年内贈与で相続税を減らす方法【2025年最新】期限と必要書類を解説

この記事の結論
年内贈与で相続税を減らすには、12月31日までに受贈者の口座に着金していることが必要です。ただし、2024年の税制改正により、相続開始前7年以内の贈与は相続税の対象となるため、長期的な計画が重要です。本記事では、年内贈与の具体的な手続きフロー、期限、必要書類、よくあるミス、2024年改正の影響までを徹底解説します。
年内贈与の3つの重要ポイント:
- 期限:12月31日までに受贈者の口座に着金(銀行の年末営業日に注意)
- 税制改正:相続開始前7年以内の贈与は相続税に加算される(2024年施行)
- 基礎控除:受贈者1人あたり年間110万円まで非課税(贈与者の人数は無関係)
1. 年内贈与とは?基礎知識を理解する
1-1. 暦年贈与の仕組み
暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与について、受贈者1人あたり年間110万円の基礎控除が適用される制度です。この基礎控除を活用することで、贈与税を支払わずに財産を次世代に移転できます。
重要なのは、基礎控除110万円は「受贈者ベース」で計算される点です。つまり、父親から50万円、母親から60万円の合計110万円を受け取った場合、贈与者は2人ですが、受贈者が1人なので基礎控除は110万円となります。
110万円を超える贈与を受けた場合は、超えた分に対して贈与税が課税されます。贈与税は累進課税制度を採用しており、贈与額が大きくなるほど税率も高くなります。
1-2. 年内贈与が成立する3つの要件
年内贈与として認められるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
日付の要件:12月31日までに贈与が完了していること
単に振込手続きをするだけでなく、実際に受贈者の口座に着金していることが必要です。年末は銀行の営業日が限られるため、特に注意が必要です。
意思の合致:贈与者と受贈者の双方の合意があること
贈与は契約行為であり、贈与者が「あげる」という意思と、受贈者が「もらう」という意思の両方が必要です。一方的な振込だけでは贈与として認められない場合があります。
財産の移転:実際に財産が移動したこと
口座への振込、不動産の登記変更など、財産が実際に受贈者の支配下に移ったことが確認できる必要があります。
1-3. 年内贈与のメリット・デメリット
メリット
年内贈与の最大のメリットは、基礎控除110万円を活用できることです。毎年継続すれば、10年で1,100万円もの財産を無税で移転できます。
また、贈与した財産は贈与者の相続財産から除外されるため(ただし相続開始前7年以内の贈与を除く)、将来の相続税負担を軽減できます。
さらに、財産を早期に子や孫に渡すことで、彼らの生活資金や住宅購入資金として活用してもらえるという実質的なメリットもあります。
デメリット
一方で、毎年の贈与記録を長期間保管する必要があります。2024年の税制改正により、相続開始前7年以内の贈与履歴を追跡できる体制が求められます。
また、受贈者が適切に管理しない場合、「名義預金」とみなされるリスクがあります。名義預金とは、受贈者名義の口座でも実質的に贈与者が管理している状態を指し、税務署から贈与として認められない可能性があります。
2. 2024年税制改正の影響:7年ルールとは
2-1. 改正前と改正後の違い
2024年1月1日から施行された税制改正により、生前贈与と相続税の関係が大きく変わりました。
改正前は、相続開始前3年以内に行われた贈与のみが相続税の課税対象に加算されていました。つまり、相続の3年超前に贈与した財産は、相続税の対象外となっていました。
しかし改正後は、この加算期間が7年に延長されました。つまり、相続開始前7年以内の贈与は、相続財産に加算されて相続税の対象となります。
| 項目 | 改正前 | 改正後(2024年〜) |
|---|---|---|
| 加算期間 | 相続開始前3年以内 | 相続開始前7年以内 |
| 影響 | 3年超前の贈与は相続税対象外 | 7年超前の贈与のみ対象外 |
| 基礎控除 | 年間110万円 | 年間110万円(継続) |
2-2. 経過措置(2024-2026年)
この改正は段階的に実施されます。2024年から2026年にかけて、加算期間が徐々に延長されていきます。
- 2024年:相続開始前4年以内の贈与を加算
- 2025年:相続開始前5年以内の贈与を加算
