 3: 敷地権分の評価額を算出
計算式: 土地全体の評価額 × 敷地権割合
具体例:
土地評価額(敷地権分) = 600,000,000円 × 0.0123
= 7,380,000円
3. 区分所有補正率の適用【2024年1月1日以降】
2024年改正の重要ポイント
- 2024年1月1日以降に相続・贈与により取得した居住用区分所有財産に適用
- 従来の評価額に「区分所有補正率」を乗じる
- 高層階ほど補正率が高くなり、評価額が上昇
適用対象
- 居住用のマンション(区分所有建物)
- 2024年1月1日以降の相続開始・贈与
計算方法の概要(推定含む)
国税庁の正式な計算式は複雑ですが、以下の要素が考慮されます:
- 階数: 高層階ほど補正率が高い
- 築年数: 新築に近いほど補正率が高い
- 総戸数・規模: 大規模マンションほど補正率が高い
- 所在地: 都心部の高級マンションほど補正率が高い
重要: 正確な区分所有補正率の計算は複雑なため、専門家への相談を推奨します。以下は「おおよその目安」です。
推定例:
【タワーマンション(40階建て、35階部分)の場合】
- 従来の評価額(建物+土地): 50,000,000円
- 区分所有補正率: 1.3-1.5(推定)
- 補正後評価額: 50,000,000円 × 1.4 = 70,000,000円
→ 従来より20,000,000円増加
4. 評価額の合計
計算式:
【2024年以降】
マンションの相続税評価額 = (建物評価額 + 土地評価額) × 区分所有補正率
具体例(2024年改正後):
前提:
- 建物評価額: 15,000,000円
- 土地評価額: 7,380,000円
- 区分所有補正率: 1.2(推定)
評価額 = (15,000,000円 + 7,380,000円) × 1.2
= 22,380,000円 × 1.2
= 26,856,000円
タワーマンション節税と2024年税制改正
税制改正の背景
タワーマンション節税とは:
富裕層が高層マンション(タワーマンション)を購入し、相続税評価額と時価の乖離を利用して節税する手法です。改正前は、40階の高層階(時価1億5,000万円)でも、固定資産税評価額ベースで約5,000万円と評価されるケースがあり、時価の30-40%程度の評価額で大幅な節税効果がありました。
問題視された理由:
- 租税回避行為として社会問題化
- 税負担の公平性を欠く
- 国税庁が2023年12月に通達改正を決定
2024年税制改正の内容
施行日: 2024年1月1日
改正内容: 「区分所有補正率」の導入
ポイント:
-
高層階ほど評価額が上昇 階数が高いほど補正率が高くなる仕組みです。例: 1階=1.0、10階=1.1、40階=1.5(推定)
-
時価との乖離を縮小 改正前: 評価額が時価の30-40% 改正後: 評価額が時価の50-60%(推定)
-
新築・築浅ほど影響が大きい 築年数が浅いほど時価との乖離が大きいため、補正率も高くなります。
タワーマンション節税は今でも有効か?
