生前贈与の新ルール完全ガイド【2024年改正対応】

この記事の結論
2024年1月1日から施行された税制改正により、生前贈与のルールが大きく変わりました。暦年贈与の加算期間が3年から7年に延長され、相続時精算課税制度には年110万円の基礎控除が新設されました。年内(2024年12月末まで)に贈与を実行すべきかは、贈与者の年齢・資産状況・相続税の試算により判断が必要です。不動産を贈与する場合は、評価額の算定、贈与税・不動産取得税・登録免許税の試算が必須です。この記事では、不動産鑑定士の視点から、改正の詳細と実務上の注意点を解説します。
この記事でわかること:
- 2024年改正の詳細(暦年贈与の7年加算、相続時精算課税の110万円控除)
- 改正前後の比較と経過措置の適用
- 暦年贈与 vs 相続時精算課税の選び方
- 不動産贈与の評価額算定と税負担総額の試算
- 年内贈与すべきケース、来年以降でよいケース
- 贈与実行前のチェックリスト
対象読者:
- 相続税対策として生前贈与を検討している60代以上の方
- 親から贈与を受ける予定の30-50代の方
- 不動産の贈与を検討している方
2024年改正で生前贈与のルールが変わりました
「生前贈与は廃止されたのですか?」という質問をよく耳にしますが、これは誤解です。2024年(令和6年)1月1日から施行された税制改正により、生前贈与のルールが変更されましたが、廃止されたわけではありません。
今回の改正では、暦年贈与の加算期間が3年から7年に延長され、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設されました。これにより、どちらの方法で贈与すべきか、いつ贈与すべきかの判断が以前よりも複雑になっています。
この記事では、2024年改正の詳細と、年内に贈与を実行すべきケース、不動産贈与の実務上の注意点を、不動産鑑定士の視点から解説します。
改正の背景:「資産移転の時期の選択に中立的な税制」への転換
今回の税制改正は、政府の「資産移転の時期の選択に中立的な税制」という方針に基づいています。
従来の制度では、生前贈与と相続のどちらで資産を渡すかにより税負担が大きく異なり、特に暦年贈与を活用した長期的な相続税対策が有効でした。しかし、この方法は高齢者に資産が集中し、若い世代への資産移転が進まないという課題がありました。
改正により、生前贈与と相続の税負担の差が縮小し、「いつ資産を渡しても税負担が大きく変わらない」制度へと近づいています。
改正の3つのポイント
今回の改正のポイントは以下の3つです。
ポイント1: 暦年贈与の加算期間が3年→7年に延長
相続開始前に贈与した財産を相続税の課税対象に加算する期間が、従来の3年から7年に延長されました。
改正前は、相続開始の3年前までの贈与が相続税に加算されていましたが、改正後は7年前までの贈与が加算されます。ただし、延長分の4年間(4年目~7年目)については、合計100万円の控除があります。
ポイント2: 相続時精算課税に年110万円の基礎控除を新設
相続時精算課税制度に、年110万円の基礎控除が新設されました。
従来の相続時精算課税制度では、少額の贈与でも全て記録し、相続時に精算する必要がありました。しかし、改正後は年110万円までの贈与であれば、贈与税申告も不要で、相続税にも加算されません。
これにより、相続時精算課税制度が使いやすくなり、選択肢の一つとして検討する価値が高まりました。
ポイント3: 災害時の特例(相続時精算課税)
相続時精算課税制度を選択した場合、贈与を受けた財産が災害により被害を受けたときは、被害額を控除して相続税を計算できるようになりました。
従来は、贈与時の価額で相続税を計算する必要があり、災害により価値が下がった場合でも税負担が変わりませんでしたが、改正により被害額を控除できるようになりました。
施行日と経過措置
今回の改正は、2024年(令和6年)1月1日以降の贈与から適用されます。
ただし、7年加算については経過措置があり、2024年から2027年までは段階的に適用されます。具体的には、以下のように加算期間が延長されます。
| 相続発生年 | 加算期間 | 延長分の100万円控除 |
|---|---|---|
| 2024年 | 3年 | なし(延長なし) |
| 2025年 | 4年 | あり(4年目の1年分) |
| 2026年 | 5年 | あり(4-5年目の2年分) |
| 2027年 | 6年 | あり(4-6年目の3年分) |
| 2028年以降 | 7年 | あり(4-7年目の4年分) |
このため、2024年に相続が発生した場合は、従来通り3年前までの贈与が加算されます。一方、2028年以降に相続が発生した場合は、7年前までの贈与が加算されます。
暦年贈与の7年加算ルール【改正の詳細】
暦年贈与とは、毎年110万円の基礎控除を利用して、少しずつ財産を贈与する方法です。従来から相続税対策として広く利用されてきました。
今回の改正により、この暦年贈与のルールが大きく変わりました。
改正前と改正後の違い【比較表】
暦年贈与の改正前後の違いを表にまとめます。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 基礎控除額 | 年110万円 | 年110万円(変更なし) |