- 2026年:相続開始前6年以内の贈与を加算
- 2027年以降:相続開始前7年以内の贈与を加算(完全実施)
この経過措置により、急激な税負担増加を避け、納税者が対応する時間的余裕が与えられています。
なお、加算される贈与額には一定の配慮があり、加算期間のうち相続開始前3年超の期間に行われた贈与については、総額100万円まで相続財産に加算しないという特例が設けられています。
2-3. 税制改正後の年内贈与戦略
この税制改正を踏まえると、年内贈与の戦略も変わってきます。
早期からの計画的な贈与が重要に
7年ルールの導入により、相続税対策としての生前贈与は、より長期的な視点が必要になりました。相続が発生する7年超前から贈与を開始することで、初めて相続税の節税効果が得られます。
基礎控除の継続的な活用
基礎控除110万円自体は変更されていません。毎年110万円以内の贈与を継続することで、長期的には大きな節税効果を生み出せます。
記録管理の徹底
7年分の贈与履歴を追跡できる体制が必須です。贈与契約書、振込明細書、通帳記録などを確実に保管しましょう。
詳しい税制改正の内容については、生前贈与の新ルールの記事もあわせてご覧ください。
3. 年内贈与の実行スケジュール
3-1. 年内贈与のタイムライン(残り2ヶ月から始める場合)
年末まで残り2ヶ月程度から年内贈与を開始する場合、以下のタイムラインで進めることを推奨します。
2ヶ月前~1.5ヶ月前(贈与準備期間)
まず贈与額を決定します。受贈者が複数いる場合は、それぞれへの贈与額を決めましょう。基礎控除110万円以内であれば贈与税は発生しませんが、110万円を超える場合は贈与税の試算も必要です。
次に贈与契約書を作成します。後述するひな形を参考に、必要事項を記入しましょう。
受贈者への意思確認も忘れずに。贈与は双方の合意が必要な契約行為です。特に子や孫が贈与を受けることを認識しているか確認しましょう。
1.5ヶ月前~1ヶ月前(契約締結期間)
銀行での手続き準備を進めます。必要書類(通帳、キャッシュカード、身分証明書など)を確認しましょう。
贈与契約書に双方が署名・押印し、契約を締結します。契約書は贈与者・受贈者の両方が保管してください。
1ヶ月前~年末5営業日前(振込実行期間)
銀行振込を実行します。窓口、ATM、ネットバンキングのいずれでも構いませんが、必ず振込明細書や履歴を保管しましょう。
着金確認を必ず行ってください。受贈者の口座に実際に入金されたことを、通帳記帳やオンライン明細で確認します。
年末5営業日前~年末(最終確認期間)
最終確認の期間です。すべての手続きが完了し、着金が確認できていることを再確認しましょう。
重要: 銀行の年末営業日は金融機関によって異なります。多くの銀行は12月30日-1月3日が休業となりますが、詳細は各金融機関にご確認ください。確実に年内贈与を成立させるため、遅くとも年末の5営業日前までに振込手続きを完了させることを推奨します。
3-2. 銀行の年末営業日(一般的な例)
⚠️ 重要な注意事項: 以下は一般的な銀行の年末年始営業カレンダーの例です。実際の営業日は金融機関ごとに異なる場合があります。必ずご利用の金融機関に直接ご確認ください。
| 日付 | 一般的な営業状況 | 振込処理 |
|---|---|---|
| 12月27日頃 | 営業(年末最終営業日となることが多い) | 可能 |
| 12月28日~29日 | 土日の場合は休業 | 不可 |
| 12月30日~31日 | 休業(年末休業) | 不可 |
| 1月1日~3日 | 休業(年始休業) | 不可 |
| 1月4日以降 | 営業開始(最初の平日) | 可能 |
ポイント:
- 年末の最終営業日は、その年の曜日の並びによって変わります(通常12月27日~30日の間)
- ATMやネットバンキングでは、営業日以外でも手続き自体は可能ですが、実際の処理・着金は翌営業日となります
- 年末最終営業日以降に振込手続きをした場合、着金は翌年となり、年内贈与として認められません
推奨スケジュール:
確実に年内贈与を成立させるため、以下のスケジュールを推奨します:
- 同じ銀行間の振込:年末最終営業日の5営業日前まで
- 異なる銀行間の振込:年末最終営業日の7営業日前まで
余裕を持って、年末10営業日前頃までに振込を完了させることが理想的です。
3-3. 各手続きの所要日数
年内贈与に関する主要な手続きの所要日数は以下の通りです。
贈与契約書の作成:1-3日
ひな形を使用すれば1日で作成可能ですが、内容の確認や受贈者との調整を含めると2-3日見ておくと安心です。