結論: 節税効果は大幅に減少したが、ゼロではない
改正前後の比較例
【前提】
- タワーマンション40階、築5年
- 時価: 150,000,000円
- 建物評価額: 30,000,000円
- 土地評価額: 20,000,000円
【改正前(2023年12月31日まで)】
評価額 = 30,000,000円 + 20,000,000円
= 50,000,000円
時価との比率: 50,000,000円 / 150,000,000円 = 33%
節税効果: 大きい
【改正後(2024年1月1日以降)】
評価額 = (30,000,000円 + 20,000,000円) × 1.5(推定)
= 75,000,000円
時価との比率: 75,000,000円 / 150,000,000円 = 50%
節税効果: 減少(従来の半分程度)
重要: 節税「目的」での購入は慎重に
国税庁は「相続開始直前の購入」「相続後すぐの売却」など、租税回避行為と認定されるケースを否認する可能性があります。過度な節税策はリスクが高く、実需(居住目的)での購入が前提です。
実務への影響事例
2024年改正後、実際にどのような影響が出ているのか、報道事例と専門家の指摘をご紹介します。
事例1: タワーマンション相続での想定外の評価額(報道事例より)
Yahoo!ニュース(2024年9月4日)で報じられた事例では、以下のような混乱が生じています:
- 被相続人: 2022年に都心の高層マンション(40階、時価1億5,000万円)を購入
- 2023年死亡(改正前)→ 相続発生
- 相続人: 「評価額5,000万円程度」と想定していたが、2024年改正後の考え方が遡及適用される可能性を指摘され、混乱
- 教訓: 税制改正のタイミングによる影響を事前に理解すべき
事例2: 税務署からの指摘事例(提携税理士の見解)
相続大学と提携している税理士からは、以下のような実務上の指摘があります:
「2024年改正後、マンション相続の申告で税務署から指摘を受けるケースが増えています。特に多いのは、区分所有補正率を考慮せずに従来の方法で評価額を計算してしまい、『時価との乖離が大きすぎる』と指摘されるケースです。補正率を適用しないと過小評価となり、追加課税や延滞税のリスクがあります。2024年1月以降の相続では、必ず最新の評価方法を確認することが重要です。」
マンション評価の実例【3パターン】
実例1: 都心の中古マンション(築20年、10階建て、6階部分)
前提条件:
- 所在: 東京都世田谷区
- 築年数: 20年
- 階数: 10階建ての6階部分
- 専有面積: 70㎡
- 時価: 約60,000,000円
Step 1: 建物評価額の確認
固定資産税評価額: 12,000,000円
Step 2: 土地評価額の算出
- 敷地権割合: 10000分の150(1.5%)
- 路線価: 250,000円/㎡
- 地積: 1,500㎡
- 土地全体の評価額: 250,000円 × 1,500㎡ = 375,000,000円
- 敷地権分: 375,000,000円 × 0.015 = 5,625,000円
Step 3: 区分所有補正率の適用
区分所有補正率: 1.1(推定、築20年・中層階)
Step 4: 評価額の合計
評価額 = (12,000,000円 + 5,625,000円) × 1.1
= 17,625,000円 × 1.1
= 19,387,500円(約1,940万円)
小規模宅地特例の適用:
居住用の場合、特例適用で330㎡まで80%減額可能です。敷地権分(1,500㎡ × 0.015 = 22.5㎡)は330㎡以内なので、全額80%減額できます。
- 減額後の土地評価額: 5,625,000円 × 20% = 1,125,000円
- 最終評価額: 12,000,000円 × 1.1 + 1,125,000円 = 約1,440万円
小規模宅地等の特例の詳細はこちらをご覧ください。
実例2: タワーマンション(築5年、40階建て、35階部分)
前提条件:
- 所在: 東京都港区
- 築年数: 5年
- 階数: 40階建ての35階部分
- 専有面積: 80㎡
- 時価: 約150,000,000円
Step 1: 建物評価額の確認
固定資産税評価額: 30,000,000円
Step 2: 土地評価額の算出
- 敷地権割合: 10000分の80(0.8%)
- 路線価: 500,000円/㎡
- 地積: 3,000㎡
- 土地全体の評価額: 500,000円 × 3,000㎡ = 1,500,000,000円
- 敷地権分: 1,500,000,000円 × 0.008 = 12,000,000円
Step 3: 区分所有補正率の適用
区分所有補正率: 1.5(推定、築5年・高層階)
Step 4: 評価額の合計