| 相続への加算期間 | 相続開始前3年 | 相続開始前7年 |
| 延長分の控除 | - | 4-7年目の合計100万円 |
| 加算の対象者 | 相続人・受遺者 | 相続人・受遺者(変更なし) |
| 適用開始 | - | 2024年1月1日以降の贈与 |
| 経過措置 | - | 2024-2027年は段階的適用 |
基礎控除額は年110万円で変わりませんが、相続への加算期間が3年から7年に延長されました。
7年加算の仕組み【図解】
7年加算の仕組みを、タイムラインで理解しましょう。
例えば、2031年に相続が発生した場合、以下のように計算します。
- 3年以内(2029-2031年)の贈与: 全額が相続税の課税対象に加算
- 4-7年目(2024-2028年)の贈与: 合計100万円を控除した金額が加算
つまり、2024年から2028年までの5年間に合計500万円(毎年100万円)を贈与した場合、100万円を控除した400万円が相続税の課税対象に加算されます。
経過措置:段階的な適用(2024-2027年)
前述の通り、7年加算は段階的に適用されます。
2024年に相続が発生した場合は3年加算、2025年は4年加算、2026年は5年加算、2027年は6年加算、2028年以降は7年加算となります。
このため、2024年中に贈与を実行し、その後7年以内に相続が発生した場合でも、経過措置により加算期間が短くなる可能性があります。
延長分(4-7年目)の100万円控除
7年加算のうち、延長分の4-7年目については、合計100万円の控除があります。
例えば、2031年に相続が発生し、2024年から2030年まで毎年110万円ずつ贈与した場合、以下のように計算します。
| 年 | 贈与額 | 基礎控除 | 贈与税 | 相続への加算 |
|---|---|---|---|---|
| 2024年 | 110万円 | 110万円 | 0円 | 加算対象(4-7年目) |
| 2025年 | 110万円 | 110万円 | 0円 | 加算対象(4-7年目) |
| 2026年 | 110万円 | 110万円 | 0円 | 加算対象(4-7年目) |
| 2027年 | 110万円 | 110万円 | 0円 | 加算対象(4-7年目) |
| 2028年 | 110万円 | 110万円 | 0円 | 加算対象(4-7年目) |
| 2029年 | 110万円 | 110万円 | 0円 | 加算対象(3年以内) |
| 2030年 | 110万円 | 110万円 | 0円 | 加算対象(3年以内) |
- 4-7年目(2024-2028年)の贈与: 5年×110万円=550万円
- 100万円控除後: 550万円-100万円=450万円
- 3年以内(2029-2030年)の贈与: 2年×110万円=220万円
- 合計加算額: 450万円+220万円=670万円
このように、7年間で770万円を贈与しても、相続税の課税対象に加算されるのは670万円となります。
具体例:2027年に相続が発生した場合のシミュレーション
経過措置の適用により、2027年に相続が発生した場合は6年加算となります。
例えば、2022年から2026年まで毎年110万円ずつ贈与し、2027年に相続が発生した場合を考えます。
| 年 | 贈与額 | 基礎控除 | 贈与税 | 相続への加算 |
|---|---|---|---|---|
| 2022年 | 110万円 | 110万円 | 0円 | 加算対象(4-6年目) |
| 2023年 | 110万円 | 110万円 | 0円 | 加算対象(4-6年目) |
| 2024年 | 110万円 | 110万円 | 0円 | 加算対象(4-6年目) |
| 2025年 | 110万円 | 110万円 | 0円 | 加算対象(3年以内) |
| 2026年 | 110万円 | 110万円 | 0円 | 加算対象(3年以内) |
- 4-6年目(2022-2024年)の贈与: 3年×110万円=330万円
- 100万円控除後: 330万円-100万円=230万円
- 3年以内(2025-2026年)の贈与: 2年×110万円=220万円
- 合計加算額: 230万円+220万円=450万円
ただし、2022年と2023年の贈与は改正前の贈与のため、本来は加算対象外です。経過措置の詳細については、国税庁のタックスアンサーや専門家への相談をお勧めします。
相続時精算課税制度の110万円控除【改正の目玉】
相続時精算課税制度とは、贈与時には軽い税負担で財産を渡し、相続時にまとめて精算する制度です。
従来は使い勝手が悪いとされていましたが、今回の改正により年110万円の基礎控除が新設され、大幅に使いやすくなりました。
改正前と改正後の違い【比較表】
相続時精算課税制度の改正前後の違いを表にまとめます。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 基礎控除額 | なし | 年110万円 |
| 特別控除額 | 累計2,500万円 | 累計2,500万円(変更なし) |
| 贈与税率 | 一律20% | 一律20%(変更なし) |
| 申告の要否 | 全額申告必要 | 110万円以下なら不要 |