銀行振込:即日-翌営業日
同じ銀行の口座間であれば即日着金が一般的です。異なる銀行間の振込は翌営業日の着金となることが多いため、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
不動産の贈与登記:2-4週間
不動産を贈与する場合は、登記手続きに時間がかかります。年内に登記完了を目指す場合は、11月中に手続きを開始する必要があります。ただし、登記申請が年内であれば、登記完了が翌年でも年内贈与として認められます。
4. 年内贈与の手続きステップ(詳細)
4-1. ステップ1:贈与額の決定
基本ルール
受贈者1人あたり年間110万円までは基礎控除が適用され、贈与税はかかりません。この110万円は「受贈者ベース」で計算されるため、複数の贈与者から受け取る場合でも、受贈者1人あたりの合計額で判断します。
例えば、父親から60万円、母親から50万円を受け取った場合、合計110万円となり、基礎控除の範囲内です。
110万円を超える贈与を行う場合は、超えた部分に対して贈与税が課税されます。
贈与税の税率表(一般贈与財産用)
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | なし |
| 200万円超 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 300万円超 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 400万円超 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 600万円超 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,000万円超 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 1,500万円超 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
計算例
贈与額300万円の場合:
- 基礎控除:110万円
- 課税価格:300万円 - 110万円 = 190万円
- 贈与税:190万円 × 10% = 19万円
贈与額500万円の場合:
- 基礎控除:110万円
- 課税価格:500万円 - 110万円 = 390万円
- 贈与税:390万円 × 20% - 25万円 = 53万円
相続税の基礎控除や税率について詳しくは、相続税はいくらから?の記事もご参照ください。
4-2. ステップ2:贈与契約書の作成
必須記載事項
贈与契約書には以下の事項を必ず記載します:
- 贈与者の氏名・住所
- 受贈者の氏名・住所
- 贈与財産の内容(金額、不動産の場合は所在・地番・地目・地積)
- 贈与の日付
- 双方の署名・押印
贈与契約書のひな形
以下は金銭贈与の契約書のひな形です。
贈与契約書
贈与者 [氏名](以下「甲」という。)と受贈者 [氏名](以下「乙」という。)は、以下のとおり贈与契約を締結した。
第1条(贈与の目的)
甲は、乙に対し、下記の財産を贈与し、乙はこれを受諾した。
【贈与財産】
金 [金額] 円
第2条(履行の方法)
甲は、令和○年○月○日までに、乙名義の下記口座に振り込む方法により、前条の金員を交付する。
【振込先】
金融機関名:[銀行名]
支店名:[支店名]
口座種別:[普通/当座]
口座番号:[口座番号]
口座名義:[受贈者氏名]
第3条(贈与の時期)
本契約に基づく贈与は、令和○年○月○日をもって成立するものとする。
令和○年○月○日
贈与者(甲)
住所:[住所]
氏名:[氏名] 印
受贈者(乙)
住所:[住所]
氏名:[氏名] 印
作成のポイント
贈与契約書は必ず書面で作成しましょう。口頭での贈与も法律上は有効ですが、後日証明が困難になります。
作成した契約書は、贈与者・受贈者の双方が保管してください。コピーを取り、それぞれが原本を保管することをお勧めします。
将来の税務調査に備え、7年間は確実に保管しましょう。2024年の税制改正により、相続開始前7年以内の贈与履歴が重要になるためです。
4-3. ステップ3:銀行での振込手続き
必要なもの
- 贈与者の銀行口座(通帳またはキャッシュカード)
- 受贈者の銀行口座情報(金融機関名、支店名、口座番号、口座名義)
- 振込依頼書(窓口の場合)または振込用のカード・スマートフォン