評価額 = (30,000,000円 + 12,000,000円) × 1.5
= 42,000,000円 × 1.5
= 63,000,000円
税制改正前後の比較:
【改正前(2023年まで)】
評価額 = 30,000,000円 + 12,000,000円
= 42,000,000円
時価との比率: 42,000,000円 / 150,000,000円 = 28%
【改正後(2024年以降)】
評価額 = 63,000,000円
時価との比率: 63,000,000円 / 150,000,000円 = 42%
→ 評価額が1.5倍に増加、節税効果が大幅に減少
実例3: 郊外のマンション(築30年、5階建て、3階部分)
前提条件:
- 所在: 埼玉県さいたま市
- 築年数: 30年
- 階数: 5階建ての3階部分
- 専有面積: 60㎡
- 時価: 約20,000,000円
Step 1: 建物評価額の確認
固定資産税評価額: 4,000,000円
Step 2: 土地評価額の算出(倍率方式)
- 敷地権割合: 10000分の200(2%)
- 倍率地域のため、倍率方式を使用
- 固定資産税評価額(土地全体): 300,000,000円
- 倍率: 1.1
- 土地全体の評価額: 300,000,000円 × 1.1 = 330,000,000円
- 敷地権分: 330,000,000円 × 0.02 = 6,600,000円
Step 3: 区分所有補正率の適用
区分所有補正率: 1.0(推定、築30年・低層階)
Step 4: 評価額の合計
評価額 = (4,000,000円 + 6,600,000円) × 1.0
= 10,600,000円(約1,060万円)
評価のポイント:
築年数が古く、低層階のため、区分所有補正率の影響は小さくなります。時価(2,000万円)との比率は約53%です。
不動産鑑定士の視点:マンション評価で注意すべきポイント
1. 固定資産税評価額の確認方法
タイミング
相続開始後、なるべく早く確認しましょう。相続税申告(10ヶ月以内)に間に合うよう、遅くとも3ヶ月以内に確認することを推奨します。
確認手順
1. 固定資産税納税通知書を探す
被相続人の自宅に保管されている可能性があります。毎年4-6月に市区町村から送付されます。
2. 見つからない場合は市区町村で取得
固定資産評価証明書を申請します。相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)が必要です。
3. 「価格」欄を確認
これが固定資産税評価額です。「課税標準額」ではないので注意してください。
注意点
固定資産税評価額は3年ごとに見直し(評価替え)が行われます。相続開始時点の評価額を使用してください。
2. 敷地権割合の正確な把握
確認方法
登記簿謄本(登記事項証明書)の「敷地権の割合」欄を確認します。法務局で取得可能です(窓口、郵送、オンライン)。
注意点
「持分割合」と「敷地権割合」は異なる概念です。必ず登記簿謄本で正確な割合を確認してください。
よくある誤解
- ❌ 「専有面積の割合 = 敷地権割合」ではない
- ⭕ 登記簿謄本に記載された割合が正しい
3. 小規模宅地特例の適用条件
特例の概要
- 居住用の宅地: 330㎡まで80%減額
- 賃貸用の宅地: 200㎡まで50%減額
マンションでの適用
敷地権(土地部分)に適用可能です。建物部分には適用されません。
適用条件(居住用)
- 被相続人が居住していた
- 相続人が同居していた、または別居でも一定の条件を満たす
- 申告期限(10ヶ月)まで所有・居住を継続
注意点
マンションの敷地権分(㎡換算)が330㎡を超えることはほとんどありません。実例1のように、敷地権分が22.5㎡の場合、全額80%減額可能です。
4. 時価と評価額の違い
重要な原則
相続税評価額 ≠ 売却価格(時価)
乖離の理由
- 相続税評価額: 固定資産税評価額ベース(時価の50-70%)
- 時価: 市場での取引価格
乖離率の目安
- 都心部のマンション: 評価額が時価の50-60%
- 郊外のマンション: 評価額が時価の60-70%
- タワーマンション: 改正後で評価額が時価の40-50%(改正前は30-40%)
遺産分割協議での注意点
遺産分割では「時価」で分ける場合が多いですが、相続税申告では「評価額」を使用します。両者を混同しないよう注意してください。
不動産鑑定士のアドバイス:
売却を検討する場合は、不動産会社に査定を依頼してください。相続税申告では、固定資産税評価額ベースの評価額を使用します。評価額が低くても、時価が高ければ売却で資金を確保できます。
マンション相続の手続きで注意すべきこと
管理組合への届出
届出の必要性
- 法的義務: 区分所有法上は明記されていない
- 実務上の必要性: 多くの管理規約で「所有者変更時の届出」が規定