| 相続時の加算 | 全額加算 | 110万円超の部分のみ加算 |
| 災害時の特例 | なし | 被害額を控除可能 |
| 適用開始 | - | 2024年1月1日以降の贈与 |
最大の変更点は、年110万円の基礎控除が新設されたことです。これにより、少額の贈与であれば申告不要で、相続税にも加算されません。
年110万円の基礎控除の仕組み
相続時精算課税制度を選択した場合、毎年110万円までの贈与であれば、以下のメリットがあります。
- 贈与税の申告が不要: 110万円以下なら申告の手間がかからない
- 贈与税がかからない: 基礎控除の範囲内なので贈与税は0円
- 相続税にも加算されない: 110万円以下の贈与は相続時に精算不要
例えば、父が子に相続時精算課税制度を選択し、毎年100万円ずつ10年間贈与した場合、合計1,000万円の贈与について、贈与税も相続税も一切かかりません。
これは暦年贈与と同様の効果ですが、相続時精算課税制度の場合は7年加算の対象外となるため、いつ贈与しても相続税に加算されません。
110万円以下なら贈与税・相続税ともに非課税
相続時精算課税制度の年110万円控除は、暦年贈与の基礎控除とは別枠です。
つまり、同じ年に暦年贈与で110万円、相続時精算課税で110万円の合計220万円を受け取ることも可能です(ただし、贈与者が異なる必要があります)。
例えば、以下のようなケースが考えられます。
- 父から暦年贈与で110万円を受け取る
- 祖父から相続時精算課税で110万円を受け取る
- 合計220万円を非課税で受け取る
ただし、相続時精算課税制度は贈与者ごとに選択する必要があり、一度選択すると暦年贈与に戻すことはできません。
災害時の特例:損失額の控除
相続時精算課税制度を選択した場合、贈与を受けた財産が災害により被害を受けたときは、被害額を控除して相続税を計算できます。
例えば、父から相続時精算課税で5,000万円の不動産を贈与され、その後地震により1,000万円の被害を受けた場合、相続時には4,000万円(5,000万円-1,000万円)で計算します。
従来は、災害により価値が下がった場合でも贈与時の5,000万円で計算する必要がありましたが、改正により被害額を控除できるようになりました。
適用要件と届出方法
相続時精算課税制度を選択するには、以下の要件を満たす必要があります。
贈与者の要件
- 60歳以上の父母または祖父母(贈与の年の1月1日時点)
受贈者の要件
- 18歳以上の子または孫(贈与の年の1月1日時点)
届出方法
相続時精算課税制度を選択する場合は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、「相続時精算課税選択届出書」を贈与税申告書に添付して税務署に提出します。
ただし、年110万円以下の贈与であれば申告不要のため、届出書の提出も不要です。初めて110万円を超える贈与を受けた年に届出書を提出すれば問題ありません。
暦年贈与と相続時精算課税、どちらを選ぶべきか【判断フローチャート付】
7年加算の導入と相続時精算課税の年110万円控除により、どちらの方法で贈与すべきかの判断が複雑になりました。
ここでは、それぞれの方法が有利なケースと判断フローチャートを示します。
暦年贈与が有利なケース
暦年贈与が有利なのは、以下のようなケースです。
ケース1: 贈与者が若い(60代前半以下)
贈与者が若く、7年以上の長期間にわたり贈与を継続できる見込みがある場合は、暦年贈与が有利です。
例えば、60歳の父が70歳まで10年間贈与を継続する場合、70歳時点では3年前(67歳時点)までの贈与が加算対象となります。60-64歳時点の贈与は加算対象外となるため、暦年贈与のメリットを享受できます。
ケース2: 相続税の課税対象外
相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下の資産しかない場合は、暦年贈与が有利です。
相続税がかからない場合、7年加算を気にする必要がないため、暦年贈与で毎年110万円ずつ贈与すれば、贈与税も相続税もかかりません。
ケース3: 孫への贈与
孫は法定相続人ではないため、遺言等で財産を受け取る予定がない限り、7年加算の対象外です。
このため、孫への贈与は暦年贈与が有利です。ただし、孫が遺言により財産を受け取る予定がある場合は、7年加算の対象となるため注意が必要です。
相続時精算課税が有利なケース
相続時精算課税が有利なのは、以下のようなケースです。
ケース1: 贈与者が高齢(75歳以上)
贈与者が高齢で、7年以内に相続が発生する可能性が高い場合は、相続時精算課税が有利です。
暦年贈与で毎年110万円ずつ贈与しても、7年以内に相続が発生すれば全額が相続税の課税対象に加算されます。一方、相続時精算課税であれば、年110万円までの贈与は相続税に加算されません。
ケース2: 収益不動産を贈与する
アパートや賃貸マンションなどの収益不動産を贈与する場合は、相続時精算課税が有利です。
収益不動産を贈与すれば、贈与後の賃料収入は受贈者のものとなり、贈与者の財産が増加しません。暦年贈与では持分を少しずつ贈与する必要があり、登記の手間とコストがかかりますが、相続時精算課税であれば一括で贈与できます。