- 贈与契約書(参考資料として持参推奨)
振込方法の選択
窓口振込
銀行の窓口で振込手続きを行う方法です。記録が残りやすく、振込明細書を紙で受け取れるメリットがあります。ただし、窓口の営業時間内(通常9:00-15:00)に手続きする必要があります。
ATM振込
ATMを使用した振込は、窓口よりも手数料が安いことが多いです。振込明細書が発行されるので、必ず受け取って保管しましょう。営業時間外でも利用できますが、年末の営業日には注意が必要です。
ネットバンキング
オンラインで振込手続きができるため、最も便利な方法です。ただし、紙の明細書は発行されないため、振込履歴のスクリーンショットを保存しておきましょう。また、振込履歴をPDFでダウンロードできる場合は、それも保存してください。
注意点
振込名義は必ず贈与者本人としてください。第三者名義での振込は、贈与の証明が困難になる可能性があります。
振込明細書や履歴は、贈与契約書と一緒に保管しましょう。税務調査の際、贈与の事実を証明する重要な資料となります。
着金確認を必ず行ってください。受贈者の口座に実際に入金されたことを、通帳記帳やオンライン明細で確認します。年内贈与として認められるには、12月31日までに着金していることが必要です。
4-4. ステップ4:受贈者による口座管理(名義預金回避)
名義預金とは
名義預金とは、受贈者名義の口座であっても、実質的に贈与者が管理している状態を指します。税務署は、名義だけが受贈者で、実際の管理者が贈与者である場合、贈与として認めず、相続財産に加算します。
例えば、親が子供名義の口座を開設し、そこに毎年お金を振り込んでいても、通帳やキャッシュカードを親が管理し、子供がその存在すら知らない場合、名義預金とみなされます。
名義預金を回避する方法
名義預金と判断されないためには、以下の対策が必要です。
受贈者が通帳・キャッシュカードを管理
贈与後は、通帳・キャッシュカード・印鑑などを受贈者が管理しましょう。贈与者は一切関与しないことが重要です。
受贈者が自由に使える状態
受贈者が自分の意思で自由に出金・使用できる状態でなければなりません。贈与者の許可が必要な状況では、真の贈与とは認められません。
贈与の事実を受贈者が認識
受贈者が贈与を受けたことを認識していることが必要です。特に、子や孫への贈与の場合、本人に「お祖父さんから○○万円もらったよ」と伝え、理解してもらいましょう。
記録の保管
贈与契約書、振込明細書を受贈者も保管してください。税務調査の際、受贈者側からも贈与の事実を証明できることが重要です。
5. 不動産鑑定士が教える:不動産贈与の特殊性
5-1. 不動産贈与の期限と手続き
不動産を贈与する場合は、金銭贈与とは異なる点がいくつかあります。
贈与契約
不動産贈与も金銭贈与と同様、年内(12月31日まで)に贈与契約を締結する必要があります。契約書には不動産の詳細(所在、地番、地目、地積、家屋番号など)を正確に記載しましょう。
登記申請
不動産の贈与では、所有権移転登記が必要です。登記申請は年内に行うことが望ましいですが、登記完了が翌年になっても、贈与契約の締結日が年内であれば年内贈与として認められます。
ただし、確実性を期すため、登記申請も年内に完了させることをお勧めします。
評価額の基準日
贈与税の計算における不動産の評価額は、贈与日(契約日)時点の価額で行います。
手続きの流れ
- 贈与契約書の作成(11月中)
- 不動産評価額の算定(路線価方式または倍率方式)
- 法務局での登記申請(12月中旬まで)
- 登記完了(申請から1-2週間後)
不動産贈与を年内に完了させるには、遅くとも11月中に手続きを開始することを強く推奨します。
5-2. 不動産贈与時の評価額計算
不動産の贈与税評価額は、相続税評価額と同じ方法で算定します。
評価方法
路線価方式
路線(道路)に面した土地の1平方メートルあたりの価額(路線価)が設定されている地域で使用します。主に市街地の土地がこれに該当します。
計算式:路線価 × 地積 × 各種補正率
倍率方式
路線価が設定されていない地域で使用します。主に郊外や農村部の土地がこれに該当します。
計算式:固定資産税評価額 × 倍率
不動産鑑定士の視点での補正
路線価方式で評価する場合、土地の形状や立地条件に応じて各種補正率を適用します。これにより、評価額を適正に減額できる可能性があります。
不整形地補正:正方形や長方形でない、いびつな形状の土地には、使い勝手の悪さを考慮して補正率(-10%〜-40%)を適用します。