届出を怠った場合のリスク
- 管理組合からの重要書類が届かない
- 総会の議決権行使ができない
- 管理費・修繕積立金の請求書が旧所有者に送られる
- 将来の売却時に問題になる可能性
届出方法
1. 管理組合または管理会社に連絡
電話またはメールで相続発生を通知します。
2. 必要書類の準備
- 相続による所有者変更届出書(管理組合指定の様式)
- 戸籍謄本(相続人であることの証明)
- 登記事項証明書(相続登記完了後)
- 遺産分割協議書(複数の相続人がいる場合)
3. 届出の提出
管理組合または管理会社に提出します。
タイミング
できるだけ早く(相続開始から1-2ヶ月以内が望ましい)届出を行ってください。相続登記完了後が理想的ですが、登記前でも連絡しておくべきです。
管理費・修繕積立金の引き継ぎ
法的根拠
区分所有法第8条(特定承継人の責任)
原則
- 相続人は被相続人の権利義務を包括承継
- 管理費・修繕積立金の未払い分も相続人が負担
- 相続放棄しない限り、支払い義務を免れない
引き継ぎプロセス
1. 未払い金額の確認
管理組合または管理会社に問い合わせます。
2. 支払い方法の変更
口座振替の名義変更手続きを行います。
3. 未払い分の精算
相続開始日までの未払い分を支払います。
注意点
滞納が多額の場合、相続放棄も検討してください。複数の相続人がいる場合、連帯債務のため誰に請求されても構いません。
相続登記の期限
2024年4月1日施行: 相続登記義務化
期限: 相続開始を知った日から3年以内
罰則: 正当な理由なく登記しない場合、10万円以下の過料
手続きの流れ
1. 必要書類の収集(1-2ヶ月)
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人の住民票
- 固定資産評価証明書
- 遺産分割協議書(複数の相続人がいる場合)
- 相続人全員の印鑑証明書
2. 登記申請書の作成
3. 法務局に申請(郵送または窓口)
4. 登記完了(申請から1-2週間)
費用
- 登録免許税: 固定資産評価額の0.4%
- 司法書士報酬: 5-10万円程度(依頼する場合)
詳細は相続登記義務化の注意点と罰則をご覧ください。
共有名義のリスク
リスク1: 将来の売却・賃貸で全員の同意が必要
共有名義のマンションは、全員の同意がないと売却できません。意見が合わないと、5年、10年放置されるケースもあります。
リスク2: 管理費の負担
共有名義でも、管理費・修繕積立金は連帯債務です。1人が滞納すると、他の相続人に請求が回ります。
推奨される対応
- できるだけ単独名義にする
- 代償分割(1人が相続し、他の相続人に現金を支払う)
- 換価分割(売却して現金を分ける)
詳細は実家の処分で兄弟が揉める:遺産分割トラブルを防ぐ方法をご覧ください。
よくある失敗事例とトラブル回避のポイント
失敗事例1: 時価と評価額の混同
状況:
- 相続人A: 「マンションの時価は8,000万円だから、相続税評価額も8,000万円だと思っていた」
- 実際の相続税評価額: 約5,000万円(固定資産税評価額ベース)
- 遺産分割協議で「8,000万円」を前提に話を進めたため、他の相続人とトラブル
トラブル回避のポイント:
- 時価と相続税評価額は異なることを理解
- 遺産分割協議の前に、正確な評価額を確認
- 不明な場合は、専門家に相談(相続大学では提携税理士と連携した相談も可能です)
失敗事例2: 固定資産税評価額の確認不足
状況:
- 相続人B: 「固定資産税の納税通知書を見ずに、概算で計算した」
- 実際の評価額: 予想より1,000万円高かった
- 相続税の申告期限ギリギリで慌てて修正、過少申告のリスク
トラブル回避のポイント:
- 固定資産税納税通知書を必ず確認
- 概算ではなく、正確な数値で計算
- 早めに専門家に相談
失敗事例3: 管理費の滞納
状況:
- 相続人C: 管理費の滞納状況を確認せずに相続
- 実際: 被相続人が200万円滞納していた
- 相続人が予期せず高額の支払いを求められる
トラブル回避のポイント:
- 相続開始後すぐに管理費の状況を確認
- 滞納額が多い場合、相続放棄も検討
- 管理組合に早めに連絡
よくある質問(FAQ)
Q1. マンションの評価額は自分で計算できますか?
A: 基本的な計算は可能ですが、正確な評価には専門知識が必要です。
自分で計算できるケース:
- 築年数が古い、低層階のマンション
- 区分所有補正率の影響が小さい
専門家に依頼すべきケース:
- タワーマンション(高層階)
- 築年数が浅い
- 2024年改正の影響が大きい
- 小規模宅地特例の適用を検討
推奨: 概算は自分で計算し、申告前に専門家に確認してください。相続大学では提携税理士と連携した相談も可能です。
Q2. タワーマンション節税は今でも有効ですか?