ケース3: 株式などの値上がりが見込まれる資産
非上場株式や投資信託など、将来値上がりが見込まれる資産を贈与する場合は、相続時精算課税が有利です。
相続時精算課税では、贈与時の価額で相続税を計算するため、贈与後に値上がりしても相続税は増えません。暦年贈与でも同様の効果がありますが、7年以内に相続が発生した場合は贈与時の価額で加算されるため、相続時精算課税の方が確実です。
判断フローチャート【図解】
暦年贈与と相続時精算課税のどちらを選ぶべきか、以下のフローチャートで判断できます。
このフローチャートはあくまで目安です。個別の状況により最適な方法は異なるため、専門家への相談をお勧めします。
注意点:相続時精算課税は撤回不可
相続時精算課税制度を一度選択すると、同じ贈与者からの贈与について暦年贈与に戻すことはできません。
例えば、父から相続時精算課税を選択した場合、その後父からの贈与は全て相続時精算課税で処理する必要があります。ただし、母からの贈与については別途暦年贈与を選択できます。
このため、相続時精算課税を選択する際は、長期的な視点で慎重に判断する必要があります。
不動産の生前贈与:評価額の算定と税負担総額【不動産鑑定士の視点】
不動産を生前贈与する場合、贈与税だけでなく、不動産取得税や登録免許税もかかります。また、不動産の評価額の算定方法により税負担が大きく変わります。
ここでは、不動産鑑定士の視点から、不動産贈与の実務上の注意点を解説します。
不動産贈与の3つの税金(贈与税、不動産取得税、登録免許税)
不動産を贈与する場合、以下の3つの税金がかかります。
1. 贈与税
不動産の評価額に基づき、贈与税が課税されます。評価額の算定方法については後述します。
2. 不動産取得税
不動産を取得した人(受贈者)に対し、都道府県が課税する税金です。税率は以下の通りです。
- 土地・住宅: 3%(2027年3月31日まで)
- 住宅以外の建物: 4%
例えば、評価額3,000万円の土地を贈与された場合、不動産取得税は3,000万円×3%=90万円となります。
ただし、住宅用地や新築住宅には軽減措置があります。
3. 登録免許税
不動産の所有権移転登記をする際に課税される税金です。税率は以下の通りです。
- 贈与による所有権移転: 2%
例えば、評価額3,000万円の土地を贈与された場合、登録免許税は3,000万円×2%=60万円となります。
なお、相続による所有権移転の場合は0.4%のため、贈与の方が登録免許税が高くなります。
不動産の評価額算定方法(路線価、固定資産税評価額)
不動産の贈与税を計算する際の評価額は、以下の方法で算定します。詳しくは、不動産の相続税評価額の計算方法の記事も参照してください。
土地の評価額
土地の評価額は、原則として「路線価方式」または「倍率方式」で算定します。
路線価方式: 国税庁が公表する路線価に基づき算定します。路線価は、公示価格の約80%の水準に設定されています。
計算式: 路線価×土地面積×各種補正率
倍率方式: 路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額に倍率を乗じて算定します。
計算式: 固定資産税評価額×倍率
路線価方式と倍率方式の詳細については、不動産の相続税評価額の計算方法の記事で解説しています。
建物の評価額
建物の評価額は、固定資産税評価額と同額です。
固定資産税評価額は、市区町村が3年ごとに評価替えを行い、固定資産税の納税通知書に記載されています。
ケーススタディ1:評価額3,000万円の実家を贈与する場合
評価額3,000万円の実家(土地2,000万円、建物1,000万円)を親から子に贈与する場合の税負担を試算します。
パターン1: 暦年贈与で毎年110万円ずつ持分贈与(10年計画)
毎年110万円分の持分を贈与する場合、10年間で1,100万円分の贈与が可能です(贈与税0円)。
ただし、不動産は持分で贈与するため、毎年登記が必要です。登記費用(登録免許税+司法書士報酬)が毎年発生し、コストが膨らみます。
| 年 | 贈与額 | 贈与税 | 登録免許税 | 司法書士報酬 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 110万円 | 0円 | 2.2万円 | 5万円 | 7.2万円 |
| 2年目 | 110万円 | 0円 | 2.2万円 | 5万円 | 7.2万円 |
| ... | ... | ... | ... | ... | ... |
| 10年目 | 110万円 | 0円 | 2.2万円 | 5万円 | 7.2万円 |
| 合計 | 1,100万円 | 0円 | 22万円 | 50万円 | 72万円 |
さらに、残りの1,900万円分(3,000万円-1,100万円)は相続または別途贈与が必要です。
パターン2: 相続時精算課税で一括贈与
相続時精算課税制度を選択し、3,000万円の実家を一括で贈与する場合を考えます。
- 贈与税: (3,000万円-110万円-2,500万円)×20%=78万円
- 不動産取得税: 3,000万円×3%=90万円(軽減措置がある場合は減額)
- 登録免許税: 3,000万円×2%=60万円
- 司法書士報酬: 約10万円
- 合計: 約238万円