間口狭小補正:道路に接する間口が狭い土地には、補正率(-5%〜-10%)を適用します。
奥行長大補正:奥行きが間口に比べて極端に長い土地には、補正率(-5%〜-10%)を適用します。
がけ地補正:傾斜地や崖がある土地には、利用価値の低下を考慮して補正率(-10%〜-50%)を適用します。
具体例
- 土地面積:200㎡
- 路線価:30万円/㎡
- 不整形地補正:-20%
- 補正前評価額:30万円 × 200㎡ = 6,000万円
- 補正後評価額:6,000万円 × 0.8 = 4,800万円
この例では、適切な補正により評価額が1,200万円減少しています。基礎控除110万円を大きく超える贈与の場合、評価額の減少は贈与税の大幅な節税につながります。
不動産の評価額計算の詳細については、不動産の相続税評価額の計算方法の記事もあわせてご覧ください。
5-3. 不動産贈与と金銭贈与の比較
不動産贈与と金銭贈与には、それぞれメリット・デメリットがあります。
| 項目 | 金銭贈与 | 不動産贈与 |
|---|---|---|
| 手続きの簡便性 | 簡単(振込のみ) | 複雑(登記必要) |
| 費用 | 振込手数料のみ | 登録免許税、司法書士報酬 |
| 評価の明確性 | 明確 | 評価が必要 |
| 節税効果 | 110万円控除のみ | 評価減の可能性 |
| 所要期間 | 即日-翌営業日 | 2-4週間 |
不動産鑑定士からのアドバイス
不動産贈与は、評価額が高い場合に適切な補正を適用することで評価額を下げられる可能性があります。特に、不整形地や間口の狭い土地など、形状に問題がある不動産は評価減の余地が大きいです。
ただし、不動産贈与には登録免許税(固定資産税評価額の2%)や司法書士報酬などの費用がかかります。そのため、贈与額(評価額)が比較的大きい場合に有効な手段といえます。
小額の贈与(110万円以内)を毎年行う場合は、金銭贈与の方が簡便で費用も抑えられます。
相続時の小規模宅地等の特例については、小規模宅地等の特例を最大限活用する方法の記事もご参照ください。
6. よくあるミスと対策
年内贈与を行う際、多くの方が陥りがちなミスがあります。ここでは代表的なミスとその対策を紹介します。
6-1. ミス1:複数贈与者からの受け取りで控除を重複適用
誤解
「父から110万円、祖父母から110万円で、合計220万円まで非課税になる」と考えてしまうケースです。
正解
基礎控除110万円は、受贈者1人あたりの年間合計額に対して適用されます。贈与者が何人いても、受贈者が受け取った金額の合計で判断します。
上記の例では、受贈者が1人で合計220万円を受け取っているため、110万円を超える110万円分に対して贈与税が課税されます。
対策
複数の贈与者から受け取る場合でも、受贈者ベースで合算することを忘れないようにしましょう。合計が110万円を超える場合は、翌年2-3月に贈与税の申告が必要です。
6-2. ミス2:年内贈与の期限を誤解
誤解
「12月31日に振込手続きをすれば年内贈与になる」と考えてしまうケースです。
正解
年内贈与として認められるには、12月31日までに受贈者の口座に着金していることが必要です。振込手続きの日付ではなく、着金日が基準となります。
銀行の年末最終営業日以降に振込手続きをしても、実際の処理は翌年となり、着金も翌年となってしまいます。
対策
ご利用の銀行の年末営業日を事前に確認し、遅くとも年末5営業日前までに振込手続きを完了させましょう。特に、異なる銀行間の振込は翌営業日着金となることが多いため、余裕を持ったスケジュールが重要です。
6-3. ミス3:名義預金とみなされる
誤解
「子供名義の口座に振り込めば贈与完了」と考え、通帳やキャッシュカードを親が管理し続けるケースです。
正解
受贈者が自由に使える状態でなければ、税務署は「名義預金」とみなします。名義預金は贈与として認められず、相続財産に加算される可能性があります。
対策
贈与後は、通帳・キャッシュカード・印鑑を受贈者が管理するようにしましょう。贈与者は一切関与せず、受贈者が自分の意思で自由に使える状態にすることが重要です。
また、贈与の事実を受贈者が認識していることも必要です。「あなたに○○万円贈与したよ」と伝え、贈与契約書も受贈者に渡して保管してもらいましょう。
6-4. ミス4:返金による免税化
誤解
「贈与した後、年内に返金してもらえば贈与税は発生しない」と考えてしまうケースです。
正解
一度成立した贈与契約は、原則として取り消せません。また、返金は受贈者から贈与者への新たな贈与行為とみなされます。