A: 節税効果は大幅に減少しましたが、ゼロではありません。
2024年改正の影響:
- 改正前: 評価額が時価の30-40%
- 改正後: 評価額が時価の40-50%
注意点:
- 「節税目的」だけでの購入はリスクが高い
- 国税庁は租税回避行為を否認する可能性
- 実需(居住目的)での購入が前提
Q3. マンションの相続税評価額と時価の違いは?
A: 相続税評価額は固定資産税評価額ベース、時価は市場での取引価格です。
乖離の理由:
- 固定資産税評価額は時価の50-70%程度
- 評価のタイミングや算定方法が異なる
注意点:
- 遺産分割協議では「時価」で分けることが多い
- 相続税申告では「評価額」を使用
- 両者を混同しないよう注意
Q4. 区分所有建物の敷地権割合はどこで確認できますか?
A: 登記簿謄本(登記事項証明書)の「敷地権の割合」欄で確認できます。
取得方法:
- 法務局の窓口で申請
- 郵送申請
- オンライン申請(登記・供託オンライン申請システム)
費用: 1通480-600円程度
Q5. 小規模宅地特例はマンションでも使えますか?
A: はい、居住用マンションの敷地権(土地部分)に適用できます。
適用条件:
- 被相続人が居住していた
- 相続人が同居していた、または別居でも一定の条件を満たす
- 申告期限(10ヶ月)まで所有・居住を継続
減額幅:
- 330㎡まで80%減額
注意点:
- 建物部分には適用されない
- 賃貸用マンションは200㎡まで50%減額
詳細は小規模宅地等の特例を最大限活用する方法をご覧ください。
Q6. マンション相続で兄弟間トラブルを防ぐには?
A: 以下のポイントを押さえることでトラブルを回避できます。
ポイント1: 正確な評価額を確認
- 時価と評価額の違いを理解
- 専門家に評価を依頼
ポイント2: 共有名義を避ける
- できるだけ単独名義に
- 代償分割または換価分割を検討
ポイント3: 早めの話し合い
- 遺産分割協議を先延ばししない
- 方針を早期に決定
詳細は実家の処分で兄弟が揉める:遺産分割トラブルを防ぐ方法をご覧ください。
Q7. 相続後、マンションを売却する場合の税金は?
A: 譲渡所得税が課税されます。
計算式:
譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率
税率:
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下): 39.63%
- 長期譲渡所得(所有期間5年超): 20.315%
特例:
- 相続した空き家の3,000万円特別控除(一定の条件)
- 取得費加算の特例(相続税の一部を取得費に加算)
注意点:
- 売却時期によって税率が変わる
- 専門家に相談することを推奨
Q8. 2024年改正の影響を受けるのはどんなマンションですか?
A: 2024年1月1日以降に相続・贈与により取得した居住用区分所有財産すべてが対象です。
影響が大きいマンション:
- タワーマンション(高層階)
- 築年数が浅い
- 都心部の高級マンション
影響が小さいマンション:
- 築年数が古い(築30年以上)
- 低層階
- 郊外のマンション
Q9. 管理組合への届出を忘れたらどうなりますか?
A: 法的罰則はありませんが、実務上の不利益が生じます。
不利益の例:
- 重要書類が届かない
- 総会の議決権行使ができない
- 将来の売却時に問題になる可能性
対応:
- 気づいた時点ですぐに届出
- 管理組合に事情を説明し、手続きを進める
Q10. 相続登記の期限を過ぎたらどうなりますか?
A: 正当な理由がない場合、10万円以下の過料が課される可能性があります。
正当な理由の例:
- 相続人が極めて多数
- 遺言の有効性が争われている
- 相続人の所在が不明
対応:
- 期限を過ぎた場合でも、すぐに登記手続きを進める
- 司法書士に相談し、速やかに対応
詳細は相続登記義務化の注意点と罰則をご覧ください。
Q11. 相続放棄した場合の管理費負担はどうなりますか?