相続時には、贈与した3,000万円が相続財産に加算され、相続税が課税されます。
パターン3: 相続で渡す場合との比較
相続で渡す場合は、相続税のみがかかります。
ただし、登録免許税は0.4%(贈与の2%に対し)のため、登録免許税は12万円で済みます。
| 項目 | 暦年贈与(10年) | 相続時精算課税 | 相続 |
|---|---|---|---|
| 贈与税 | 0円 | 78万円 | - |
| 相続税 | 別途計算 | 別途計算 | 別途計算 |
| 不動産取得税 | 0円(少額) | 90万円 | - |
| 登録免許税 | 22万円 | 60万円 | 12万円 |
| 司法書士報酬 | 50万円 | 10万円 | 10万円 |
| 合計 | 72万円 | 238万円 | 22万円 |
この試算から、不動産を贈与する場合は、贈与税以外の税金(不動産取得税、登録免許税)が大きな負担となることがわかります。
相続で渡す場合と比較すると、贈与のコストは高くなるため、贈与のメリット(相続税の節税効果、早期の資産移転など)と比較して判断する必要があります。
ケーススタディ2:賃貸不動産(アパート)を贈与する場合
評価額5,000万円の賃貸アパート(年間賃料収入600万円)を贈与する場合を考えます。
相続時精算課税で一括贈与
相続時精算課税制度を選択し、5,000万円の賃貸アパートを一括で贈与する場合:
- 贈与税: (5,000万円-110万円-2,500万円)×20%=478万円
- 不動産取得税: 5,000万円×3%=150万円(軽減措置なし)
- 登録免許税: 5,000万円×2%=100万円
- 司法書士報酬: 約15万円
- 初期コスト合計: 約743万円
贈与後のメリット
贈与後は、年間賃料収入600万円が子の収入となります。10年間で6,000万円の収入移転となり、親の相続財産の増加を防ぐことができます。
相続時には、贈与時の評価額5,000万円が相続財産に加算されますが、その後の賃料収入は加算されません。
このため、収益不動産を早めに贈与すれば、相続税の節税効果が大きくなります。
小規模宅地等の特例との関係
不動産を生前贈与する場合、小規模宅地等の特例が適用できなくなる点に注意が必要です。
小規模宅地等の特例とは、相続した自宅や事業用地の評価額を最大80%減額できる制度です。例えば、評価額3,000万円の自宅を相続した場合、600万円(3,000万円×20%)で評価できます。
しかし、生前贈与した不動産には特例が適用できないため、贈与税を計算する際は3,000万円で評価する必要があります。
小規模宅地等の特例の詳細については、小規模宅地等の特例を最大限活用する方法の記事で解説しています。
このため、自宅を贈与する場合は、小規模宅地等の特例を適用して相続する方が有利な場合があります。不動産鑑定士や税理士に相談し、贈与と相続のどちらが有利か試算することをお勧めします。
不動産贈与の実務上の注意点
不動産を贈与する際の実務上の注意点をまとめます。
1. 贈与契約書の作成
不動産を贈与する場合は、必ず贈与契約書を作成してください。口頭での贈与は無効となる場合があります。
贈与契約書には、以下の内容を記載します。
- 贈与者・受贈者の氏名・住所
- 贈与する不動産の所在・地番・地目・地積
- 贈与の日付
- 贈与者・受贈者の署名・押印
2. 所有権移転登記
贈与契約書を作成したら、速やかに所有権移転登記を行います。登記をしないと、第三者に対抗できません。
登記は司法書士に依頼するのが一般的です。登記の手続きについては、実家の相続:名義変更の手続きと費用の記事も参考になります。登記に必要な書類は以下の通りです。
- 贈与契約書
- 登記済証または登記識別情報(贈与者の権利証)
- 印鑑証明書(贈与者・受贈者)
- 固定資産評価証明書
- 本人確認書類
3. 不動産取得税の納付
不動産を取得した場合、都道府県から不動産取得税の納税通知書が送付されます(取得から数ヶ月後)。
納税通知書が届いたら、期限までに納付してください。
4. 贈与税申告(翌年3月15日まで)
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告書を税務署に提出します。
暦年贈与で基礎控除110万円以下の場合は申告不要ですが、相続時精算課税制度を選択する場合は、110万円以下でも届出書の提出が必要です(ただし、初めて110万円を超える贈与を受けた年のみ)。
3つのケーススタディ【税額シミュレーション】
ここでは、3つの具体的なケースで税額をシミュレーションします。
ケース1:金融資産5,000万円を持つ70代夫婦
状況:
- 夫婦の資産: 預貯金5,000万円、自宅3,000万円(小規模宅地特例適用で600万円)
- 子供: 2人
- 相続税の基礎控除: 4,200万円(3,000万円+600万円×2人)
- 課税対象額: 5,000万円+600万円-4,200万円=1,400万円
- 相続税(概算): 約175万円
贈与の検討: 毎年110万円×2人=220万円を10年間贈与
改正前(3年加算)の場合
80歳で相続が発生した場合、77歳以降の贈与が加算されます。
- 77-79歳の贈与: 220万円×3年=660万円が加算