つまり、往復で2回の贈与が発生することになり、かえって税務上不利になる可能性があります。
対策
贈与額は慎重に決定し、贈与後に返金が必要ない金額にしましょう。「後で返してもらえばいい」という軽い気持ちで贈与を行うのは避けてください。
6-5. ミス5:記録の不備
誤解
「銀行振込の記録があれば十分」と考え、贈与契約書を作成しないケースです。
正解
振込記録だけでは、それが贈与なのか貸付なのか、一時的な預かりなのか、税務署は判断できません。贈与の意思を明確に証明するには、贈与契約書が不可欠です。
対策
必ず贈与契約書を作成しましょう。そして、贈与契約書と振込明細書を一緒に保管してください。これらの書類は、将来の税務調査で贈与の事実を証明する重要な証拠となります。
保管期間は最低7年間です。2024年の税制改正により、相続開始前7年以内の贈与履歴が重要になるためです。
7. 年内贈与の実行前チェックリスト
年内贈与を確実に成功させるために、以下のチェックリストを活用してください。
贈与実行前(10項目)
- 贈与額の決定:受贈者1人あたり110万円以内か確認
- 受贈者の同意:贈与を受けることを受贈者が理解しているか
- 贈与契約書の作成:必須記載事項が全て含まれているか
- 双方の署名・押印:贈与者・受贈者の両方が署名・押印したか
- 受贈者の口座情報確認:振込先口座の情報に誤りがないか
- 銀行の営業日確認:ご利用の金融機関の年末営業日を確認したか
- 振込スケジュール:年末5営業日前までに振込完了できるか
- 不動産贈与の場合:年末まで2ヶ月前に手続き開始できるか
- 名義預金回避:受贈者が通帳・キャッシュカードを管理できるか
- 記録保管:贈与契約書、振込明細書の保管方法を決めたか
贈与実行後(5項目)
- 着金確認:受贈者の口座に入金されたことを確認したか
- 記録の保管:贈与契約書、振込明細書を保管したか(受贈者・贈与者の両方)
- 贈与の記録:贈与の日付、金額、相手を記録したか
- 翌年の申告準備:110万円超の贈与の場合、翌年2-3月の贈与税申告準備
- 長期的な記録管理:7年分の贈与履歴を追跡できる体制を整えたか
これらのチェックリストを印刷またはスクリーンショットして、手続きを進めながら確認していくことをお勧めします。
8. 贈与税の申告(110万円超の場合)
8-1. 贈与税の申告期限(2025年の場合)
110万円を超える贈与を受けた場合は、翌年に贈与税の申告と納税が必要です。
- 贈与年:2024年1月1日〜12月31日
- 申告期間:2025年2月3日〜3月17日
- 納税期限:2025年3月17日
申告期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課されるため、必ず期限内に申告しましょう。
8-2. 申告方法
申告先
受贈者の住所地を管轄する税務署に申告します。贈与者の住所地ではないので注意してください。
申告方法
窓口申告
税務署の窓口に直接申告書を提出する方法です。不明点をその場で質問できるメリットがあります。
郵送申告
申告書を郵送する方法です。税務署に行く時間がない場合に便利です。郵送の場合、消印の日付が提出日とみなされます。
e-Tax(電子申告)
オンラインで申告する方法で、最も推奨されます。24時間いつでも申告でき、税務署に行く必要もありません。マイナンバーカードとカードリーダー(またはスマートフォン)があれば利用できます。
必要書類
- 贈与税の申告書(国税庁ウェブサイトからダウンロード可能)
- 贈与契約書のコピー
- 振込明細書のコピー
- 不動産の場合:登記事項証明書、固定資産税評価証明書
- マイナンバーカードまたは通知カードのコピー
- 本人確認書類(運転免許証など)のコピー
8-3. 申告しなかった場合のペナルティ
贈与税の申告義務があるにもかかわらず申告しなかった場合、以下のペナルティが課されます。
無申告加算税
本来の税額に対して15-20%の加算税が課されます。税務署の指摘前に自主的に申告すれば5%に軽減されます。
延滞税
納期限から実際に納付するまでの期間に応じて、年7.3-14.6%(令和6年現在)の延滞税が課されます。
重加算税
意図的に申告しなかったなど、悪質な場合は本税の35-40%の重加算税が課されます。
これらのペナルティを避けるため、110万円を超える贈与を受けた場合は必ず期限内に申告しましょう。
9. よくある質問(FAQ)
Q1. 年末まで残り2ヶ月から始めて年内贈与は間に合いますか?