A: 相続放棄が認められれば、管理費の支払い義務はありません。
ポイント:
- 相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述
- 放棄が認められれば、初めから相続人でなかったことになる
- 管理費の未払い分も負担不要
注意点:
- 相続放棄すると、すべての相続財産を放棄することになる
- マンションだけを放棄することはできない
- 他の財産(預金など)も相続できなくなる
Q12. 賃貸中マンションの評価はどうなりますか?
A: 居住用とは評価方法が異なります。
建物部分:
固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)
- 借家権割合: 通常30%
- 賃貸割合: 賃貸中の部分の割合(100%なら1.0)
土地部分:
敷地権分の評価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
小規模宅地特例:
- 貸付事業用: 200㎡まで50%減額
注意点:
賃貸用の場合、居住用よりも評価額が下がりますが、小規模宅地特例の減額幅も小さくなります。
Q13. 区分所有補正率を自分で計算できますか?
A: 計算式が複雑なため、専門家への相談を推奨します。
理由:
- 階数、築年数、規模、所在地など多くの要素を考慮
- 国税庁の評価明細書を使用した複雑な計算が必要
- 計算ミスによる過少申告リスク
対応:
- おおよその目安は自分で把握(本記事の実例を参考)
- 正確な計算は専門家に依頼
- 申告前に専門家のチェックを受ける
Q14. 敷地権割合が登記簿に記載されていない場合はどうしますか?
A: 古いマンションでは、敷地権化されていない場合があります。
対応方法:
1. 敷地権化されていない場合
- 土地の持分が「共有持分」として別途登記されている
- 登記簿の「権利部(甲区)」で共有持分を確認
- 例: 「持分2000分の15」など
2. 敷地権化する方法
- 管理組合で決議し、敷地権化の登記を申請
- 費用と手間がかかるため、相続の際は敷地権化せずそのまま評価することが多い
3. 評価方法
- 敷地権化されていなくても、評価方法は同じ
- 共有持分割合を使って計算
Q15. 2024年改正は過去の相続にも適用されますか?
A: いいえ、2024年1月1日以降の相続・贈与のみが対象です。
適用時期:
- 相続: 2024年1月1日以降に相続開始(被相続人の死亡日)
- 贈与: 2024年1月1日以降に贈与
2023年12月31日以前の相続:
- 旧制度(区分所有補正率なし)で評価
- 既に申告済みの場合、遡及適用されない
注意点:
相続開始日が2023年12月31日以前でも、申告期限(10ヶ月以内)が2024年以降になる場合、旧制度が適用されます。改正の適用は「相続開始日」が基準です。
まとめ
マンション相続の評価額計算の3つのポイント:
-
建物 + 土地(敷地権)で評価 建物: 固定資産税評価額 土地: 敷地権割合 × 路線価評価額 2024年以降: 区分所有補正率を乗じる
-
2024年改正の影響を理解 高層階・築浅ほど補正率が高く、評価額が上昇 タワーマンション節税の効果は大幅に減少 「節税目的」だけでの購入は慎重に
-
手続きを正確に進める 固定資産税評価額・敷地権割合を正確に確認 管理組合への届出を忘れずに 相続登記は3年以内に(義務化)
次のアクション:
- 固定資産税納税通知書で建物評価額を確認
- 登記簿謄本で敷地権割合を確認
- 管理組合に相続発生を連絡
- 概算の評価額を計算
- 専門家に相談(複雑なケースの場合)
- 相続登記の手続きを開始
不明点や複雑なケースは専門家へ:
マンションの相続税評価は、2024年改正により計算が複雑化しています。特にタワーマンションや築浅の高層階マンションは、区分所有補正率の影響が大きく、専門的な知識が必要です。
相続大学では、不動産鑑定士の視点からマンション評価の無料相談を受け付けており、必要に応じて提携税理士とも連携してサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。

北原 崇寛
不動産鑑定士・宅地建物取引士
大手不動産鑑定会社で裁判鑑定・証券化案件・担保評価等を担当後、東証一部上場不動産会社にて不動産訴訟アドバイザリー、法律・税制面からの不動産有効活用コンサルティングに従事。2020年北原不動産鑑定士事務所開業。