- 70-76歳の贈与: 220万円×7年=1,540万円は加算対象外
- 相続税の節税効果: 1,540万円×15%(税率)=約231万円
改正後(7年加算)の場合
80歳で相続が発生した場合、73歳以降の贈与が加算されます。
- 77-79歳の贈与: 220万円×3年=660万円が加算
- 73-76歳の贈与: 220万円×4年=880万円-100万円=780万円が加算
- 70-72歳の贈与: 220万円×3年=660万円は加算対象外
- 相続税の節税効果: 660万円×15%(税率)=約99万円
改正により、節税効果が約132万円減少しました。
ケース2:相続時精算課税で毎年110万円贈与
状況:
- 贈与者: 75歳
- 受贈者: 子1人
- 毎年110万円を10年間贈与(相続時精算課税を選択)
贈与期間中の税負担
年110万円の贈与であれば、贈与税の申告は不要で、贈与税も0円です。
相続時の税負担
10年間で1,100万円を贈与しましたが、年110万円以下のため、相続税の課税対象には加算されません。
- 相続財産: 贈与前の金額(贈与分は加算されない)
- 相続税: 贈与がなかった場合と同額
このように、相続時精算課税の年110万円控除を活用すれば、10年間で1,100万円を非課税で贈与できます。
ケース3:不動産を相続時精算課税で一括贈与
状況:
- 評価額3,000万円の賃貸アパート(年間賃料収入400万円)
- 贈与者: 70歳
- 受贈者: 子1人
贈与時の税負担
- 贈与税: (3,000万円-110万円-2,500万円)×20%=78万円
- 不動産取得税: 3,000万円×3%=90万円
- 登録免許税: 3,000万円×2%=60万円
- 司法書士報酬: 約10万円
- 初期コスト合計: 約238万円
10年後の相続時の税負担
70歳で贈与し、80歳で相続が発生した場合:
- 相続財産: 贈与時の3,000万円が加算
- ただし、10年間の賃料収入4,000万円(400万円×10年)は加算されない
相続時精算課税を選択しなかった場合、10年間の賃料収入4,000万円が相続財産に加算され、相続税が増加します(税率15%の場合、約600万円の相続税増)。
このため、収益不動産を早めに贈与すれば、初期コスト238万円を支払っても、長期的には約362万円(600万円-238万円)の節税効果が見込まれます。
年内に贈与すべきケース、来年以降でよいケース
2024年12月末が年内贈与の期限です。年内に贈与すべきか、来年以降でよいかを判断するポイントを解説します。
年内贈与が有利なケース
以下のケースでは、年内に贈与を実行すべきです。
ケース1: 贈与者が高齢(75歳以上)で7年以内に相続が発生する可能性が高い
贈与者が75歳以上で、健康状態に不安がある場合は、年内に贈与を実行すべきです。
暦年贈与で年110万円を贈与しても、7年以内に相続が発生すれば全額が相続税の課税対象に加算されます。一方、相続時精算課税であれば、年110万円までの贈与は相続税に加算されません。
年内に相続時精算課税を選択し、110万円を贈与すれば、来年以降も毎年110万円を非課税で贈与できます。
ケース2: 暦年贈与で毎年110万円を贈与している
既に暦年贈与で毎年110万円を贈与している場合は、年内も継続して贈与すべきです。
年内の贈与をスキップすると、贈与の年数が減り、節税効果が低下します。
ケース3: 相続税の課税対象で、相続時精算課税への切り替えを検討中
相続税の課税対象で、相続時精算課税への切り替えを検討している場合は、年内に切り替えを実行すべきです。
年内に相続時精算課税を選択し、110万円を贈与すれば、来年以降も毎年110万円を非課税で贈与できます。
来年以降でよいケース
以下のケースでは、年内に急いで贈与する必要はありません。
ケース1: 贈与者が若い(60代前半以下)
贈与者が60代前半以下で、健康状態に問題がない場合は、年内に急いで贈与する必要はありません。
長期的に贈与を継続すれば、7年加算の影響を受けにくくなります。
ケース2: 相続税の課税対象外
相続税の基礎控除額以下の資産しかない場合は、年内に急いで贈与する必要はありません。
相続税がかからない場合、7年加算を気にする必要がないため、ゆっくりと贈与を検討できます。
ケース3: 贈与方法を慎重に検討したい
暦年贈与と相続時精算課税のどちらを選ぶべきか、慎重に検討したい場合は、年内に急いで贈与する必要はありません。
税理士に相談し、最適な方法を選択してから贈与を実行しましょう。
判断のポイント【チェックリスト】
年内に贈与すべきかを判断するチェックリストです。
- 贈与者は75歳以上ですか? → はい: 年内贈与を検討
- 贈与者の健康状態に不安がありますか? → はい: 年内贈与を検討
- 相続税の課税対象ですか? → はい: 年内贈与を検討
- 既に暦年贈与で毎年110万円を贈与していますか? → はい: 年内贈与を継続
- 相続時精算課税への切り替えを検討していますか? → はい: 年内に切り替え
- 贈与者は60代前半以下ですか? → はい: 来年以降でも可
- 相続税の課税対象外ですか? → はい: 来年以降でも可
- 贈与方法を慎重に検討したいですか? → はい: 来年以降でも可
生前贈与の実行手順【2024年改正版】