はい、間に合います。ただし、以下のスケジュールを推奨します。
- 2ヶ月前~1.5ヶ月前:贈与額の決定、贈与契約書の作成
- 1.5ヶ月前~1ヶ月前:贈与契約書の締結
- 1ヶ月前~年末5営業日前:銀行振込の実行
- 年末5営業日前まで:振込完了(余裕を持って)
不動産贈与の場合は、登記に2-4週間かかるため、年末まで2ヶ月前には手続きを開始することを強く推奨します。
Q2. 親と祖父母から合計200万円もらった場合、税金はかかりますか?
はい、贈与税がかかります。
受贈者1人あたり年間110万円の基礎控除があります。贈与者が複数いても、受贈者ベースで合算するため、200万円 - 110万円 = 90万円が課税対象となります。
贈与税 = 90万円 × 10% = 9万円
Q3. 贈与契約書は必ず作成しないとダメですか?
法律上は口頭でも贈与契約は成立しますが、必ず書面で作成すべきです。
理由:
- 税務調査の際に贈与の事実を証明できる
- 名義預金とみなされるリスクを回避
- 贈与者・受贈者の双方の意思確認
書面がない場合、後日税務署から「これは贈与ではなく名義預金だ」と指摘される可能性があります。
Q4. ネットバンキングで振り込んでも大丈夫ですか?
はい、問題ありません。
ネットバンキングでも振込記録が残るため、税務上も有効です。ただし、以下の点に注意してください:
- 振込履歴のスクリーンショットを保存:紙の振込明細書がない場合
- 振込名義を確認:贈与者本人の名義であることを確認
- 着金確認:受贈者の口座に入金されたことを必ず確認
Q5. 2024年の税制改正で年内贈与の意味はなくなったのですか?
いいえ、年内贈与は依然として有効です。
2024年の改正により、相続開始前7年以内の贈与は相続税に加算されますが、7年超前の贈与は依然として相続税の対象外です。
つまり:
- 長期的な視点:今年の贈与が7年後以降の相続時に相続税対象外となる
- 基礎控除の活用:年間110万円の基礎控除は継続(毎年活用すれば累積効果大)
- 早期の対策が重要:税制改正により、より早期からの生前対策が必要
Q6. 贈与した後、やっぱり返してもらうことはできますか?
法律上は不可能ではありませんが、税務上は新たな贈与とみなされます。
- 返金 = 受贈者から贈与者への新たな贈与:受贈者に贈与税が発生する可能性
- 取り消しは原則不可:一度成立した贈与契約は取り消せない
そのため、贈与額は慎重に決定し、返金が必要ない金額にすべきです。
Q7. 年内贈与と相続時精算課税制度、どちらが有利ですか?