生前贈与を実行する際の手順を解説します。
Step 1: 贈与方法の選択(暦年贈与 or 相続時精算課税)
まず、暦年贈与と相続時精算課税のどちらを選ぶか決定します。
前述の判断フローチャートを参考に、贈与者の年齢、資産状況、贈与の目的に応じて最適な方法を選びましょう。
迷う場合は、税理士に相談することをお勧めします。
Step 2: 贈与契約書の作成
贈与を実行する前に、贈与契約書を作成します。
贈与契約書には、以下の内容を記載します。
- 贈与者・受贈者の氏名・住所
- 贈与する財産の内容(現金、不動産、株式など)
- 贈与額または財産の評価額
- 贈与の日付
- 贈与者・受贈者の署名・押印
贈与契約書のひな形は、インターネットで検索すれば入手できます。不動産の贈与など複雑な場合は、司法書士に依頼することをお勧めします。
Step 3: 銀行振込の実行(手渡し厳禁)
現金を贈与する場合は、必ず銀行振込で実行してください。手渡しは避けましょう。
銀行振込であれば、贈与の記録が残り、税務調査の際に贈与の事実を証明できます。
振込の際は、贈与契約書に記載した日付と同じ日に振込を実行してください。
Step 4: 贈与税申告(翌年2月1日~3月15日)
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告書を税務署に提出します。
申告が必要なケース
- 暦年贈与で基礎控除110万円を超える贈与を受けた場合
- 相続時精算課税制度を選択し、110万円を超える贈与を受けた場合
- 相続時精算課税制度を初めて選択する場合(届出書の提出が必要)
申告が不要なケース
- 暦年贈与で基礎控除110万円以下の贈与を受けた場合
- 相続時精算課税制度を選択し、110万円以下の贈与を受けた場合(既に届出済み)
申告書の作成は、国税庁のホームページからe-Taxで行うか、税理士に依頼します。
Step 5: 不動産の場合は所有権移転登記
不動産を贈与した場合は、速やかに所有権移転登記を行います。
登記は司法書士に依頼するのが一般的です。登記に必要な書類は以下の通りです。
- 贈与契約書
- 登記済証または登記識別情報(贈与者の権利証)
- 印鑑証明書(贈与者・受贈者)
- 固定資産評価証明書
- 本人確認書類
登記が完了したら、登記識別情報通知書が発行されます。大切に保管してください。
Step 6: 記録の保存(7年分)
贈与の記録は7年間保存してください。
保存すべき記録は以下の通りです。
- 贈与契約書
- 銀行振込の記録(通帳のコピーなど)
- 贈与税の申告書(控え)
- 相続時精算課税選択届出書(控え)
- 不動産の登記済証(登記識別情報通知書)
これらの記録は、相続時に相続税を計算する際に必要となります。また、税務調査の際にも提示を求められることがあります。
贈与実行前のチェックリスト
贈与を実行する前に、以下のチェックリストで確認してください。
金融資産の贈与チェックリスト
- 贈与者・受贈者の年齢確認(相続時精算課税の要件)
- 暦年贈与 or 相続時精算課税の選択
- 贈与契約書の作成
- 銀行振込の実行(手渡し厳禁)
- 贈与税申告の要否確認(110万円超の場合は申告必要)
- 記録の保存(贈与契約書、振込記録、申告書控え)
- 専門家への相談(相続税の試算、最適な贈与方法の検討)
不動産の贈与チェックリスト
- 不動産の評価額の算定(路線価、固定資産税評価額)
- 贈与税の試算
- 不動産取得税の試算(評価額×3%)
- 登録免許税の試算(評価額×2%)
- 小規模宅地等の特例との比較(贈与 vs 相続)
- 司法書士への相談(登記手続き)
- 贈与契約書の作成
- 所有権移転登記の実行
- 不動産取得税の納付
- 贈与税申告
- 記録の保存(贈与契約書、登記識別情報、申告書控え)
よくある質問(FAQ)
生前贈与に関するよくある質問をまとめました。
Q1. 生前贈与は2024年から廃止されたのですか?
いいえ、廃止されていません。
2024年1月1日から施行された税制改正により、生前贈与のルールが変更されましたが、廃止されたわけではありません。暦年贈与の加算期間が3年から7年に延長され、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設されました。
Q2. 暦年贈与が7年になったのは、いつからですか?
2024年1月1日以降の贈与から適用されます。
ただし、経過措置により段階的に適用されるため、2024年に相続が発生した場合は3年加算、2025年は4年加算、2028年以降は7年加算となります。
Q3. 2023年までに贈与した分も7年に含まれますか?
いいえ、含まれません。
7年加算は2024年1月1日以降の贈与が対象です。2023年12月31日以前の贈与は、従来通り3年加算の対象となります。
Q4. 相続時精算課税の110万円控除は、申告が必要ですか?
年110万円以下の贈与であれば、申告は不要です。
ただし、相続時精算課税制度を初めて選択する場合は、110万円を超える贈与を受けた年に「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。
Q5. 不動産を贈与する場合、贈与税以外にどんな税金がかかりますか?
不動産を贈与する場合、以下の税金がかかります。
- 贈与税: 不動産の評価額に基づき課税
- 不動産取得税: 評価額×3%(都道府県税)
- 登録免許税: 評価額×2%(所有権移転登記)
これらの税金は受贈者が負担します。
Q6. 生前贈与と相続、どちらが税金が安いですか?
ケースバイケースです。
相続税の課税対象外であれば、暦年贈与で毎年110万円ずつ贈与すれば贈与税も相続税もかかりません。一方、相続税の課税対象であれば、小規模宅地等の特例を適用して相続する方が有利な場合もあります。
税理士に相談し、相続税と贈与税の試算を行うことをお勧めします。
Q7. 7年以内に亡くなった場合、贈与した分は全て相続税の対象ですか?
はい、7年以内の贈与は相続税の課税対象に加算されます。
ただし、延長分の4-7年目については、合計100万円の控除があります。また、孫への贈与など、相続人・受遺者以外への贈与は加算対象外です。
Q8. 相続時精算課税を選んだら、後で暦年贈与に戻せますか?
いいえ、戻せません。
相続時精算課税制度を一度選択すると、同じ贈与者からの贈与について暦年贈与に戻すことはできません。ただし、贈与者が異なる場合(例: 父から相続時精算課税、母から暦年贈与)は、それぞれ別の制度を選択できます。
Q9. 孫への贈与も7年加算されますか?
孫が遺言等で財産を受け取る予定がない限り、加算されません。
7年加算の対象は「相続人・受遺者」のため、孫が遺言により財産を受け取る予定がある場合は加算対象となります。
Q10. 教育資金の一括贈与は、今回の改正に影響しますか?
教育資金の一括贈与(最大1,500万円)は、今回の改正の影響を受けません。
ただし、この制度には期限があり、2026年3月31日までの贈与が対象です。また、贈与者が死亡した場合の取り扱いが変更されているため、利用する際は最新の情報を確認してください。
まとめ:2024年改正を踏まえた生前贈与のポイント
2024年の税制改正により、生前贈与のルールが大きく変わりました。この記事の要点を5つにまとめます。
1. 暦年贈与の加算期間が3年→7年に延長(経過措置あり)
相続開始前に贈与した財産を相続税の課税対象に加算する期間が、従来の3年から7年に延長されました。ただし、延長分の4-7年目については、合計100万円の控除があります。
経過措置により、2024年から2027年までは段階的に適用されるため、相続のタイミングにより加算期間が異なります。
2. 相続時精算課税に年110万円の基礎控除を新設(申告不要)
相続時精算課税制度に、年110万円の基礎控除が新設されました。年110万円までの贈与であれば、贈与税申告も不要で、相続税にも加算されません。
これにより、相続時精算課税制度が使いやすくなり、暦年贈与との選択肢が広がりました。
3. 不動産贈与は評価額・税負担総額を正確に試算
不動産を贈与する場合、贈与税だけでなく、不動産取得税(評価額×3%)や登録免許税(評価額×2%)もかかります。
不動産の評価額は路線価方式または倍率方式で算定し、税負担総額を正確に試算する必要があります。また、小規模宅地等の特例との比較も重要です。
詳細な評価額の算定方法については、不動産の相続税評価額の計算方法の記事を参照してください。
4. 年内贈与すべきかは贈与者の年齢・資産状況で判断
年内(2024年12月末まで)に贈与を実行すべきかは、贈与者の年齢、健康状態、資産状況により判断します。
贈与者が高齢(75歳以上)で7年以内に相続が発生する可能性が高い場合や、既に暦年贈与で毎年110万円を贈与している場合は、年内に贈与を実行すべきです。
一方、贈与者が若い(60代前半以下)場合や、相続税の課税対象外の場合は、年内に急いで贈与する必要はありません。
5. 記録保存は7年分、専門家への相談を推奨
贈与の記録(贈与契約書、振込記録、申告書控え)は7年間保存してください。これらの記録は、相続時に相続税を計算する際に必要となります。
また、贈与方法の選択、相続税の試算、不動産評価額の算定など、専門的な判断が必要な場合は、税理士や不動産鑑定士に相談することをお勧めします。
次のアクション
生前贈与を検討している方は、以下のアクションを実行しましょう。
- 贈与方法の選択: 暦年贈与 or 相続時精算課税
- 相続税の試算: 税理士に相談し、贈与のメリットを確認
- 不動産評価額の算定: 不動産鑑定士に相談(不動産贈与の場合)
- 贈与契約書の作成: 司法書士に依頼(不動産の場合)
- 年内贈与の実行: 2024年12月末までに実行(必要な場合)
相続税や贈与税に関する詳しい情報は、相続税はいくらから課税される?の記事も参考にしてください。
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北原 崇寛
不動産鑑定士・宅地建物取引士
大手不動産鑑定会社で裁判鑑定・証券化案件・担保評価等を担当後、東証一部上場不動産会社にて不動産訴訟アドバイザリー、法律・税制面からの不動産有効活用コンサルティングに従事。2020年北原不動産鑑定士事務所開業。