ケースバイケースですが、一般的には以下の基準で判断します。
年内贈与(暦年贈与)が有利なケース:
- 毎年少額ずつ贈与したい(110万円以内)
- 長期的な生前対策を考えている(7年超を見据える)
- 贈与財産が将来値上がりする可能性が低い
相続時精算課税制度が有利なケース:
- 一度に大きな金額を贈与したい(2,500万円まで非課税)
- 贈与財産が将来値上がりする可能性が高い(株式、不動産など)
- 相続税がかからない見込み(相続財産が基礎控除以下)
詳しくは専門家に相談することを推奨します。
Q8. 不動産を贈与する場合、年内に登記まで完了させる必要がありますか?
登記完了は翌年でも構いませんが、登記申請は年内に行うことを推奨します。
理由:
- 贈与の成立:贈与契約書の締結で贈与は成立(登記は第三者対抗要件)
- 評価額の基準日:贈与日(契約日)が評価額の基準日
- 年内申請の安全性:登記申請を年内に行うことで、贈与の事実を明確化
ただし、法務局の年末年始休業(12月29日-1月3日)を考慮すると、12月中旬までに申請することを強く推奨します。
Q9. 子供が未成年の場合、年内贈与は可能ですか?
はい、可能です。ただし、以下の点に注意してください。
- 親権者の同意:未成年者の法律行為には親権者の同意が必要
- 口座管理:未成年者が自分で管理できない場合、親権者が適切に管理
- 名義預金リスク:親が管理する場合でも、贈与の事実を明確にする(贈与契約書作成)
18歳以上の場合は成年として扱われるため、本人が単独で贈与契約を締結可能です。
Q10. 海外に住んでいる子供に贈与する場合、日本の贈与税はかかりますか?
ケースバイケースです。以下の基準で判断します。
贈与税が課税される場合:
- 贈与者が日本に住所がある
- 受贈者が日本国籍を有し、かつ贈与前10年以内に日本に住所があった
贈与税が課税されない場合:
- 贈与者・受贈者の両方が日本に住所がなく、かつ受贈者が日本国籍を有しない、または贈与前10年超日本に住所がない
詳しくは国税庁のタックスアンサーまたは専門家に相談してください。
10. まとめ
年内贈与で相続税を減らすには、12月31日までに受贈者の口座に着金していることが必要です。年末まで2ヶ月程度あれば十分に間に合いますが、以下のポイントを押さえてください。
年内贈与の5つの重要ポイント:
- 期限厳守:12月31日までに着金(余裕を持って年末5営業日前までに振込完了を推奨)
- 税制改正の理解:2024年施行の7年ルールにより、長期的な生前対策が重要
- 基礎控除の正しい理解:受贈者1人あたり年間110万円(贈与者の人数は無関係)
- 名義預金の回避:受贈者が通帳・キャッシュカードを管理、贈与契約書で証拠を残す
- 記録の保管:贈与契約書、振込明細書を7年間保管
今すぐやるべきこと:
- 贈与額を決定する(受贈者1人あたり110万円以内)
- 贈与契約書を作成する(ひな形を参考に)
- 受贈者の同意を得る
- ご利用の銀行の年末営業日を確認する
- 余裕を持ったスケジュールを立てる(年末5営業日前までの振込を推奨)
不動産贈与の場合:
- 年末まで2ヶ月前には手続き開始
- 余裕を持って登記申請(2-4週間の期間を考慮)
- 不動産評価額の算定(路線価方式、補正率の適用)
長期的な視点:
- 毎年110万円の贈与を継続すれば、10年で1,100万円の財産移転が可能(相続税の節税効果大)
- 2024年改正により、7年超前の贈与のみが相続税対象外となるため、早期からの対策が重要
年内贈与は、適切に実行すれば相続税の大きな節税効果を生み出します。ただし、税制改正や複雑なケースについては、専門家への相談を推奨します。
11. 無料相談のご案内
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【免責事項】 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスを行うものではありません。贈与税の申告や複雑なケースについては、専門家にご相談ください。記事の内容は2025年11月時点の法令・税制に基づいており、将来の法改正により変更される可能性があります。

北原 崇寛
不動産鑑定士・宅地建物取引士
大手不動産鑑定会社で裁判鑑定・証券化案件・担保評価等を担当後、東証一部上場不動産会社にて不動産訴訟アドバイザリー、法律・税制面からの不動産有効活用コンサルティングに従事。2020年北原不動産鑑定士事務所開業。


